トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
日本の大規模金融政策への期待やNYダウが史上最高値を更新するなど世界的な株高を背景に円安が進んでいます。また、昨日はヘリコプターマネーの代表的な支持者であるバーナンキ元FRB議長が来日して安倍総理と会談、「対応可能な金融政策はまだある」などと発言したこともあり、マーケットの緩和期待は相当高まっています。
このように金融政策期待で短期的なモメンタムが大きく変化したため、今月末(7月29日)に開催される日銀金融政策決定会合までは底堅い値動きが予想できます。米ドル/円はBrexit前の高値106円が見えてきますし、ポンド/円も底入れしたと想定すると、140円レベルまでは簡単に戻してくる可能性があります。
しかし、Brexitの時もそうでしたが、マーケットが金融緩和を前提に動いている事は危険なイメージが浮かびます。仮に上記の決定会合で期待以下の政策であれば、おもいっきりハシゴを外されることになり、米ドル/円は金融政策期待前の100円レベルに戻るでしょう。加えて、日銀は限界に近い金融政策をとっており、アベノミクスがさらにギアを上げて大規模金融政策が本当にできるのかという疑問も残ります。
中期的な展望でも、秋に米大統領選挙が本格化するわけですが、トランプ氏がクリントン氏を追い上げる展開となれば、米国政治の先行き不透明感からドル安になります。加えて、両大統領候補とも日本の金融政策を快く思っていない事は確かであり、今後円高圧力が強まる可能性も否定できません。そのほか、欧州や中国でいつ地雷を踏むか分からない状況でこのまま株価が上昇していくとも思えません。参院選の快勝で安倍政権が継続したことは世界的に見て政治リスクが少ないと評価されており、リスクオフ地合いでは今まで以上に円が買われる可能性にも留意しておくべきです。
テクニカル面では日足の下降トレンドラインを上方にブレイクして短期的には買いが入りやすい状況となりました。しかし、方向性を示す一目均衡表の基準線は横ばいで転換線もまだ下を向いており、米ドル/円相場のトレンドが変化したと判断するには時期尚早かと思います。
米ドル/円、クロス円は今週に入りショートポジションが目立っています。売買比率を見ると米ドル/円はショートポジションが39%、ポンド/円はスクエアになるまで増えています。下値意識は相当強いうようで円の先高観を期待して104円台では戻り売りのチャンスと見る参加者が多いようです。今週に入り米ドル/円、クロス円は流石に上がりすぎだと思うところもあり、リバウンド期待ができますが、短期的なモメンタムが変わったことも事実なので突っ込み売りや、ナンピン売りは慎重さが求められそうです。
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