1999年1月に欧州で通貨統合
1999年1月、欧州で通貨統合が行われました。ユーロの誕生です。それまで、フランスはフラン、ドイツはマルク、イタリアはリラ、という自国の通貨を使っていました。これは、一国家として金融政策の独立性を持つことができる本来の姿です。近隣各国と経済格差、インフレ差、景気サイクルに差異が出ても、独自の金融政策を使うことで吸収できるメリットがあるからです。
一方、共通通貨を導入することで得られるメリットもあります。為替の取引コストがなくなります。20世紀までは欧州旅行に行くと、国境を通過するたびに通貨が変わり、支払いに苦労しました。特にスキーに行くと、コース次第で国境を越えるので通貨が変わるのは不便でした。
さらに、価格の透明性も高まります。当然に生産性も上がり、その生産力も競争力の高い地域に集まるので全体としては経済にプラスです。こうした共通通貨の問題とメリットに関しては徹底的に議論され、結果として導入に踏み切った経緯があります。
一般に、経済が強い国が自国通貨を手放すことは考えられません。欧州においては英国とドイツが該当します。英国は最後までポンドを手放しませんでした。ドイツがマルクを手放したのには、ワケがあります。通貨統合をすることで、通貨が弱いイタリアやスペインの勝手な通貨切り下げを回避でき、二つの世界大戦に負けたおかげで植民地というものがなくなり、労働市場の改革が必要であった(例えば、ドイツワインは質の割に高いですが、それは人件費が圧倒的に高いからです。これは二つの世界大戦を勝利したフランスと全く対照的です)からです。また、車に代表される輸出依存が高いドイツには為替変動(特にマルク高)を回避したい、という理由もあったはずです。
ユーロとドルの関係性
ユーロ誕生から今日までのユーロの価値の推移を見ておきましょう(チャート①)。ユーロの価値を客観的に示す指数として、ユーロインデックスというものが存在しています。ドルインデックスほど有名ではないのですが、ドル、ポンド、円、スイスフランなどをミックスしたものです。
BloombergのデータからTrioAM作成
ユーロ誕生後、しばらく弱含みで進みましたが、その後上昇に転換します。この上昇は2008年に終わり(ギリシャ危機のせいです)、その後下降に転じ、再び上がりながら今日に至ります。ユーロはドルに匹敵する国際通貨ですから、もう少し掘り下げておきましょう。
ユーロのルーツは、1957年に設立された欧州経済共同体(EEC)でしょう。フランス、ドイツ、イタリアという欧州大陸の3大国とベルギー、オランダ、ルクセンブルグ(ベネルクス3国)の、合計6か国を原加盟国としてスタートした組織です。この6か国は、「インナー6」と呼ばれます。
ベネルクス3国は、もともとハプスブルグ家に支配されたのち、19世紀になってフランス革命後の欧州の秩序再建を目的としたウィーン会議の中でネーデルランド王国として統合された国々です。その後、3か国は分立しますが、絶妙なバランスで経済同盟を結び、緊密な関係を保ちながらEECの発起人となってゆきます。
EECは、加盟国が統合を進めることで戦争を回避し、欧州経済に寄与。さらには米国に対抗し得る経済共同体としての欧州合衆国を目指していました。1967年に欧州共同体(EC)という体制になり、1970年には通貨統合をめざすウェルナー報告書が発表されます。1971年にニクソンショックが起きたため、欧州では為替変動から域内の経済をプロテクトする必要が高まり、EC参加6か国は各国の為替相場を狭い範囲内に収める、為替相場同盟(スネーク)を発足させます。
1973年にはドルに対する固定相場も崩壊したため、各国は市場に翻弄されます。ドイツの経常収支は黒字で物価は安定し、マルクはドルに対し強くなります。しかし、英国のポンドやイタリアのリラはマルクに対して弱くなり、狭い為替範囲内に収めることができなくなるのです。結局、スネークは分裂し失敗します。ドル下落が域内全体の為替を不安定にさせ、フランスは不況とインフレが進行しました。ドイツでも、マルクが強くなって輸出競争力がそがれることを防ぐため、為替介入(マルク売り、ドル買い)を続ける中で資金が市中に流れてインフレ懸念が広がりました。
ドイツとフランスは利害関係が一致し、1979年に欧州通貨制度(EMS)を発足させます。ドルに代わり、欧州通貨単位(ECU)という概念を導入しました。各国通貨がECUのレートから一定基準を超えないように無制限の介入を行うものです。
ECUは現在のユーロの原型となったものですが、ドルはプラザ合意を経て大きく切り下がる中、欧州各国は強いマルクに合わせて自国通貨も買い支えないといけなくなります。その対策で自国通貨買い、ドル売りの介入をすると一層ドルが下がるというジレンマに陥りました。しかし、ドイツの物価安定政策に追従するしかないので、EMSの為替相場は1986年ごろには安定します。1986年までの間、ECにはデンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、スペイン、ポルトガルが参加し、12か国に拡大していました。
1987年に単一欧州議定書(SEA)が発効し、欧州を1992年までに単一市場にするための障壁除去、制度調整が行われます。結局、国家間の経済同盟が必要であるとするドロール報告書が1989年にまとめられ、単一通貨の導入を実現する具体的なスケジュールが提案されました。
まずは第一段階として市場の統合を行います。そのためにEC改正、安全保障、警察協力の3本柱を規定したマーストリヒト条約が締結されました。第二段階は欧州中央銀行(ECB)の創設です。これにより通貨統合の参加国が決定されました。第三段階が単一通貨ユーロの導入です。1993年にマーストリヒト条約が発効し、ユーロは11か国で、1999年1月導入が正式に決まりました。
