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人工知能と相場とコンピューターと|第6回 新しい時代のメカニズム[奥村尚]

人工知能と相場とコンピューターと|第6回 新しい時代のメカニズム[奥村尚]

戦争が世界経済に及ぼした影響とは

 1968年以降、世界貿易は大幅な伸びを見せ、1970年には名目で14%超えの増加を記録しました。日本の国民総生産(GNP)は、1966年に4位フランスを超え、1967年に3位英国を超え、1968年に2位ドイツを抜き、ついに米国に次ぐ世界2位の規模に到達しました(ただし、これは国としての経済であり、ドイツの人口は日本の半分なので、一人当たりの豊かさでは半分でした)。

 このころになると、第二次大戦中、もしくは戦後定めたいろいろな仕組みが破綻してきます。その破綻も、元をたどると戦争が原因となったものが多かったのでした。

 この時期を代表する二つの戦争は、地政学を理解するにも重要で、現代の金融市場にも、むろんFX市場にも関係する事項なので、少しばかりおさらいをしておこうと思います。

歴史の鍵を握るロスチャイルド家

 一つ目は中東戦争です。今でいうイスラエルのある位置は、もともとパレスチナという場所であり、オスマン帝国が支配するイスラム国家でした。しかし、第一次世界大戦でオスマン帝国は破れ、代わりに1918年以降、大英帝国(英国)が支配していました。

 その後、イスラエルが生まれます。経緯は複雑ですが、簡単に書くとイスラエルはユダヤ人が創った国ではありますが、欧米のキリスト教勢力とロスチャイルド家によって創られた国です。

 なぜイスラエルの話にロスチャイルド家が出るのかを、説明しておく必要があるでしょう。この欧州屈指の名門貴族は、18世紀後半、もともとドイツの銀行家だったのですが、5人の子息がフランクフルト(長男)、ウィーン(二男)、ロンドン(三男)、ナポリ(四男)、パリ(五男)の各国都市に別れ(ロスチャイルド五家)、情報を交換し合い、一族の力を巨大にしました。

 英国の産業革命で量産された綿をドイツで販売して莫大な利益を上げ、金融街シティで金融業を開始したのは、三男のネイサンです。ナポレオン時代、英国はナポレオンの支配する大陸と交易ができず輸出入で苦労しました。しかし、ネイサンやロスチャイルド家が持つ物販ルートを使って、今でいう密輸を手掛けて英国を助け、しまいには英国軍資金の輸送までも担当するようになっていました。ナポレオンの敗戦時、わざと英国国債を売って暴落させ、それに買い向かって巨額の利益を上げた話は伝説的事実です。

 この絶大な力を使ってイスラエル建設の支援をしたのが、ロスチャイルド家なのです。ちなみに、ボルドーワインで有名な5大シャトーの一つ、ムートン・ロートシルト(画像①参照)は三男が、ラフィット・ロートシルトは五男がブドウ園を購入し所有しています。

シャトー・ムートン・ロートシルト 1969年(この年のラベル画はミロが担当)

出典:Château Mouton Rothschild

中東戦争の歴史

 欧州では、金はあるが価値観が違い、宗教も異なるユダヤ人を追い出したい意向もありました。特に第二次世界大戦中のナチスドイツは反ユダヤ政策が顕著で、多くのユダヤ人が逃げ出し、イスラエルに向かいました。ユダヤ人はエルサレムのあるパレスチナに移り住み、国家を作りたかったのです。ロスチャイルド家は中東に力を伸ばし、石油の利権を欲しました。三者三様、利害が一致するのが、イスラエルの設立でした。

 一方、もともとパレスチナにはアラブ人(パレスチナ人)が住んでいます。しかも当初はパレスチナの独立を英国が約束しており、その約束を前提に第一次世界大戦は英国側について、オスマン帝国と戦った経緯がありました。英国はパレスチナ、ユダヤ、どちらにも良い顔をしておいて、のらりくらりと都合良く行動していたのです。

 英国はフランスと第一次世界大戦終了後、 “中東を山分け”して、その山分けの境界を国境と定めました。レバノンやクェートはその都合でできた国で、それが今のレバノン紛争や湾岸戦争につながっていきます。

 英国はユダヤ人にもパレスチナでの国家建設を約束していました。しかし、ユダヤ人とアラブ人はまるで水と油であり、パレスチナは内戦状態となります。英国はパレスチナ統治を諦めて1948年5月14日、内戦は終了します。同日、イスラエルが独立を宣言し、周辺アラブ国とイスラエルの中東戦争へと発展しました(第一次中東戦争)。イスラエル独立戦争ともいいます。ちなみに翌年、国連の停戦勧告があり終了します。

 ただし、その後も第二次、第三次、第四次、と中東戦争は続きます。第四次中東戦争の勃発時、石油輸出国機構(OPEC)加盟国が西側に制裁を加えるため、原油の価格を1バレル3ドルから5ドル、11ドルとどんどん上げた上、イスラエルを支持する米国やオランダへの石油禁輸を決定します。

 日本では、1974年に消費者物価指数が実に23%も上昇しました。インフレ抑制のために金利が引き上げられ、高度成長は終焉を迎えます。トイレットペーパーは店頭からなくなり、節電のためテレビも24時を超えたら放送を止めていました。

