私が、ロンドンに着任して、ディーラーを命じられたのは、1983年のことでした。
ロンドンは、その頃も世界でも、もっとも大きな外国為替市場でしたので、ディーリングの機材なども、当時の世界最新鋭のものが、東京に先立って使われていました。
ロイターのディーリングマシンというPCのようなものがあって、このマシンを使って他の銀行と相対(あいたい)取引もできますし、世界中のディーラーと会話を交わすことができました。
私がロンドンでディーラーになったときは、まさにこのマシンの導入期で、真新しいマシンがディーリングルームにありました。
それ以外にも、従来から使われていたテレックスも健在でしたし、ニュースを時々刻々、カタカタという音を出しながら印字しているティッカーというものもありました。
重要指標の発表ともなると、このティッカーはチリンチリンと鳴りながら、指標結果を印字し、それを読んだスタッフが皆に伝えるという流れでした。
また、チャートはすべて手書きで、ふつう見ている期間は、日足でした。
この日足のチャートで、日中の動きを予想していたのですから、今聞けば信じられないかもしれません。
しかし、イメージトレーニングができたという点では、良かったと思っています。
当時は、このように現在のディーリングルームと比べると、のどかなものでしたが、何かが欠けていたり、不足していると、創意工夫をしたり、イメージを膨らませたりして、かえって良いことが多いように思います。
よく聞くことですが、ディーリングルームをリニューアルすると儲からなくなるといわれます。やはり、満ち足りてしまうのでしょうか。
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