BloombergのデータからTrioAM作成
先ほどのユーロインデックスの推移を、ドルインデックスと並べてみましょう(チャート②)。ユーロが生まれた日(1999年1月4日)を起点日とした2020年12月18日までのデータになります。ほぼ上下対称、逆さ富士みたいですね。明確な関係がありそうですので、相関を見ておきましょう(図①)。同じ期間をX-Yプロットすると、ドルインデックスとユーロインデックスの関係が見えてきます。見事な逆相関ですね。
BloombergのデータからTrioAM作成
長期的に見ると、ドルとユーロは相反する動きをします。その決定係数は日次データをとる限り75%を超えており、有意な数字です。したがって、ドルインデックスが下がる(上がる)ときはユーロインデックスは上がる(下がる)ので、トレードの際の参考にするといいでしょう。ドルインデックスが1%上昇すると、ユーロインデックスは-0.75%下落します。
なお、ユーロ円とドル円の関係を同様にX-Yプロットすると、あまり関係が見えなくなります(図②)。ユーロをトレードするときには、ドル円の動きを参考にする必要はなさそうです。
BloombergのデータからTrioAM作成
画像のデジタル化が進んだ2000年代
さて、2000年になると、コンピュータの世界はさらなる進化を遂げます。画像のデジタル化です。2000年にBSデジタル放送が開始されるのをきっかけに、放送局レベルではHD画質での収録が行われていましたが、2003年に地上波デジタル放送が開始され、この流れが決定的になりました。
家庭用ビデオでも、DVDを利用したデジタルレコーダーが登場します(1999年)。2003年には規格が定まっていないながらもBDレコーダーも登場しました。2004年にはSONYがPS3にBD-ROMを採用し、一気に普及します。携帯電話にカメラ内蔵が普及し始めたのも、このころです。画像①は、シャープから2000年に発表されたカメラ付き携帯「J-SH04」です。写真をメールで送ることができる初の携帯電話(ただし、この時代はまだガラケー)で、背面カメラで自撮りできるのも斬新でした。自撮り時の鏡までついていたのです。
出典:https://corporate.jp.sharp/info/history/only_one/item/t34.html
映像を記録するのがいかに大変なことか、データの大きさで比較してみます。昔のアナログTVの規格(SD画質)では、720×480ドットの解像度、1ドットに必要な情報はRGBそれぞれ8ビットで、24ビット=3バイトなので1枚の情報量は1メガバイト(MB)です。TVでは1秒に30コマ必要ですからその30倍、1時間だとさらに3600倍なので、実に100ギガバイト(GB)のサイズになります。ハイビジョンのHD画質では、さらに6倍で600GB/1時間です。4K画質では、その4倍の2.4TB/1時間にもなります。
これは圧縮しない場合のサイズですが、実際には圧縮されて放送され、それをホームビデオ機器でさらに圧縮してDVDやBD(あるいはHDD)に記録します。圧縮するほど画質が劣化するので、時間軸の映像解析を行って情報をリアルタイムで圧縮し、復元時に減らした情報をリアルタイムで復元する技術が重要になります。地デジのMPEG2やBD-ROMのH.264という方式が普及しています。
こうした映像を再生したり編集したりするには、多大なCPUパワーやメモリが要求されるのですが、今の高級なスマホは数年前のノートPCと同等の性能を持っているので十分に処理できる、ということになるでしょう。
なお、ネットワークの速度はビット/秒(bps)で示します。1秒間に何ビット(8ビット=1バイト)の情報を転送できるか、という速度を表す数字です。携帯電話のギガという契約は、1か月間携帯電話を使って転送できるデータ量の合計(GB)のことであり、転送速度のことではありません。
2020年に携帯電話で導入された5G(ファイブジー)規格は、転送速度最大10Gbpsです。1秒間に10Gビット=1.25GBの速度で情報を転送できますので、60GBの契約では48秒で1か月の契約帯域を使い切る計算です。BD-ROMは、最大100GBの容量がありますので、これを5Gで転送するとこのようになります。
- 転送元の情報量 100GB=800Gビット
- 10Gbpsで転送すると、800÷10=80秒
画質の悪い映画であれば、データ量はこの半分以下ですので、40秒で転送できることになります。放送の世界では、2020年で既に8K映像が放送されていますが、この伝送には48Gbpsの能力が必要です。5G規格の5倍の速度で転送しないと間に合わないのです。最も普及している無線LANは、最高6.9Gbps(IEEE802.11ac)という規格なので、5G携帯電話より遅いことにもなります。
ただ2020年の段階では、5G規格はノンスタンドアローン(NSA)と呼ばれる暫定設備で「とりあえず5G始めました」というしょぼい5G規格であり、せいぜい200Mbpsしか出ません。これは本来の5G速度の50分の1であり、無線LANの30分の1です。本気の5G性能は、2021年中には達成できそうにありません。
※この記事は、FX攻略.com2021年3月号(2021年1月21日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
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