為替レートのボラティリィティを示したボリンジャーバンドは、短期売買を中心に愛好家が多いテクニカル指標です。その弱点は「たった4%の確率といわれる±2σ(シグマ)越え/割れで逆張りするか順張りするかの判断が難しいこと」。バンド幅の拡大/縮小や中央の移動平均線の傾きに注目し、他のトレンド系指標と組み合わせて使うことで、その弱点を克服する方法を紹介します。
※この記事は、FX攻略.com2016年7月号の記事を転載・再編集したものです
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・ピボット+移動平均線、RSI、平均足、MACD
ボリンジャーバンドの「標準偏差」の仕組みと「順張り/逆張り」の使い分け
今回は、短期売買を中心に人気が高いボリンジャーバンドの活用法を解説します。
ボリンジャーバンドは1980年代に米国人投資家のジョン・ボリンジャー氏によって開発されたテクニカル指標で、統計学の「標準偏差」の理論を基に作られています。
標準偏差で一番身近なものといえば、受験勉強でおなじみの「偏差値」です。偏差値はテストを受けた母集団の、平均的な点数の散らばり具合(「標準偏差」)を求め、その標準偏差と自分の点数の差を基に、自分の点数が全体の点数分布のどのあたりに位置するかを計算しています。
投資に使うボリンジャーバンドでは、まず平均値となる移動平均線を設定。その上で期間中の各終値と平均値の差をそれぞれ2乗して足していき、「期間n—1」で割った上で、その平方根√を求めます。これが、その期間中の為替レートの「標準偏差=σ(シグマ)」になります。
つまり、ボリンジャーバンドの±1σラインは、移動平均線で設定した期間中の為替レートの平均的な散らばり具合を示しているのです。さらに、移動平均線から標準偏差σの2倍分、上下にかい離したところに引いた線が±2σのラインになります。
図1で示したように、もし為替レートの終値が、平均値を中心に左右均等に正規分布している場合、為替レートが、
・±1σに収まる確率は68.2%
・±2σに収まる確率は95.4%
・±3σに収まる確率は99.7%
といわれています。
つまり、為替レートが±2σを越える確率はおよそ4%程度しかなく、±3σを越える確率となると、わずか0.3%です。
これだけ聞いてしまうと、為替レートが±2σや±3σを越えるのは異常事態に思えます。
しかし、為替レートの値動きにはトレンドがあり、いったんある方向に動き出すとその方向に偏る傾向が強く、為替レートが正規分布(振り子運動のようなレンジ相場で推移)している方が稀です。
“FXの教科書”には、必ずといって良いほど「為替レートがボリンジャーバンドの±2σ内に収まる確率は約96%」という話が出た後、「為替レートがボリンジャーバンドの±2σラインに達したら逆張り」という手法が紹介されますが、それはある意味、大間違いなのです。
この指標を開発したジョン・ボリンジャー氏も、「ボリンジャーバンドは逆張りではなく、順張りで使うべき」と述べています。
図2は「米ドル/円」の日足チャートにボリンジャーバンドを表示したものですが、この図を見ても、ピンクやブルーで色付けしたゾーンでは、為替レートが±2σだけでなく、理論上は0.3%程度の確率でしか起こらない±3σを越えた後、逆戻りするどころか、長期間、±2σ、±3σを越え続けていることが分かります。
為替レートが±1σと±2σの間を一方向に突き進む現象は「バンドウォーク」と呼ばれ、ボリンジャーバンドの順張りシグナルとして有名です。
図2のピンクやブルーのゾーンでは、トレンドの勢いが非常に強くなっているわけですから、その勢いに乗って順張りするのが本当の「正解」になるのです。
とはいえ、図のA〜Cの地点では、確かに為替レートが±2σに到達した後、反転してバンド内に逆戻りしています。つまり、こうした地点では逆張りした方が儲かることになります。
そう考えると、ボリンジャーバンドの弱点は、「±2σ越えというシグナルを順張りに使うのか、逆張りに使うのかが曖昧で、状況によって使い分ける必要がある」ことだといえます。
そのため、ボリンジャーバンドを使うときは、±2σ到達だけでなく、他のシグナルも組み合わせて、「順張りか逆張りか」、使い分けの判断をする必要があるのです。
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「バンド幅の拡大/縮小」の意味とMACDなど他のトレンド系指標との組み合わせ
その判断方法の一つは、ボリンジャーバンドのバンド幅の拡大/縮小に注目する手法です。
図2の場合、トレンドが加速している状況では、±1σや±2σのバンド幅はどんどん拡大していきます。逆に、トレンドが弱まり、為替レートの変動率が減少すると、バンドの幅は縮小します。
ボリンジャーバンドのバンド幅の拡大は「エクスパンション」、縮小は「スクイーズ」と呼びます。
バンド幅の拡大/縮小が為替レートのトレンドや勢いの強さ/弱さを示しているので、
・バンド幅が「エクスパンション(拡大)」しているときは、値動きに対して順張り
・バンド幅が「スクイーズ(縮小)」しているときは値動きに対して逆張り
という使い分けが可能です。
もう一つ、ボリンジャーバンドの中心に位置している「移動平均線の傾き」もトレンドを判断する上で重要です。
移動平均線が右肩上がりで推移しているときは、+2σ到達をトレンド加速の瞬間と考えて、順張りの買いで臨む戦略が有効です。逆に移動平均線の傾きが上向きから横ばいに変化したら、トレンドが弱まっているので、逆張りの売りを考えても良いでしょう。
「順張りか逆張りかを判断しづらい」のが弱点である以上、ボリンジャーバンドは他のトレンド系指標と組み合わせて使うのも鉄則といえます。
