ファンダメンタルズやテクニカルといった各種分析や、自動売買、システムトレードといった運用方法に目を奪われがちですが、FXの本質は人間と人間の関わり合いで生まれる価格推移です。分析や運用方法が相場を動かすことは決してありません。どんな相場も、動かすのは無数の人です。
この企画では、徹底してFXにおける「人」にクローズアップします。第5回ゲストは、ユーチューバー系FXトレーダーとして大人気のカニトレーダーさん。初心者時代の失敗から、なぜ今YouTube配信を続けるのか。そして1万円の資金を1億円にするために必要な考え方などを教えてもらいました。
YouTubeライブの配信で毎日トレードを公開しながら300万円→1000万円を達成。2020年も毎日22:45~顔出し生解説中。【見ている人が勝てるようになる】【健全なFXチャンネル】をテーマに配信中。
●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)
ネットの情報よりもたくさん本を読む
——FXをなぜ始めたのですか?
FXを始めたきっかけは、とあるネットビジネスの仲間に勧められたからです。その前に株と先物の経験はありました。チャート上に売買シグナルが出るソフトを教えてもらったんです。今にして思うと、その方が本当にFXを勧めたかったのか、アフィリエイトリンクを踏んでもらいたかったかは今も分かりませんが(笑)
——初期のFXにはどんな印象がありましたか?
正直なところ、危険なイメージはありました。当時はまだ何百倍ものレバレッジがかけられたので、ハイリスクでハイリターンな投資と思っていました。ただ、やる気はありました。怖いという気持ちよりは、楽しみという期待が上回っていました。
——これまではどんな勉強をしてきましたか?
とにかく本を読みました。Amazonで「FX 書籍」と検索したり、大型書店を巡ったりして、FX関連の本は100冊以上は読みました。ここだけの話ですが、僕はネット記事の信用性は薄いと思っています。WEB上の記事は誰でも何でも書けますけど、本を出版するのはいろいろ大変じゃないですか。わざわざ印刷物にしているのは、よほどのことだと思います。ネットビジネスをやっているからこそ、思うことなんです。もともと読書も好きでしたし。
——特に印象に残っている本はありますか?
『相場で負けたときに読む本』(山口祐介・パンローリング)ですね。
それ以外は、ボリンジャーバンドだけで月収100万円みたいなあおり要素が強い本もたくさん読みましたが、今にして思うとああいう本を読んだのは失敗でしたね。「RSIは良いけど、ボリンジャーバンドは駄目」のように、当時は手法が全てだと思ってしまっていて、ちょっと試しては負けてやめるというトレードを繰り返していました。いろいろな本に、資金管理やメンタルが大事ということもサラッと書いてはあるんですが、「もうそんなことは知っているよ」みたいに流していたんですよね。勉強する角度が当時は間違っていたと、今になって思えます。
——初期の手痛い失敗を教えてください。
全部ですね。やってはいけないことは全てやりましたので、配信で聞く初心者の方の悩みもよく分かります。その中でも一番悪影響があったのがポジポジ病です。24時間開催している競馬、ボートレースみたいな感覚で、暇があれば常にエントリーしていました。ルールなどはなく、エントリーしたいと思ったところでエントリーしていました。さらにこれに、ハイレバ、ナンピン、飛び乗り、指標トレードが加わってきます。
——今のトレードスタイルとは正反対ですよね。
あのころの自分のトレードを振り返って、これでは成功するはずがないということが、今になってよく分かります。3年間は同じ失敗ばかりしていました。当時は僕の間違いを正してくれる人はもちろんいなかったです。でも今はYouTubeがありますので、僕の配信を通じて昔の僕と同じ失敗をしてほしくないと伝えています。
雰囲気の良いコミュニティ作り
——なぜYouTubeの配信をするのでしょうか。
正直なところ、FXの教材販売もしていますので、その宣伝をしたいというところはあります。自分は証券会社出身でもなく、FX業界に実績がなかったので、それを作りたいと思っていました。
それと、これまで自分が一人でFXに取り組んできて、あまり楽しくなかったんです。上がったり下がったりの情報交換や、予想を共有できるようなコミュニティを作ろうと思ったのがきっかけです。野球やサッカーでいうところの、パブリックビューイングのようなものをイメージしていました。
投資関連のコミュニティってギスギスしがちなんですけど、そうはしたくなかったです。中にはギスギスしていることが特徴のところもありますけど、僕は良い雰囲気を保って、ちゃんとトレードを勉強していこうというスタンスです。
——配信をしていて良かったと思うことは何ですか?
