外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|新型コロナのパニック相場を「一目均衡表」で俯瞰する方法】

外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|新型コロナのパニック相場を「一目均衡表」で俯瞰する方法】

新型コロナウイルスによるパニック相場で恐怖と不安のどん底に陥らないためには、大局観や俯瞰力が必要です。冷静沈着な相場展望を立てるうえで力強い味方になるのが「一目均衡表」。相場は価格だけでなく時間にも強く支配されることを視覚的に表現した斬新なテクニカル指標です。今回は一目均衡表を使って、コロナショックに揺れる為替市場を冷静な目で見つめ直しましょう。

乱高下するドル円相場と過去の節目。ドル円は鉄板下値100円を割り込むか!?

 新型コロナウイルスの蔓延は「パンデミック(大流行)」となり、米国をはじめ世界中の金融市場をパニックに陥れています。本誌が発売される4月後半以降の状況を見通すのは不可能ですが、世界同時株安はすでに2008年のリーマン・ショックを越える動きといえます。

 金融市場の中でも特に株式市場の下げがきつく、株式の損を利益が出ている金(ゴールド)や米国債の売却で埋めるという流れも発生。あらゆる金融商品が暴落し、なにがなんでも「キャッシュ(ドル現金)」を確保する動きが出ています。そのため3月第2~3週には異例のドル高円安が進んでいますが、ドル円月足チャートの雲の下限で止まっています。目先の目安は、この雲を上抜けできるかどうかという点と、2月20日に記録した112円23銭を抜けるかどうかという点かと思います。

 ただし、3月下旬時点の相場状況は従来の「相場観」ではなかなか太刀打ちできないものになっています。「有事のドル復活」という意味では、足元のドル現金確保の動きがどこまで続くかということですが、これも新型コロナウイルス次第です。反対にドルの大幅下落もあると予想していますが、ここは先入観を持たないように、テクニカル中心にやる他ありません。

コロナショック(2020年2月下旬〜3月上旬)とドル円4時間足チャート

 株式ほどではないですが、チャート①に示したようにドル円も非常に荒っぽい値動きが続いています。3月第2週にはトランプ大統領が欧州から米国への渡航制限を発表したことで、一時、1ドル101円台まで急落。トランプ時代になって初めて104円の鉄板下値を割り込みました。逆に3月第3週は、金融不安によるドル現金の不足から111円台まで急上昇するなど、何かニュースが出ると、値が一気に飛び、一方通行の動きが多発。流れについて行く必要がありますが、深追いすると大きな痛手を負う危険性も高い、とても「危ない相場展開」になっています。

 チャート①にも示したように、こういう波乱相場のときは目先の動きに惑わされるのではなく、過去に何度も高値や安値が重なった「節目」を意識することが大切です。

 ドル円の節目といえるのは、

●2013年11月以降の絶対的下値100円~101円

●トランプ時代の下値104円

●ここ3年ほど、何度も支持帯となった下値107円

●120日・200日移動平均線が位置する109円~110円

といった価格帯です。

 パニック相場になると、どうしてもオーバーシュート(行き過ぎ)が起こりますが、そんな中でも為替レートは過去の節目で自然と下げ止まったり上げ渋ったりするものです。

 そこで今回は、テクニカル指標シリーズ第3弾として「一目均衡表」をご紹介しつつ、一目の雲などを使ってコロナショック相場をより大局的な視点で見ていくことにしましょう。

2月の高値112円台、月足雲下限の109円台は絶好の戻り売りポイント

長期的視野で見たコロナショックとドル円週足チャート

 チャート②は2016年以降のドル円の週足チャートに一目均衡表の雲、200週移動平均線、MACDを表示したものです。一目均衡表の雲は現在より26週未来に張り出す形になっており、今後の値動きの抵抗帯・支持帯を探し、俯瞰的な視点でトレードを行うのに最適なテクニカル指標です。

 チャート②でもわかるように、ドル円は新型コロナウイルスがまだ欧米に蔓延していなかった2月下旬、「日本売り」と思われる株安・円安の同時進行という異例の展開になり、一時112円台まで上昇しました。しかし、欧米にも新型コロナウイルスが蔓延し始めると、急速に値を下げ、アベノミクス時代の鉄板中の鉄板下値といえる101円台まで下落。その日のうちに104円台まで急速に値を戻し、その週(3月第2週)はちょうど一目の雲下限が位置する107円台で終わりましたが、翌3月第3週には金融機関、ヘッジファンドなどの信用不安によるドル不足から111円台まで反転上昇しました。

 ただし、急激なドル不足が収束し相場が世界的な景気後退や日米金利差の縮小に注目し始めるようになれば、ドル円は2月高値112円台や雲上限や200週線が位置する109円台を上値に、1ドル104円台、さらには100円台を下値に、やや下降トレンド気味で推移する可能性が高いといえるでしょう。

 トランプ大統領選出の2016年11月の急騰以降、ドル円は長期間、三角持ち合いを形成し、次第に値動きが煮詰まっていました。

 今回のコロナショックでは、その三角持ち合いを上や下に抜ける急騰・急落が連発しています。ただし、リスクオフの流れが続く以上、基本は三角持ち合い下放れの下げ。何かの拍子に一目の雲の上まで上がったら売り、という戻り売り戦略が最も有効と思われます。

ドル円月足チャートの一目均衡表

 チャート③は2007年からのドル円月足チャートに一目均衡表のすべての要素を示したものです。一目均衡表では、ローソク足9本分の高値と安値の中間値を示した「転換線」、26本分の高値と安値の中間値を示した「基準線」でトレンドを見ます。

