マーケットでの注目材料の移り変わり
マーケットで取引される通貨、株、債券などの価格は、需給・ファンダメンタルズ・テクニカルの影響を受け、短・中長期のトレンドを形成します。特に、ファンダメンタルズと聞くと「難しい!」という反応をする方がおられます。しかしファンダ苦手組も、国内総生産(GDP)やインフレ率などの経済指標発表時には、無意識のうちに自分なりに数字を分析しポジション形成に役立てているので、先入観の部分が大きいように感じます。
ここ数年、市場が一番注目していた経済指標は、米国の雇用統計でした。しかし過去を振り返ると、相場を動かす材料や旬の経済指標が時代と共に変化していることが分かります。今回のコラムでは、「相場を動かす材料の移り変わり」と「旬の経済指標」についてお話しします。
それではまず相場を揺るがした出来事を振り返ってみましょう(図①)。為替の歴史で最も大きな影響を与えたのが、1985年9月のプラザ合意です。当時はレーガン米大統領が「強い米国の復活」を声高に叫び、レーガノミックスと呼ばれる経済政策を発表し、そこには「強いドル」という為替政策が含まれていました。しかし、強いドルは米国の貿易赤字の拡大を招いてしまい、財政収支の悪化を引き起こす最悪の事態となりました。そこで、過度のドル高を是正し双子の赤字を解消する目的で、1985年にプラザ合意が決定されたのです。そのため、当時は米国の貿易収支が最も注目を集めた経済指標でした。
その後、1990年代に入り湾岸戦争・ソビエト連邦崩壊・東西ドイツ統一などの地政学リスクが台頭します。経済指標とは違い、ニュースが出るタイミングはバラバラ。「有事のスイスフラン」が一世風靡したのも、この時代です。
「地政学リスク相場」到来と共にディーリングのやり方も変わりました。湾岸戦争のころは「原油価格動向をにらみながらドルの先行きを考え相場を張る」という今までにない取引手段を覚えました。一般論として、原油価格上昇→米国の景気減速懸念というシナリオを立て、それを先取りする形でドルを売るという「原油とドルの逆相関性」を念頭に置いた取引方法でした。
2000年を目前にしたころ、単一通貨ユーロ導入に向けたコンバージェンス取引で、欧州が舞台となりました。これはユーロに加盟する国々の金利水準や為替交換適正レベルが一定の水準に収束する動きを利用して行う裁定取引のことを指し、欧州通貨同士の売買が盛んになりました。
そして21世紀に突入。このころの大変化は中国、ブラジルなどの新興国の台頭だったのではないでしょうか? ずっと米欧などの主要国ばかりに目を奪われていた投資家たちは、豪ドル取引をするのに中国の金融政策や経済指標をにらみながら行うという新しい取引方法を採用するようになりました。
もう一つ絶対に忘れてはならないのが、日本の個人投資家の登場です。1998年に「外国為替及び外国貿易法」が施行。為替取引に一般個人の参入が認められ、FX(外国為替証拠金取引)時代の幕開けとなりました。特にゼロ金利の日本の円を売り、高金利通貨を買う「円キャリートレード」に熱中したのです。とにかく円を売っていれば儲かるという非常に分かりやすい相場展開が数年間続いたことは、日本人のFX人口を大幅に増やしました。
経済指標について
そもそも経済指標の定義は、「各国の公的機関などが発表する、経済状況を構成する要因(物価、金利、景気、貿易など)を数値化した、経済の現状や過去からの変化を正確に把握できるもの」であり、マクロとミクロに分かれています(図②)。この中で最も重要な指標は、マクロ経済の長ともいえるGDPです。その理由は、GDPの変化により、経済全般・金融政策・財政政策など多岐にわたり影響が出てくるからです。
このように、国の経済活動を判断できるマクロ経済指標の方が、重要度が高く注目を集めやすいのですが、私自身が10年ほど前から重視しているのは、ミクロ経済指標の一つに数えられている購買担当者景気指数(PMI)です。ほとんどの経済指標は、各国の統計局や中央銀行が発表しますが、PMIだけは大手金融情報サービスを提供する民間企業Markit(マークイット)社が発表しています(図③)。
図③ 出典:Markit社 2019年5月ユーロ圏総合PMI
それでは、次回のコラムでは欧州と英国で私が注目している経済指標について、具体例を挙げて説明したいと思います。ユーロやポンドを取引する読者の皆さま、楽しみにお待ちください。
※この記事は、FX攻略.com2019年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
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サポート体制 | サポート内容や対応可能時間の違いをチェック。 |
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