●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)
FXを始めたきっかけは騙された友人の仇討ち
鹿内 どんなきっかけでFXを始めたのか教えてください。
蜂屋 FXは大学生時代に始めたんですが、きっかけはちょっと特殊です。一番仲が良かった友人が、投資詐欺に遭いました。56万円くらいのDVDを買うと、日経平均先物か何かにレバレッジをかけて取引をする手法が分かるという内容だったと思います。そういう大学生を狙った詐欺が当時多かったですね。
鹿内 今も同じような話を聞きますから、いつの時代でもそういう手口はあるのかもしれません。
蜂屋 そうですね。今はUSBメモリを高額で売りつけるみたいなのが多いかもしれません。
その友人は学生ローンを3社くらい組まされていました。それでお金がないので、口座開設の入金ボーナスで取引をするわけです。そしてそのDVDを別の友人に紹介して購入まで至ると、8万円の紹介料が入る、というものでした。
これに引っかかった友人がすごく落ち込んじゃって、僕も学生ローンを返すのにお金を貸したりしました。
鹿内 大学生で50万円は大変な金額ですよね。
蜂屋 そうですね。もちろん僕にもそんなお金はないですから、アルバイトをして貯めていたお金を貸しました。
この事件を通じてものすごく怒りが湧いてきまして、投資のことを徹底的に調べました。これがFXとの最初の出会いです。
鹿内 確かに特殊です。
蜂屋 もちろんこんな出会い方ですから、投資に対して良いイメージはないんですけど、心のどこかでお金を取り返してやりたいなと。詐欺に遭ったのは友人ですが、自分としてもすごく悔しくて。
調べていくうちに、投資で勝っている人はいるんですね。そういう人たちと騙される学生の違いは何だろうと考えた答えは、知識の差です。もちろん悪いのは騙す人たちですが、知らないのもいけないことだと思いました。
鹿内 FX以外の投資はやっていますか?
蜂屋 FXを始めてから、仮想通貨はやりました。でも株はやっていません。
鹿内 その中でFXを選択したのはどういう理由があったのですか?
蜂屋 仮想通貨のボラティリティが下がったのが大きいです。今ならもう同じ手法でも、FXの方が利益は大きいです。
あとは初心者時代にFXで結果が出てないのに、他の投資をやっても仕方ないだろうと思っていました。まずはどれか一つを極めようと。それとFXは銘柄が限定されているので、それほどたくさんの銘柄を監視できない自分の手法にも合っている気がします。
自分のトレード実況をひたすら見直す日々
鹿内 FXを始めたばかりのころに取り組んでいたことを教えてください。
蜂屋 15分足から1分足を使ったスキャルピングです。
鹿内 今のトレードスタイルからはちょっと意外です。
蜂屋 いろいろ調べたら、稼いでいるトレーダーにスキャルパーが多かったというのはありますね。そういう目立っている人たちに憧れて、短期売買にのめり込んだ時期がありました。今思えば甘い考えなんですが。
鹿内 スキャルピングをやってみてどうでしたか?
蜂屋 難しかったです。利益はそれなりに出せても、典型的な利小損大でした。勝率は良くても、損切りができない。そして浅く利食いした後も、どんどんトレンドが伸びていく。何か根本的なところに問題があったのではと感じました。
鹿内 その時期のトレードで、記憶に残っている手痛い失敗はありますか?
蜂屋 取り返そうとするトレードで、大きくやられたことです。1ロットを張って負けたら2ロット張るというギャンブルみたいになっていて、今思えば教科書に載る悪い例のようなトレードをしていました。その根底には、熱くなってしまう自分の性格があって、そこをちゃんと理解していませんでした。自分を知らなかったですね。
鹿内 その後はどのようなトレーニングをしましたか?
蜂屋 短期的な売買は続けていましたが、インジケーターを変えたり、本を読んで内容を試したり、ブログを読んで真似をしたり、電子書籍を買って手法をやってみたり、有名トレーダーさんのやり方を取り入れてみたりと、できることは全部やりました。また自動売買もうまくいかなかったです。
鹿内 そこから今の長期的なトレードスタイルに落ち着いたきっかけは何だったのですか?
蜂屋 自分の行動を記録するようにしました。トレードムービーを撮るようにしたんです。
鹿内 ノートではなくムービーですか。
蜂屋 はい。自分がトレードをしている間、ずっとマイクで解説をしながら動画を撮るんです。
鹿内 実況のような。
蜂屋 そうです。まさにトレード実況です。意識的に、自分が今考えていることは全部発声しました。「今、落ちてきているな」「三尊ができそうだな」「ここで安値を割ったら売ろうかな」のように。その映像を次の日に見ると、自分の感情が揺れていたり、視野が狭くなっていることが分かるんです。自分で自分を観察できたんですね。
鹿内 動画は聞いたことがないです。
蜂屋 Excelなどにまとめて後で読み返しても、自分の都合の良いように解釈したりします。動画なら、まさにそのときどう思っていたか、何を感じていたかが残せます。こうして自分を省みると、やはりFXは自分との戦いだと思いました。そして自分がせっかちなことがよく分かりました。
鹿内 すさまじいトレーニングです。自分の動画を見るのって、精神的にきつくないですか?
