トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
ワクチン開発次第ではもう一段高か
米大統領選からちょうど1週間が経過しました。トランプ大統領は不正投票があったとして徹底抗戦の構えですが、マーケットはバイデン氏勝利を背景にリスクオンの展開です。トランプ大統領が敗北を受け入れていないため、局地的にはリスクオフの展開はあるかもしれませんが、不正に対して明確な証拠がない限り、バイデン政権を意識した動きになると思われます。また、9日に米ファイザーが開発する新型コロナウイルスのワクチンに予防効果があると伝わったこともリスクオンに拍車をかけており、クロス円は上昇、ドル円も105円台まで大幅に上昇しています。
短期勢を中心にドル円のショートポジションがかなり溜まっていたので強烈な大陽線は売り方の戦意を喪失させました。コロナウイルスのワクチン開発次第では米長期金利の大幅上昇からもう一段のドル高に警戒しなくてはならないのかもしれません。バイデントレードによるリスクオンのドル安や、FRBの異次元緩和からドル円は中期的に見て下値余地は十分ありますが、現時点では中立スタンスで様子を見たいと思います。
バイデン政権で恩恵を受ける通貨は？
トランプ大統領と明確に違う部分としてはわかりやすいところで言えば対中政策でしょうか。バイデン氏は表向き厳しい姿勢を中国に向けていますが、トランプ大統領のように関税の掛け合いは一時中断される可能性があります。米中貿易戦争の回避策として中国政府は人民元安に誘導していただけに、割安な人民元に調整が入る可能性はあります。
また、中国では新型コロナウイルスの影響からいち早く経済が回復しており、今月発表された製造業PMIの結果は53.6となっており、これで好不況の判断の目安とされる50を6カ月連続で上回りました。欧米がコロナ感染拡大に苦しむなか、消去法的にも人民元が選好されやすい状況です。そのほか、トランプ大統領とのバイデン政権の違いとしては対メキシコ政策でしょうか。貿易問題や国境の壁問題が徐々に緩和していくようだとメキシコペソの上昇にも期待感が出てきます。
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