僕が今まで繰り返してきた失敗を、皆さんにはしてほしくないと思っていますので、「ルールを守れるようになりました」「無理なトレードをしない抑止力になっています」というご意見をいただいたときは、やっていて良かったと思います。
あと、他のコミュニティではあまりないのですけど、家族、仲間といった部分を意識しています。FXをやっていて、他の人と出会うことってほとんどないじゃないですか。横のつながり、連携があるところが良いことだなと思っています。たくさんの方と交流できて、鹿内さんともそれで知り合えましたし、FX攻略.comさんやいろいろな証券会社さんにも関わることができました。
——ありがとうございます。カニさんのチャンネルはたしかに雰囲気が良いですよね。
はい。真面目、健全、おふざけなしで頑張っています。
——リアルタイムのFXライブを、実際に自らのトレードに役立てるにはどうすれば良いでしょうか。
私の配信でいえば、OANDAのオーダーブックで判断しているので、これを学びたい方にはぜひ見ていただきたいです。各配信者は、インジケーター、メンタル、資金管理といったそれぞれの得意分野や特徴があるので、いろいろな配信をまんべんなく見るというよりは、自分に合ったやり方の配信を絞り込んで見るようにしてはどうでしょうか。
あとはミラートレードみたいに配信を使う方もいるんですが、僕としてはそのまま売買することは推奨していません。でも、言い方は悪いですけど、勝手にまねして、勝手に怒ってくる方もいます。あくまで参考にしながら、自分のやり方を磨いてもらえればと思っています。誰かをまねするだけだと、ご自身のスキルアップにもつながりません。
それに、24時間全てのトレードを完全に配信している人は、多分いないはずで、誰かのトレードを100%再現することは不可能です。それなら、まねをしたトレードを続けるより、その時間を自分のスキルアップに充てた方が有意義ではないでしょうか。
ロットが多いか手法が定まっていない
——ここからは、結果が出ていないトレーダーの方へのアドバイスをいただきたいと思います。
一番大切なのは、なぜ負けるかを考えることです。勝てないのは、勝とう勝とうという思考回路になっていることが原因です。どうやったら勝てるかより、なぜ自分は負けるんだろうと考えることが一歩です。負ける理由を潰していくことで、おのずと勝てるようになるんじゃないかと。
勝とうとすると、ポジションを多く持ったり、ポジションあたりのロットを増やしたりしがちですが、こうなると悪い方向に向かいやすいです。負ける原因を一つずつ解決していくと、いつの間にか収支はプラスに転換するんじゃないかと思います。
——具体的にアドバイスをいただきたいと思います。まずは誰もが通る道、ポジポジ病についてはいかがですか。
僕も昔とても苦労しました。収支を記録することが、一番効果があります。ポジポジ病だと、意味もなくポジションを持ってしまいます。なので、収支表をちゃんとつけることで、いかに自分が無駄なポジションを持っていることが分かります。トレードに一言のコメントをつけると良いでしょう。
長く収支表をつけていくことで、勝っているときにはルール通りにトレードができていた、負けているときには余計なポジションを取っていたことが分かってきます。もちろん売買のルールが決まっていることは前提ですが、トレードノートのような形で記録をつけることに挑戦してみてください。面倒な作業ですが、効果は高いです。紙でもExcelでもジャポニカ学習帳でも良いです。
——チキン利食いについてはどうしましょうか。
チキン利食いの定義にもいろいろありますが、「予定していたより早く利確してしまう」がそれに当たるかと思います。いくつか理由はありますが、まずは利益確定のルールが決まっていない、あるいは曖昧ということです。なので、「これくらい儲かったからもういいや」という形でチキンな利食いになります。
次に、金額ベースで満足できる水準に到達してしまうことが、早い利食いにつながっていくというのもあると思います。これはロットの張り過ぎが原因。ある程度儲かると、それ以上値幅を伸ばさなくても良いかなって思ってしまいます。
それと、恐怖が理由になっていることもあります。エントリー後に利益が乗ってきたら、「この含み益がなくなったらどうしよう」という感情です。でもこれは予定外の行動なので、長い目で見れば期待値を下げてしまいます。
具体的な対策としては、指値で利食い価格を決めて、そこから絶対に動かさないのが良いかと思います。一度決めたら、石像のように何もしない。もちろん損切りも入れておきます。チキン利食いの要因は、チャートから発生する感情だと思うんです。であれば、利食いと損切りを決めておいて、あとはチャートを見ないという対策ですね。決済注文が入っていれば、そこに到達したか、していないかだけになり、途中経過は関係なくなります。
検証できる環境でトレードを開始
——トレード手法の検証はどうやれば良いですか?
MT4を使っていれば、トレードの手法や結果を検証する方法はいろいろあると思います。そうでなければ、普段トレードをしている証券会社のツール次第な部分はあります。
そこで、考え方をひっくり返して、検証ができない状況ではFXをしないのはどうでしょうか。魅力的なトレード環境であっても、そこで検証ができないのであれば、選択肢に入れないという発想です。
——検証ありきで、口座や手法を選ぶということですね。
そうですね。MT4なら僕も使っている「メタリポ」というツールを使う。そういったものがなければ、Excelでトレード成績を分析しても良いです。どちらにせよ、検証ができる状態でトレードに参入する必要があります。これがないと、場当たり的なトレードになってしまいます。
——トレード手法そのものが、本当に勝てるかどうかを確かめる良い方法や考え方はありますか?