蜂屋 めっちゃきついです。負けるトレードはもちろん、勝って喜んでいるのを見るのも恥ずかしいです。作業的にも面倒だし、時間もかかりますが、それでもトレードで負けるよりマシだなって思って。これくらいやらないといけないくらい、自分はトレードで負けているんだと思ったんです。このときやっとスタートラインに立てました。
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一年間続けてみて自信が確信に変わった
鹿内 現在の平行チャネルを用いたスタイルにはどうやってたどり着いたのですか?
蜂屋 トレード録画を通じて、自分は感情に勝てないタイプの人間だと分かったんです。自分を変えられないなら、それに合わせてやり方を変えるしかないと。なるべく感情が動かない、ハラハラしないために、長い時間足を基準にしたやり方を模索しました。
鹿内 その中で平行チャネルをメインのツールにした経緯は?
蜂屋 有名なトレーダーさんの多くが、「FXでは待つことが大事」といいます。でも、どこまで待てば良いのか分からなかったんです。良いポイントってどこだろうと。そのポイントとして、平行チャネルはどうだろうと思ったのが最初ですね。インジケーターもいろいろ試したんですが、必要な情報はやはりローソク足に詰まっているなと。実体とヒゲに、投資家の心理や考え、思いがぎっしり詰まっているのではないかと。
鹿内 平行チャネルはパラメーターで形が変わるものでもないですし、時間足が変わっても線の位置は同じです。
蜂屋 平行チャネルって、「ここで買うべき」「ここで売るべき」という絶好のポイントを線で結んだものです。ローソク足だけで相場を分析すれば、後付けとはいえ、超高値、超安値があるんですね。めちゃくちゃ目立つポイントです。
鹿内 相場が切り返しているポイントで売買すれば儲かりますよね。「あれ、このやり方なら勝てるんじゃない?」って気付いたのはどのタイミングですか?
蜂屋 その状態になるまでに一年くらいはかかりました。今は専業トレーダーになって三年なんですけど、その前の一年間で本当にこの平行チャネルのトレードで生きていけるかを検証しています。僕はもともと調子に乗ってしまうタイプの人間で、いろいろな手法を試しては一喜一憂していました。なので、相場が一周するまでは同じやり方でやらなければと思いました。
鹿内 一周はどれくらいの期間ですか?
蜂屋 分かりやすく一年間ですね。そこまで根拠があったわけでもないのですが、一年間やって勝てなかったらその手法はダメだなと。時間もかかって大変でしたが、これから一生負け続けるよりはこの一年間だけ苦しくてもやり遂げることが大切と思って取り組みました。負けてもブレない、勝っても喜ばないというスタンスで一年間やりきって、月平均で300から400pips獲得できて確信を持てました。
鹿内 これだったら収入源になると。
蜂屋 そうですね。
鹿内 前から聞きたかったんですけど、一度引いたチャネルラインは更新しますか?
蜂屋 基本的にはしません。一つのラインを引くまで、あらゆる可能性を試すのでかなり時間がかかります。その代わり、一度決まったら基本的には動かしません。というのも、絶好のポイントを待つために平行チャネルを引いているわけですから、自分からそれを動かしたら待つことにならないからです。
鹿内 どんなチャートでも平行チャネルは引けますか? 例えばビットコインとか。
蜂屋 ビットコインは今(2019年5月8日の取材時)はきれいに引けますよ。完全に長期下降チャネルを抜けて、バブルが始まる前の上昇チャネルに入っています。バブル開始前のラインを下に抜けるまでは、基本的には買い目線で良いと思います。
鹿内 よくいわれることですが、相場は参加者間の多数決で決まると。なので、簡単に意見が分かれるもの、例えば時間足やパラメーターで形が完全に変わる個別のテクニカル分析などは、多数決の要因にはなりにくいのではないかと。この点で蜂屋さんの平行チャネルは、誰でも見られて条件が変わっても形は同じですから、多数決の要因になるものという印象です。相場に参加している人たちの共通見解といいますか。
蜂屋 そういう部分はあるかもしれませんね。
鹿内 シンプルなものじゃないと、トレーダー間で共有されないですよね。
蜂屋 たくさんの資金を運用しているプロが、ここは高い、ここは安いと感じる水準になるなら、それはきっと機能します。
4時間に1回チャート家からは出ない生活
鹿内 今はどういう生活をされているんですか?
蜂屋 恥ずかしいくらいのウルトラインドアです。お昼くらいに起きて、チャートを見て、記事を書いて、ご飯を食べてという生活です。出かけることはほぼありません。欲しいものがなくて、行きたいところもない、食べたいものもないんですよね。お酒も飲みませんし、家にいるのが好きなんです。ずっとチャートを見続けている手法でもないので、空いている時間はゲームをしたり。あと最近は動画編集が楽しいです。僕は本をすごくたくさん読むので、書評ユーチューバーになりたいなって。
鹿内 常にチャートを表示している感じですか?