図3は「英ポンド/円」の日足チャートにボリンジャーバンドとMACDを描画したものです。
期間中、MACDは0ラインの下にあることが多く、ボリンジャーバンドの移動平均線も下向きが続いているので、「英ポンド/円」の下降トレンドが明白です。トレンドが下向きである以上、この期間に取るべき戦略は、
・ボリンジャーバンドの—1σと—2σの間のバンドウォーク発生中は順張りの追随売り
・ボリンジャーバンドの+1σ、+2σ到達後の反転下落では逆張り的な戻り売り
の二つになります。下降トレンドでは「—2σ越えでの逆張りの買い」は厳禁です。
同じく図4は「ユーロ/円」の日足チャートにボリンジャーバンドとトレンド系指標のRCI(順位相関指数)を描画したものです。
RCIは期間中の日付と為替レートの高低にそれぞれ順位を付け、期間n日間の「日付の順位—レートの順位」を基に、直近の値動きの強弱を+100〜—100で指数化した指標です。
例えば、一貫した上昇相場では、当日の日付もレートも1位でその差は0、前日は日付、レートともに2位で0…となり、RCIは+100に。反対に一貫して下落が続いている相場のRCIは—100になります。
図4に示したように、通常は長期と短期のRCIを表示し、
・長期RCIが上に張り付いていたら上昇トレンド、下に張り付いていたら下降トレンドと、その偏りでトレンド判断
・短期RCIの上下動を利用して、為替レートが長期RCIの示すトレンドに回帰したところを戻り売り/押し目買い
という売買戦略が一般的です。
図4では長期RCIが—100近辺に張り付いているので下降トレンドが明白。そのため、短期RCIが上昇後に下落に転じた地点が戻り売りのチャンスになります。
では、「そのときのボリンジャーバンドはどうか?」というと、下降トレンドが明確なときは、為替レートが+2σ到達後に反転下落したところが戻り売りのチャンスとなります。
図4を見ると、「短期RCIの反転下落」と「ボリンジャーバンドの+2σからの反転下落」が同時発生した地点は絶好の戻り売りポイントになっています。
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±2σと平均足でトレンド転換を狙う手法&実戦的な短期売買の戦略とは?
さて、相場の山と谷をぴったり当てて逆張りするのは不可能ですが、為替のトレンドが上昇から下降へ、下降から上昇へ180度転換する「トレンド転換」を狙った取引は「トレンドフォロー」以上に的中したときの儲けも大きく、ぜひ狙いたいところです。
その意味でお勧めしたいのが、以前の連載でも触れましたが、ボリンジャーバンドと平均足の組み合わせです。
図5は「ユーロ/米ドル」の日足チャートを平均足で描画し、ボリンジャーバンドを加えたものです。期間中の「ユーロ/米ドル」は乱高下しながらも横ばいで推移。相場の山で売り、谷で買うトレンド転換を狙った逆張り気味の取引には格好の状況になっています。
平均足は足自体に移動平均線的な視点が取り入れられています。
その売買シグナルは非常に単純で「平均足が陰転したら売り/陽転したら買い」です。
この平均足のシグナルに、「+2σ(もしくは+1σ)からの反転で売り」「—2σ(もしくは—1σ)からの反発で買い」というボリンジャーバンドの逆張り的判断を加えてダブルチェックすると、かなり正確に相場の山と谷を捉えることができます。
図5に示したA〜Gは上記の二つのシグナルが同時点灯した地点になりますが、+2σからの反転後、それほど大きく下落しなかったAやレンジ相場に移行したD以外は、ほぼ正確に相場の山や谷を捉えることに成功し、大きな値幅を稼げました。
さて、ボリンジャーバンドは為替レートの変動率の強弱を示した指標であるため、ボラティリティの激しさを利益にしていく短期売買の世界で最も威力を発揮する指標といえます。
図6は「米ドル/円」の1時間足チャートにボリンジャーバンドとMACD、RSIを描画したものですが、ボラティリティの高さはボリンジャーバンドのバンド幅の拡大/縮小で判断できます。
また、MACDが0ラインより上、RSIが50より上なら上昇トレンド、MACDが0ラインより下、RSIが50より下なら下降トレンドと、MACD、RSIはトレンド判断やトレンド転換の勢いを見極めるのに使います。
売買戦略としては、ボリンジャーバンドの幅が拡大に向かっているときは、一方向への値動きが加速している証拠なので、その勢いに便乗した順張りで臨みます。
図6の場合、バンド幅の「エクスパンション」が起こり、その後、—1σと—2σの間で「バンドウォーク」が発生したAやBの地点は格好の追随売りポイントになりました。その地点のMACD、RSIに注目すると、共に0ラインより上、50より上から急激に下落しており、下方向の値動きの加速をトリプルチェックできました。
一方、画面中央ではMACD、RSI共に0ラインより上、50ラインより上に張り付き、上昇トレンドが明白です。さらにボリンジャーバンドのバンド幅も一定で推移していることから、かなり安定した上昇トレンドが続いていることが分かります。こういうときは、ひたすら順張りの買いを続けてホールドしていれば、利益がどんどん積み上がります。
画面右の下降局面では、—1σと—2σの間で下向きのバンドウォークが発生。MACDとRSIで下降トレンドをトリプルチェックした上で、順張りの追随売りで利益を伸ばします。
他のトレンド系指標と組み合わせて使うことで、単純な逆張りによる大損リスクを排除できる——このルールを守ることで、ボリンジャーバンドはトレンド継続とトレンド転換の両方で威力を発揮する最強のテクニカル指標になるのです。
※この記事は、FX攻略.com2016年7月号の記事を転載・再編集したものです
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