動かない人[中里エリカ]

一つの業界に長く勤めているといろいろな人に出会う。時々いるのが、自分で動かないで聞いてばかりの人だ。「どうやったら儲かるのか?」と聞かれても、資産状況は違うし、損失として抱えられる限度額も違うし、取引手法も一人一人違うし、理解度も異なるので、お勧めは一切しない。そうすると「プロなのに分からないのか」といわれる。また、「儲かる自動売買ソフトを教えてほしい」と聞かれても、「この自動売買ソフトがお勧め!」ということは一切いわない。

私たちは外務員資格を持っているので、「断定的判断」が禁止されている。したがって、「これなら絶対安心」「これなら絶対に儲かる」ということはいえないし、そもそも「儲ける」ということさえいえないのだ。

断定的判断ができないので、ニュースを書く場合には「〜の可能性がある」というような表現を使うのだが、個人的に相場が上がると思っていても「またはこうなることもあり得る」という反対事項も添えなければならない。

時には、「誰それのいった通りにしたのに損が出た」という問い合わせを受けたりもする。そんなことをいわれても、お伝えできることは限られている。もちろん、取引ツールの操作方法や商品説明ならお伝えすることはできるが、「儲かる方法を教えてほしい」「相場がどちらに行くか知りたい」といわれても、それはその人が自分自身で考えることであり、他人が考えるものではないし、相場に絶対はない。

最近はいろいろな商材が出てきて、中には「絶対儲かる」「絶対安心」というものも散見されるが、この手のフレーズには気を付けた方が良い。為替相場で絶対儲かるということも、絶対安心ということもあり得ない。

しかし、自分で調べたり試したりしない「動かない人」は「儲かる」という言葉に弱いので、ついついよく分からないものをよく分からないまま買ってしまいがちだ。そういう人はもちろん操作マニュアルも見ないし、商品説明もきちんと読まない。そのくせ損失を出すと人のせいにする。

相場のことは相場にしか分からない。まずは自分で調べたり試したりして、どうしても分からなかった場合のみ誰かに聞く、というタイプの人はトレーダーとして伸びると思う。なぜなら自分で自分の責任を取っているからだ。誰が何をいおうとも取引は全て「自己責任」である。

相場に素直になる、そして自分で自分に責任を持って取引できる人、自分で動いて調べられる人。そうした人たちが優れたトレーダーになっていくのだと思っている。

※この記事は、FX攻略.com2018年4月号の記事を転載・再編集したものです

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中里エリカ(なかざとえりか)

サクソバンク証券株式会社マーケティング部長。大学卒業後、為替ブローカー会社、外資系銀行にて為替及びデリバティブのインターバンクでのトレーディング業務に従事。勤務していた会社が子会社として「オリエント・トラディションFX」(現在の外為どっとコム)を設立したのをきっかけに、長年FX取引に携わっている。その後DMM.com証券、フォレックス・ドットコムジャパン、アルパリジャパン、デューカスコピー・ジャパンなどを経て現職。

公式サイト:サクソバンク証券