 なお、イスラエルは首都をエルサレムと宣言していますが、国連は認めていません。認めると、せっかく収まっている中東の火薬に火がつくからです。2018年にトランプ米大統領がテルアビブにあった米国大使館をエルサレムに引っ越しさせたのは、今後アラブ諸国やイスラム諸国と付き合う上で、喉元のトゲになることでしょう。

米ソの代理戦争

 もう一つの戦争はベトナム戦争です。ベトナムはフランスが19世紀から植民地として統治していました。そして第二次世界大戦中にドイツがフランスに勝利し、ドイツの同盟国であった日本が、それを機にフランスを追い出そうとベトナムに独立を与えます。しかし、うまくいかないまま世界大戦に敗戦してしまいました。

 大戦後の1946年、ハノイにホー・チ・ミン率いる北ベトナムが樹立され、共産国家となります。フランスはフランス連合の一員として独立を認めますが、完全独立を目指すホー・チ・ミンは拒否、戦争へと突入します。北ベトナムはソ連や中国の支援を受け、一方でフランスは米国に支援を要請。1961年、ジョン・F・ケネディ米大統領の代になって、戦争が本格化しました。

 結局、ベトナムはソ連対米国の代理戦争の場となりましたが、1975年4月、米国軍はベトナムから撤退し、敗戦が確定します。南ベトナムの首都サイゴンは、1975年にホーチミンと改められています(画像②は、ホーチミンの戦争証跡博物館)。

戦争証跡博物館@ホーチミン

 ちなみに、1971年ごろには、米国は欧州や日本の強くなった経済力に対し、ドルの価値を維持できるほどの競争力、経済力はありませんでした。ドルが強すぎて、現実に合わない為替レートは国際貿易の点でも(特に輸出に)不利になっていました。金(ゴールド)もベトナム戦争で使い果たしており、準備できる額は圧倒的に不足していました。

 1971年8月15日、米国のニクソン大統領は金とドルの交換停止を発表します。先進国は固定相場制から離脱し、ブレトンウッズ体制は崩壊したことになります。その後、いったんドルを切り下げ、変動幅を持たせた固定相場で、1ドル308円として体制の維持を試みますが、結局安定せずに失敗、1973年2月に変動相場制に移行しました。この時期の為替レートを掲載しておきます(チャート①参照)。

1970年~1975年のドル円レート

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インテルからマイクロプロセッサが登場

 さて、1970年代、日本のコンピュータ技術は総合的にはIBMに比べて10年は遅れたものでした。米国内ですら、IBMに対抗できる会社はありませんでした。当時のIBMは巨人であり、シェア7割を超え、その他のメーカー7社は、7人の小人と呼ばれていました。

 小人とは、ユニバック、ハネウェル、GE、CDC、RCA、NCR、バロースで、最後の2社は今でも生き残っています。NCRは、一度AT&Tの傘下に入りましたが、今は独立会社として存続しています。バロースはスペリーを買収し、ユニシスになりました。

 しかし、こうした力関係を一変させる大きな発明がありました。米インテルが1971年に発表したマイクロプロセッサ(CPU)、「Intel4004」です(画像③参照)。

マイクロプロセッサ

出典:インテルミュージアム

 素子の集合体で、トランジスタが中にたくさん入っているものをICと呼んでいますが、それは1960年代から存在していました。CPUもICの一つで、その集合体であり、かつ単体で演算機能やメモリを持っています。

 4004は、インテルが電卓を開発するビジコン社と共同開発したもので、ビジコン社からは嶋正利氏が参加し、世界初のCPUが完成しました。このCPUには2300のトランジスタが集積されています。

 その素晴らしい汎用性をインテルは理解し、販売権をビジコン社から買い取って、チップを世界中に出荷し、今の同社の基礎を築きました。なお、ビジコン社は倒産しましたが、嶋氏はその後「Intel8080」の開発も手掛けました。

初のパーソナルコンピュータ誕生

 インテルは1972年に8080という4004を発展させたCPUを開発します。8bit処理能力があり、MITS社はこれを使って世界初のパーソナルコンピュータ、「Altair(アルテア)」を作り販売しました。395ドルでホビー用でしたが、数か月で何万台もの注文があったそうです。第一世代のパーソナルコンピュータの誕生です。

 1970年代、人工知能は冬の時代でした。何か具体的な処理をコンピュータにさせようとしたとたん、実務レベルの解が期待通りに出ないのです。主に知識を記述するプログラム言語がなかったこと、得ようとする規模がコンピュータには負荷が大きかったことが原因とされています。

 しかし、理論レベルでは、多くの論文が発表され、その後の発展の礎となっていきました。例えば、エキスパートシステム。これは、熟練者のノウハウを知識ベースと呼ばれるある種のデータベースに格納し、コンピュータ処理をすることができるもので、熟練者のノウハウを保存する上では役に立ちました。

 人工知能とは直接の関係はありませんが、データベース理論が発表されたのも1970年です。エドガー・F・コッド(画像④参照)が発明したリレーショナルデータベース理論(コッドの12の規則)は、現在のコンピュータが取り扱うデータ構造を定義する際の基本規則となるものでした。

Dr.Edgar F.Codd

出典:https://history.computer.org/pioneers/codd.html

 また、SQLというデータベース専用の言語も開発されました。それをいち早く実装したのが、オラクルでした。現在マイクロソフトに次ぐ世界2位のソフトウェア会社です。

※この記事は、FX攻略.com2020年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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