蜂屋 そうですね。別のことをしながらでもチラチラ見てはいます。ただずっと見る必要はないのが、平行チャネル手法の良いところです。とはいえ、4時間足でトレードをするので、4時間に1回は必ず全通貨ペアを見ます。
鹿内 こうしてお話を聞いていると、手法はその人の生活スタイルにマッチしていないといけませんね。体力もありますし。
ところで、チャートを頻繁に見ていたら、エントリーしたくなってしまう状態にはもうなりませんか?
蜂屋 完全に克服しました。かつては前のめりでそういう感じだったのですが、自分の動画を見るようになって解決しました。自分で実況をしていると、説明ができない行動は取らなくなります。脳内にあるその考えは、ちゃんと人に説明できるものなのか? この動画が世界に公開されていいのか? と考えると、余計なことはしなくなりますね。
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人とは違った努力で9割から1割に入る
鹿内 これからFXを始める人は、何から手をつけたら良いのでしょうか。
蜂屋 二つあります。まずはたくさんの手法や手がかりを試してほしいです。失敗しても構いません。そして、もし勝っても別のやり方を試す。負けたらもちろん別のものを試す。最初のうちは自分がスキャルピングに向いているのか、スイングトレードに向いているかは分かりません。これは自転車の乗り方に似ていて、乗り方、ペダルの漕ぎ方を本で読んでも実践しないと分かりません。自分に向いたものを探す時期は必要です。
鹿内 初期段階では手法の旅人でも構わないと。
蜂屋 何年も続けるのでなければ。もう一つは、そういったいろいろなアプローチを試す中で、自分がどういうタイプの人間であり、トレーダーであるかを知ることです。こういう場合によく負ける、こういう場合に感情的になるといった心の動きを、何らかの形で残していかないと、それこそ手法の旅人で終わってしまいます。明確な目的地がある旅は素晴らしいですが、フラフラするだけの放浪はFXにおいては意味がないです。もちろん最初から自分に合ったやり方に巡り会えればそれがベストなんですが、なかなか難しいですからね。
鹿内 メンタル中心に自分の観察日記をつけるのも良さそうです。
蜂屋 そうですね。勝ち負けは後からついてきます。どう感じたかが大切です。
鹿内 動画を撮るのが無理なら、トレードした直後にすぐ書くのがいいですよね。
蜂屋 トレードするたびに、今こう感じた、こう考えたというものを書き記しましょう。
鹿内 逆に、何年かFXをやっていて、なかなか結果が出ない人はどうすれば良いでしょうか?
蜂屋 その状態にある人の気持ちはよく分かります。僕も丸二年は負け続けていました。結果が出ていない方は、それまでいくつかのやり方を試してきたと思うのですが、それぞれに対する検証が甘いかもしれません。感情も含めて記録を残していないので、ちょっとやっては次というように、放浪しちゃっている可能性があります。
FXでは9割が負けていて、1割しか勝てない世界ですから、9割の人が驚くような努力をしないと勝てないです。それが自分の場合は、容量一杯までアップロードされているYouTubeで限定公開(自分しか見られない)された自分のトレード実況動画です。これなら上位10%に入ってもおかしくない、と。
鹿内 ずばりお聞きしますが、普通の人でもFXで勝てますか?
蜂屋 それはまさに僕のことです。今やっているブログの名前にもありますが、典型的な凡人です。最初の二年はずっと負けていて、自分の感情を全くコントロールできないし、負けたらロットを増やして取り返そうとするダメなトレーダーでした。そう考えると、自分が凡人であることを自覚するところから始まったのかもしれません。ネットや雑誌のすごいトレーダーの情報を見て、どこか自分でもできるのではと思っていた部分がありました。
憧れていたすごいトレーダーは未来が読めて、短期間で資産を何倍にもしてしまうかもしれません。そういう人は実際にいます。ここから○円上がりますって情報を先出ししちゃう人とか、スキャルピングで1万円を1000万円にする人とか。でも、自分は凡人なのでそっち側の人間ではない。そして、自分のメンタルが手法に追いつかないなと感じました。そして、それを自覚したからこそ上達できました。そういう意味で、普通の人でもFXで勝つことはできるはずです。
※この記事は、FX攻略.com2019年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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\FX会社によって違うところをチェック/
スプレッド | FX取引における取引コスト。狭いほうが望ましい。 |
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約定力 | 狙った価格で注文が通りやすいかどうか。 |
スワップポイント | 高水準かどうか。高金利通貨の取り扱いの数。 |
取引単位 | 少額取引ができるかどうか。運用資金が少ないなら要チェック。 |
取引ツール | 提供されるPC・スマホ取引ツールの使いやすさ。MT4ができるかどうか。オリジナルの分析ツールの有無。 |
シストレ・自動売買 | 裁量取引とは別に自動売買のサービスがあるかどうか。 |
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