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2021年の経済予想のためにプラトンから何を学ぶか[森晃]

※この記事は、FX攻略.com2021年3月号(2021年1月21日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

 1年があっという間に過ぎ去り、もう2021年である。嫌なことに、年を取るたびに月日の経過が早く感じる。

 古代ギリシアの哲学者プラトン(紀元前427年-紀元前347年)は、ソクラテスの弟子であることは読者の皆さまもご存じであろう。ソクラテスがあらぬ罪を着せられ死刑に処されたことで、政治に幻滅したプラトンは哲学の道を歩んだ。プラトンの言葉に、「子どもが暗闇を恐れるのは理解できるが、成人が明るみを恐れるのは全く悲劇としかいえない」がある。

 コロナ禍について、まだまだ悲観論もある(米国では29万9000人が亡くなっている:画像①)が、ソクラテスの言葉から「ポスト・コロナ禍」を見据えて前を向いて歩く準備をしようではないか。ただし、非常事態宣言が解除されるまで家でおとなしくするのは当然である。

米国におけるコロナによる死者数(BBC)

コロナ禍によってさまざまな問題が発生

 米国ではコロナ禍により、米国社会の問題点が議論されている。経済関連でいうと、ヘルスケア、信用、住宅などへのアクセスが人種間により格差を生じたことが問題になっている。経営環境に関しても、黒人経営者が所有する企業は、白人経営者所有企業のほぼ2倍の規模で閉鎖される可能性がある。こうした人種による格差をなくし、経済活動を最大限に行う機会を平等に与えるにはどうしたら良いかという議論である。

 もう一つは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、米国企業の成長が減少する可能性があるのではないかとの議論である(株式市場にとってネガティブな話である)。

 読者の皆さまもご存じのように、コロナ禍の前から、米国の民間企業部門の債務に対して懸念があった。そして、コロナ禍の影響を受けた民間企業がさらに借り入れを増やさなければならなくなった。こうした民間企業は過大な債務を背負うことで、追加の資金を調達できなくなるのではないかとの懸念である。

 さて、このような議論がある中で、2021年の世界の経済成長の予想について民間エコノミストの意見を交えながら考えたい。

2021年中に世界経済は回復するか

 2020年10月、国際通貨基金(IMF)は2021年の世界経済の成長見通しについて、前回の予測から0.2ポイント引き下げ5.2%とした(画像②)。この見通しの基本シナリオは、2021年に入ってもソーシャル・ディスタンシングは続くが、新型コロナウイルスのワクチン接種が広がることで経済活動が緩やかに進むであることを前提にしている。

世界経済見通し(IMF)

 ただし、この基本シナリオには12月14日から米国で米ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発した新型コロナウイルス・ワクチンの接種が始まったことについては含まれていない。そのため、IMFは世界経済の成長見通しを上方修正する可能性が高いであろうと筆者は考えている。

 ある投資銀行は、2020年11月のレポートで世界経済は回復に向かっており、2021年3月から勢いを増して成長すると予想している。経済成長見通しについては、6.4%と予想している。この理由として、①より広範な国・地域での経済再開および金融・財政支援が経済回復を主導すること②米国の経常赤字拡大③ドル安④中国のリフレ政策⑤新興国の急回復—を根拠にしている。

 別の投資銀行も、2021年は大半の主要国で多くのエコノミストが予想するコンセンサスを上回る経済成長を遂げるのではないかと発表している。各国の失業率が正常化するペースが緩やかになり、インフレ率もターゲットとする目標値を下回るため、各国の中央銀行が2021年に利上げすることは難しく、低金利の中で世界経済の成長率が加速することを根拠にしている。

日本経済の見通しについて

 日本政府は、国内総生産(GDP)の2次速報値(2020年3Q)を発表した。実質GDP成長率は、前期比5.3%、年率22.9%であった。これは1次速報値である前期比5.0%、年率21.4%からの上方修正であった。

 日本政府は73.6兆円の追加経済対策も発表している。この中身であるが、①新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた補助金および交付金②デジタル化への促進やESG(※)投資を促進するための基金③公共投資の増額—の三本柱である。

 これらの追加経済政策(財政政策)を含めた2021年度の日本の経済成長見通しについて、ある投資銀行は実質GDP成長率が3%程度になると予想している。

※ 環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素を考慮した投資

新興国経済の見通しについて

 新型コロナウイルスのワクチンの導入が加速すれば、新興諸国でも急速な経済回復が生じると予想する。メキシコ、ブラジル、インド、エジプト、インドネシアといった主な新興諸国では、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンを発注している(少なくとも6億回分の供給を約束されているものと思われる)。主な新興諸国でのワクチン接種が実施されるのは、2021年半ば以降の見通しである。したがって、主な新興諸国の2021年半ば以降の経済成長は上振れするであろう。

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思うことは

 新型コロナウイルスのような人類共通の課題を一つの国だけで全て解決しようとすることは非常に難しい。プラトンの言葉「成人が明るみを恐れるのは全く悲劇としかいえない」にあるように、国家間で対立があるならばお互いに知恵を出し合い、それを乗り越えることが肝要である。

 新型コロナウイルスを完全に乗り越えるまでは、行動制限が強いられることでストレスを抱えた日常生活が続く。しかしながら、新型コロナウイルスから学んだことがある。それは「自由な移動」とは何かである。どうか読者の皆さまには、「人や物の移動の自由」の恩恵とは何かを今一度再考していただきたい。

※この記事は、FX攻略.com2021年3月号(2021年1月21日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
森晃
もり・あきら。エコノミスト。シンクタンク(アメリカ合衆国)に所属。専門分野は、為替政策、金融政策、マクロ経済政策、金融規制。市場関係者、金融当局者、政策当局者と交流し、多方面から為替の動向について分析を行っている。
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