先週金曜日のドル円相場は、米国第2四半期の雇用コスト指数が下振れしたことを受けて124円台半ばから一時123.50円近辺まで売り込まれた。雇用コスト指数は前期比で+0.2%と前期の+0.7%、予想の+0.6%を大幅に下回り、1982年の統計開始以来最低の伸びだった。民間部門だけで見ると、前期比横ばいで、統計開始以来続いていた上昇がストップした。米国金利は一斉に低下し、市場では来月のFOMCでの利上げは見送られるとの見方が強まった。
普段は注目度がさほど高くないこの指標に市場が鋭く反応したのは、賃金上昇がFRBの利上げ判断に大きなインパクトを与えると見られるからだ。先週のFOMCでは、政策金利引き上げのためには「さらにあと少しの改善(some further improvement)」を確認する必要があるとの判断が示された。失業率が5.3%とほぼ完全雇用に達した現在、「あと少しの改善」が賃金上昇を指すことは言うまでもない。雇用コスト指数は、前年同期比では2.0%の伸びだが、FRBのインフレ目標2%を達成するためには3%の伸びが必要とされる。
米国景気は緩やかな回復を続けているものの、インフレは顕在化していない。FRBのタカ派メンバーは9月利上げが正当化されると主張しているが、イエレン議長ら主流派は利上げを急ぐ必要はないと考えている。失業率が低いにもかかわらず賃金の伸びがこれほど低いのは、パートタイム労働者の増加や労働参加率の低下など労働市場の質的なスラック、おそらくは構造的な変化が関係している。今回の雇用コスト指数の下振れが一時的と判断する根拠は乏しい。このまま賃金が異例の低い伸びを続け、インフレ目標の達成が一段と困難になるならば、利上げは先送りが妥当な判断となるだろう。FF金利先物12月限月は0.30%を指しており、年内利上げが見送られる可能性を3割程度織り込んでいる。
今週はまず、本日発表される米国6月のPCEコアデフレータに注目。FRBがインフレ指標として重視するデータだけに、予想の+1.2%(前年比)をさらに下回るとインパクトが大きくなるだろう。水曜日は7月のADP雇用報告、そして金曜日にはいよいよ本家労働省の雇用統計が発表される。失業率は5.3%、非農業部門雇用者数は+22.5万人とほぼ前月並の数字が予想されているが、雇用が順調に伸びていることは既知であり、注目は平均賃金の伸びに集まるだろう。前回6月分の平均賃金は前月比横ばい、前年比+2.0%と低い伸びにとどまり、ドル売りのトリガーとなった。今回も賃金の伸び悩みを示す結果となれば、利上げ観測がさらに後退し、ドル売りが加速する可能性がある。ドル円は下値リスクを意識して臨むのが賢明だろう。
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