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FX力を鍛える有名人コラム

師走の強気シナリオ(ドル高円安)に躊躇を覚える局面[武部力也]

米ドル/円予想レンジ  112.30-115.75

「Mnuchin set to be Trump’s Treasury secretary (トランプ政権の切り札として米財務長官にムニューチン氏起用へ)」-。これは11/30の英経済紙一面だ。同日、トランプ次期米大統領は新政権の財務長官にスティーブン・ムニューチン氏を充てると正式発表した。

米ドル/円強気シナリオの落し穴

ムニューチン氏の次期財務長官就任に向け、歴代財務長官による「強いドルは国益に叶う」とした姿勢との整合性を整理しておく。

まずは大規模な所得税減税や法人税引き下げ思考について。この考えは2005年の米本国投資法(HIA)再現を意味し、資本の母国回帰、即ち緩やかなドル買いに結びつく筈である。

対してドル安圧力として留意しておきたい点が2つ。1つは中国を為替操作国と認定するのか、である。関税制裁や通貨切り上げ要求に繋がれば外交上の緊張と相まって円にも飛び火しかねない。もう1つがトランプ氏の選挙スローガンである貿易協定の再交渉、TPP離脱姿勢の行方だ。12/1の参院TPP特別委で、安倍首相は日米自由貿易協定など、2国間協議の可能性について明言を避けた。しかしトランプ施策での巨額減税とインフラ投資はインフレ見通しを高め、ドル高を招く可能性が高い。通貨価値を示すドルインデックスでも最近は上昇感が否めない。一方で米製造業の立て直しを掲げたトランプ氏が、輸出競争力が弱まるドル高を甘受するだろうか。我が国に円安是正要求を突きつける可能性あるのではないか。

日米貿易摩擦再燃に警戒か

11/4に米9月貿易収支での赤字額が1年7カ月ぶりの低水準となった。輸出増、輸入減である。一方、11/9の本邦9月の国際収支では27カ月連続での経常収支黒字が明らかになった。現況、日米貿易摩擦を指摘する声は小さい。筆者は12/14のFOMC、イエレン議長会見、そして年末のドル資金調達コスト上昇などを鑑みてドル円堅調と読んでいる。しかし、トランプ政権が保護主義、輸出拡大姿勢を堅持する中では12/6の米10月貿易収支、12/8の本邦10月国際収支・貿易収支の結果には要警戒だ。

12/5週の米ドル/円上値焦点は週足一目均衡表雲上限114.415、3/2-10、11/30高値圏114.455-575、2/16、12/1高値114.84-89。2/9高値115.75を超えると上値追いが高まる可能性。下値焦点は11/30東京後場の停滞圏112.60-50と同日安値112.05。下抜けた際111.60-35圏維持、11/23の22時過ぎの上昇起点111.15-25圏が試されそうだ。最大リスクとしては11/23安値110.85、11/22安値110.265、週足一目均衡表雲下限110.17を推考。

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