 移動平均線のように期間中の平均値でなく、高値と安値の中間値のため、高値や安値が更新されないと真っ平で推移するのがその特徴。特に期間26の基準線は膠着相場で高値も安値も更新されないと水平になることが多くなります。逆に基準線が一貫して右肩上がりなら強い上昇トレンド、右肩下がりなら強い下降トレンドと判断でき、基準線の傾きに注目することでトレンドフォローの売買ができます。

「遅行線」は現在のローソク足の動き(「日々線」)をローソク足26本分、過去に移動させたもの。遅行線が日々線を抜けるということは、26本前の過去と現在の為替レートの高/安が逆転したことを示します。非常に単純なシグナルですが、「遅行線の日々線抜け」は値動きに上昇や下降の勢いがついた初動シグナルとして大いに活用できます。

 相場の未来予測に使う「雲」は、転換線と基準線の中間値を未来方向に26本分(月足の場合、2年2か月先)まで移動させた「先行スパン1」、期間52の高値と安値の中間値を同じく26本分未来に移動させた「先行スパン2」に囲まれたゾーンです。

 短期中期の値動きの中間値である先行スパン1と、長期的な値動きの中間値である先行スパン2に囲まれた雲は、現在の相場の中心ゾーンです。そのゾーンを未来に移動させることで、過去の値動きが今後の相場展開にどんな影響を与えるかを視覚的に表現したのが雲というわけ。

 雲には先行スパン1が上、2が下で上昇トレンドを示唆する「上昇雲」、先行スパン2が上、1が下の「下降雲」があります。多くの場合、上昇雲は為替レートの下落を防ぐ支持帯、下降雲は為替レートの上昇を阻む抵抗帯として機能します。また、先行スパン1と2がクロスして、雲が陽転・陰転するポイントは、長期的な投資家の平均売買単価が短・中期的な投資家の平均売買単価を逆転した証拠になり、トレンド転換を示唆します。

 上昇雲・下降雲を意識してチャート③を見ると、月足ドル円の雲はちょうど2020年2月に上昇雲から下降雲に陰転したばかり。さらに先行スパン1と2がクロスし、雲が陰転する直前のAの地点で、いったん雲を上抜けたものの、長い上ヒゲを残して下落。3月に入ってからは陰転した下降雲の下まで急落しています。

 雲が薄いところや雲の切れ目(先行スパン1と2のクロス地点)は、投資家の損益状況が大転換しやすい分岐点です。その分岐点をいったん越えたものの、失速して下げに転じたAの動きはドル円の下落を示唆しているように見えます。

 3月以降に陰転した下降雲は26か月前からのもみ合い相場の値動きを反映しているため、今後もそれほど分厚くなることはありません。しかし、当面、109円から112円の3円幅で推移する月足の下降雲が強力な抵抗帯となるのは確実です。

ユーロ円は116円、豪ドル円は64円割れがさらなる下げ加速のシグナルに

ユーロ円週足チャートの一目均衡表

 ユーロ円の今後についても一目均衡表を使って展望してみましょう。チャート④は2017年以降のユーロ円週足チャートですが、見ての通り、下降雲が強力な抵抗帯になっています。2020年1月高値122円が雲に弾かれて長い上ヒゲで終わったように、未来に向かって重く垂れこめた雲下限の119円~120円台すら突破するのは難しそうな状況です。

 過去の下値を探すと2017年4月安値の114円台、2016年6月安値の109円台も視野に入ります。ただし、2019年秋からの上昇で基準線の横ばい推移が続いており、2019年8月や2020年3月につけた116円を割り込んで安値を更新しない限り、基準線の大きな下落は起こりません。そう考えると、直近安値の116円で踏みとどまるか、底割れするかが当面の焦点になるでしょう。イタリアをはじめ欧州のコロナ禍が4月になっても収束せず、底割れした場合は2016年6月安値109円台までの下落も視野に入るでしょう。

 一方、ユーロ以上に深刻な状況なのが豪ドルです。豪ドルやNZドルは先進国通貨の中でも流動性が乏しく、今回のようなパニック相場になると激しく売られる傾向の強い通貨です。

豪ドル円週足チャートの一目均衡表

 チャート⑤は豪ドル円の週足チャートですが、コロナショックで3月上旬には64円台まで下落。日々線を勢いよく下抜けした遅行線を見ても、下落の勢いがわかります。3月中に追加利下げしてゼロ金利に到達したことで、金利面から見ても、上昇の芽はなさそうです。

 今後は、チャート⑤右端の急激に低下した雲の下限70円台が上値の壁になりそう。コロナショックが金融機関の破たんや企業債務のデフォルト(債務不履行)といった信用不安につながった場合は、リーマン・ショックの1か月後につけた2008年10月安値の54円台までの急落もないとは言い切れません。

 コロナショックがいつまで続くかは、まだわかりません。ただし、感染者が低減し爆発的な流行が少しでも和らげば、世界中の中央銀行がこれだけ金融緩和している以上、急激なリスクオンへの転換、すなわち対日本円での外貨急騰に期待が持てるのも事実です。「落ちているナイフはつかむな」という投資格言があるように、あくまで下げ止まりを確認してからではありますが、ここ半年間はある意味、急落した外貨を底値で仕込む好機ともいえます。

「最悪のピンチこそ最高のチャンス」という言葉を頭の片隅に入れながら、決してパニックにならず沈着冷静に、資金を小出し小出しにしてチャンスを狙いましょう。

※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

佐藤正和の写真

佐藤正和(さとう・まさかず)

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。その後、年間取引高No.1を誇る外為オンライン・シニアアナリストに。通算20年以上、為替の世界に携わっている。ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」、ストックボイス「マーケットワイド・外国為替情報」に出演するほか、Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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