※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
通貨の強弱関係は根本的に変わらない
為替相場において、利上げ実施や緩和を縮小できる国の通貨が上昇を続け、逆にできない通貨が弱いという状況は変わっていません。通貨によっては年初来続いたポジション積み上がりの解消で一時的に変化する可能性もありますが、それでも長期的なトレンドは変わらずといっても良いでしょう。
ドル相場とユーロドル
ここ最近はドルの輝きが徐々に薄れ、逆に黒ずんでいたユーロが輝き始めてきた相場と考えています。米国はトランプ米大統領の拡張的な経済政策の期待感も薄らぎ、米連邦準備制度理事会(FRB)の継続的な利上げと資産縮小の動きを先取りしたドル高も調整局面に入り、米債利回りは低下傾向にあります。
一方、ユーロドルはマクロン仏大統領の登場により、ユーロの存続危機への懸念もすっかり払拭されました。つい口を滑らせてしまったのでしょうか、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はECB理事会後の記者会見で「秋には決定を下す」と発言。市場では、来年1月から月額100億ユーロの資産縮小へ動くことが期待されています。
これらの状況から、中長期的なユーロショートの巻き戻しが今後も継続する可能性が高いと考えられます。
カナダドル・豪ドル・ポンドの動向は?
その他の通貨では、カナダドルと豪ドルも緩和策の解除期待を先取りした上昇が始まっています。この動きはしばらく続きそうですが、原油や商品価格の影響を強く受けることもあり、不透明感は拭い切れません。
ポンドドルは英国の欧州連合(EU)離脱の交渉難航とメイ英首相の支持率低下、予想外に低下した消費者物価指数(CPI)を受け、一時弱気なムードが高まったのですが、意外にも底堅い動きが続いています。英国とEUとの離脱交渉の不透明性というリスクは残りますが、レンジ相場入りか緩やかな上昇も期待できそうです。
ドル円は株価連動相場から金利差相場へ突入
そして、ドル円相場は「株価連動相場」から「金利差相場」へと変化し、最近の米金利低下で円ショートの巻き戻しが活発になっていますが、物価目標2%の達成時期が先送りされたことや、他の主要通貨との絶対的な金利差が変わらないことから、円安傾向が続くと判断しています。リスク要因としては、世界的な株価の大幅下落や世界経済の低迷が挙げられますが、今のところその兆候は見当たりません。
円安から円高へと変化したきっかけとなった米金利の低下ですが、7月7日の米雇用統計発表を受け、米10年債利回りはピークの2.3945%から軟化が始まりました。そして、7月12日にイエレンFRB議長が議会証言で「バランスシートの縮小を急ぐ一方で追加利上げは慎重に判断」と発言すると、米債利回りの低下は加速。7月21日には一時2.2234%まで低下しました。同時期のドル円相場は114.494円を高値に111.012円まで下落。円高へと進み、金利差相場の動きを示しています。ちなみに、同期間のダウ株価は終値ベースで21414.34ドルから21580.07ドルへと緩やかな上昇にとどまっています(図①参照)。
余談になりますが、市場が期待する夏場以降の株価下落説の根拠は一体何なのでしょうか? 各国中銀の膨大な資産の縮小開始期待が根拠とは思いますが、過去の経験から現在の米株の動きを考えると、日々の変動幅は極端に狭く、相場のクライマックスを迎えるような状態とは考え難いものがあります。少なくとも相場の大転換期には市場参加者が手を出しにくくなるような一方的な変動が続きます。市場参加者の80%近くがその方向性を信じてポジションを安易に膨らませた結果、大規模な株価下落が発生するのではないでしょうか?
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12月の利上げ確率は50%を割り込む
FRBの金融政策についての市場予想では、9月の資産買い入れ縮小開始と12月の追加利上げを引き続き期待していますが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchでは、12月13日のFOMCの利上げ期待度は50%を割り込みやや軟化しています(図②参照)。また、トランプ政権の政策実行能力への不安感と、米株の上昇がいつまで続くのかという不安感も拭い去ることができずにいることも確かでしょう。
※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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