分母の確保です。サイコロの目の数は、確率上はそれぞれが6分の1で出ますけど、50回や100回程度振ったくらいなら、どれか一つの目だけが多く出ることはよくあります。でもこれが5万回なら、ほとんど確率通りに収束するんですよね。過去のチャートをさかのぼりながら、ある条件でトレードをしたら何勝何敗になるかを検証するなど、小さなところから始めていきましょう。
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資金と利益のバランスが大切
——ここまでありがとうございました。ここからは、読者の皆さんからいただいた質問へのご回答をお願いいたします。まず、こちらから。
Q.含み損や損切りのときのメンタルの保ち方を教えてください。
逆に考えると良いと思います。メンタルを保つためにはどうすれば良いのかではなく、なぜメンタルを保てないかという理由を考えましょう。多いのは、負けたら悔しいからだと思います。それではなぜ、負けたら悔しいのか。お金を失うのが嫌だから、という理由があるとします。それならロットが多すぎるんじゃないかという答えになります。
損切りしても悔しくない条件でトレードをするのが結論になります。悔しくなってからそれを解決するのは大変ですので、最初から含み損や損切り時に悔しくないようなトレードを設計しましょう。
——たしかに、ロットが小さければ、負けてもメンタルへの影響は限定的ですよね。
そうですね。だいたいの問題は、ロットが大きいことで発生します。また、ロットを下げても負けて残念に思うのは、分析や検証が足りないです。手法に自信がないから、実際に負けてしまうと「ああ、駄目だった」という感じで落ち込んでしまいます。しっかり検証してそのやり方を継続していき、お金が増えるという裏付けがあれば、含み損や損切りでメンタルが揺らぐこともないはずです。
——1万回実験をして、それでもプラス収支になるトレード手法があったら、1回くらい負けてもなんとも思いませんよね。よほどロットが大きくない限りは。
はい。1日負けたくらいなら、365日の中の1日に過ぎないという感じですね。毎回一喜一憂してもきりがないです。もちろんトレードは一球入魂ではありますが、成績は長い期間の積み重ねで決まります。連敗もあれば連勝もあるのがトレードで、良いときも悪いときもあります。大切なのは分母がたまったときに、トータルで勝ち越していることです。
——どんどんいきましょう。
Q.ルールを守れるようになりましたが、感情の浮き沈みが激しく辛いです。
これも先ほどと同じですね。感情の浮き沈みが抑えきれない理由は、だいたいはロットが大きいか、手法に自信がないかのどちらかです。あとは長い目で見て考えることです。
冷静にトレードができないのは、裁量の要素が大きかったり、メンタルが入り過ぎているパターンも考えられます。まだ機械になりきれてない部分があるのかもしれません。
僕も、ロットを落としてトレードをすることは、正直嫌だったんです。儲けが少なくなる、FXがつまらなくなるから嫌だってずっと思っていました。ただずっと負けが込んでいたので、当時は1万通貨が最少ロットの口座でしたので、1万通貨取引でやってみたんです。そうしたら、たしかに面白くないんですよ。勝っても負けても数千円程度でしたから。でも、感情がほとんど動かず、冷静にトレードができたんですよね。このときの経験が今につながっているのは間違いないです。これが本当のFXだと。
Q.1万円の資金から、億万長者になれますか?
投資だけで1万円を1億円にするには1万倍にしないといけません。大勝負に何回も勝ち続ければ理論上はそうなりますけど、狙ってできるものではありません。
投資に限らず、人生全体で少額の資金から大きな利益を得る大成功を得るためにはどうすれば良いかを、僕なりに考えてみます。長くネットビジネスをやっていますので、これといって元手がなくても、1か月に5万円、10万円を稼げるやり方はたくさんあります。あくまで例えばですけど、メルカリで5000円で仕入れたものを、どこかで6000円で売っても良いです。こうやってお金を貯めて元本を大きくして、手元の資金が10万円になったとします。今度は5万円で別の有料ツールを手に入れたり、何らかの技能を学べる教室に通うなどして、それでもっと稼ぎます。そしてこれらで得たお金をFXに投資して、さらに増やしていくことで、時間をかけて焦らなければいずれ成功できるのではないでしょうか。
大切なのは、自分が用意できる資金と、稼ぎたい目標の利益が釣り合っていることです。例えば5万円の資金を1か月間で10万円にしたいと思ったら、月利100%が必要です。これだとハードなトレードが求められてしまいますよね。用意できる資金に対して、無理のない利益目標を決めることが大事です。
いくら稼ぎたいかだけしか考えないと、暴走したトレードになってしまいます。OANDAが公開したデータにもありましたけど、上手な人でも月に10%が限界です。10万円で始めるなら、月に1万円増えたら最高だな、くらいの感覚ですね。この10万円を今すぐに20万円にしたいと考えてしまうと、どこかでクラッシュしてしまいます。
※この記事は、FX攻略.com2021年1月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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\FX会社によって違うところをチェック/
スプレッド | FX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。 |
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
教育コンテンツ | 配信されるマーケット情報や投資家向けコンテンツの有無。 |
キャンペーン | 新規口座開設時や口座利用者向け各種キャンペーンの内容。 |