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天然ゴム、年初来高値更新を目指す[佐藤りゅうじ]

年初来高値を越える210円を目指すか?

 2019年12月号で、当先のサヤ関係が上昇を示唆していると述べた天然ゴム相場ですが、その後に23%超も上昇しています。需給関係にも変化の兆しがあり、ここから一段高の可能性もありそうです。今号では、年初来高値を試す勢いをもって上昇しているゴム相場の今後を占っていきたいと思います。

東京ゴム先限の日足チャート(呼び値1キログラム)

 まず、2019年の天然ゴム相場の大きな流れを東京ゴム先限の日足チャート(呼び値1キログラム)を見ながら簡単に振り返りましょう(チャート①参照)。一見して分かることは、3月4日の209.5円(年初来高値)と6月7日の高値207.9円でダブルトップが形成されていることです。3月4日までの上昇の背景には、天然ゴムの価格低迷対策として昨年11月に生産国の輸出削減が決定されたことがあります。実際に輸出削減が始まったのは今年4月からですが、このときには既に織り込まれ下落していました。その後、エルニーニョ現象による減産の懸念から6月に再度地合いを引き締めましたが、その後は生産が回復したことからジリジリと値を削りました。また、米中貿易摩擦の影響から自動車タイヤを筆頭に天然ゴム需要が減速するとの見方も広がり、10月3日には昨年11月以来の安値となる154.3円まで下落しました。

 そして、ここから反騰が始まり11月26日には192.5円まで上昇しました。8週間弱で約40円もの急騰です。その間、押しらしい押しもなく一本調子で上昇し、週足では11月22日時点で7週連続高となっています。このまま上昇を続けると、上記した年初来高値209.5円を試す可能性もありそうです。

株価連動からゴム独自の材料へ

 今回の上昇ですが、10月3日を底値に反騰を開始しています。これはダウ平均株価が2万5743.46ドルをつけて反発を開始したのと全く同じタイミングです。その後、ダウ平均株価もほぼ一本調子の上昇となり、11月19日には2万8090.21ドルの市場最高値をつけました。ダウ平均株価の上昇は、他の国々の株価指数の上昇に影響を与えただけでなく、銅やアルミといった素材価格もこれに追随しています。つまり、10月からの天然ゴムの上昇は天然ゴム独自の材料ではなく、株価指数や他商品への連れ高の面が強かったと考えられます。

 なお、10月以降の株価上昇は、米連邦準備制度理事会(FRB)が同月15日から、短期金融市場の資金不足を解消するため、短期国債を月600億ドル(約6兆5000億円)のペースで購入を開始したことが背景にあります。パウエルFRB議長は、このバランスシート拡大再開をQEとは違うと述べていますが、お金に色はついていません。その意味では10月からの天然ゴム相場の上昇も、緩和マネーの余波といってもいいでしょう。

 ただ、10月からの上昇で、ロンドン金属取引所(LME)銅3か月物が7%前後上昇したのに対し、天然ゴムは23%超も上昇しており、ここには天然ゴム独自の材料もあります。それは天然ゴムの主要生産地域である東南アジアで、ゴム樹に真菌病が発生していることです。国際ゴム研究会(IRSG)は、「真菌病被害は、40万ヘクタールの天然ゴム農園に広がっており、タイ、インドネシア、そしてマレーシアの3か国で今年は80万トンの減産となる可能性がある」としています。2018年の世界天然ゴム生産量が1387万トンですので、IRSGの予想通りなら前年比約5.7%の供給減少になります。

中国需要は弱いか

 一方の需要サイドを見ると、11月8日に中国汽車工業協会(CAAM)が発表した10月の中国自動車販売台数は前年比4.0%減となりました。これで16か月連続減となり、前年同月を下回りました。昨年は1990年以来の前年割れとなりましたが、今年も昨年の販売台数を割り込むとみられます。

 また、11月14日に発表された一連の中国の経済指標は、市場予想を下回る内容となっています。特に中国の固定資産投資は、年初来前年比で5.2%増と、1998年以来の低水準となっています。小売売上高も前年比7.2%増となったものの、アナリスト予想の同7.8%増を大きく下回る数値です。これらの指標を見ると、中国景気の減速が明らかになっており、このような状況では自動車へ対する購買意欲も低下するとみられます。現状、需要サイドからの天然ゴム相場の支援材料は限られています。

需給から見れば上値余地はあり

 なお、11月13日に天然ゴム生産国連合(ANRPC)が発表した今年1~7月の世界天然ゴム需給を見ると、世界生産が前年比7.3%減の703.9万トン、世界需要が前年比0.8%増の808.2万トンとなっており、104.3万トンの供給不足となっています。ANRPCは生産国の組織なので、数値を多少割り引いて見る必要がありますが、それでもファンダメンタルズの面から見ると上値余地がありそうです。

※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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