日本の投資家にもなじみ深い豪ドル円。「高金利通貨」を売りに、FX以外にも金融機関がこぞって豪ドルの金融商品を取り扱っていたことも記憶に新しいです。その豪ドル円について、私が最近気になっているトピックを解説します。
※本記事内容は、執筆者の見解に基づくものであり、将来の利益を保証するものではありません。
※この記事は、FX攻略.com2021年4月号(2021年2月20日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
金利との連動を失った豪ドル円
通貨ペアの推移を見るとき、多くの場合は金利差に着目します。ここでは、10年債利回りと期待インフレ率から算出した実質金利を用います。中長期的には、実質金利の高い通貨が買われ、実質金利の低い通貨が売られる傾向にあり、豪ドル円相場においても、2019年末までは、実質金利差の低下(豪州と日本の実質金利差が縮小)に連動するかたちで豪ドル安・円高が進行してきたと思われます(チャート①)。
出所:BloomBergより筆者作成
しかし、2020年初頭のコロナショック以降、豪州と日本の実質金利が逆転(日本>豪州)した構図となってからは、豪ドル円相場と実質金利差が連動して動く傾向が薄れ、豪州実質金利の低下にも関わらず、相場は豪ドル買い・円売りの動きで推移しています。つまり、2020年において豪ドル円は金利以外の要因で動いている可能性が高いと考えられます。ここで参考になるのが商品市場の動きです。
商品価格との高い相関性
ご存じの通り、豪州は資源国であり鉄鉱石や石炭などの輸出が盛んです。故に豪ドルは商品価格との連動性が高いことが知られており、チャート②で示す通り、豪ドル円相場も商品価格との相関性が高い値動きをする傾向が見られます。このことからも目下の豪ドル高は、商品価格の高騰に起因すると考える事ができそうです。
出所:Bloom BurgとInvesting.comのデータより筆者作成
目線を商品価格に移すと、2020年初頭のコロナショックで世界的に商品需要が低下し、一時WTI原油先物が史上初のマイナス価格をつけたことも記憶に新しいと思います。しかし、2020年後半にかけては中国経済の急速な回復に起因する商品需要の回復から商品価格は高騰を続けています。
中国はコロナ禍の中、主要国で唯一速報値ベースの2020年実質国内総生産(GDP)が前年比プラスで着地し、皮肉にも「一人勝ち状態」といわれています。豪州はその中国との経済的なつながりが深く、豪州の2019年輸出相手国に占める中国の国別割合は38%にも及びます(図①)。
出所:オーストラリア統計局・2019年の国別輸出総額より筆者作成
豪州は主に前述の鉄鉱石や石炭などの資源を対中輸出していることもあり、中国の旺盛な商品需要と商品価格の高騰という状況が市場で好感された結果、豪ドル高へとつながっていると考える事もできるでしょう。
豪ドル円の懸念材料は?
目下の豪ドルは前述の中国の商品需要の高まりと資源価格の高騰を好感して上昇局面を迎えていますが、懸念材料としてはやはり豪州と中国との関係性だと考えています。
2020年半ば、豪州モリソン首相が新型コロナウイルス感染拡大についての独立調査を中国に求めて以降、豪中関係は悪化の一途をたどっています。既に一部の豪州産の石炭やワインの輸入に関しても、中国は追加関税や輸入禁止措置を突きつけており、豪州もそれに反発する、という貿易戦争の構図となっています。
そして、今後の焦点となるのは鉄鉱石が豪中貿易戦争のカードとして行使されるか否かだと個人的には考えており、立場が苦しいのは豪州側だとも考えています。中国側も現状の資源価格の高騰は輸入する側としてうれしくないことから、「鉄鉱石の輸入を制限する」というカード行使で豪州に対して揺さぶりをかけることも考えられ、豪州側からすると鉄鉱石の輸出が制限されたときの貿易収支悪化は免れないでしょう。
豪州の対中貿易品目に占める鉄鉱石の割合は非常に高く、かつ中国の豪州産鉄鉱石の依存割合も高いことから、鉄鉱石が取引のカードとして使われる可能性は低いと思われますが、いざ鉄鉱石カードが行使されたときの豪ドル相場の混乱は甚大なものになると思われます。豪州の貿易収支悪化は豪ドル売り材料につながると共に、商品市場の混乱にも飛び火してさらなる豪ドル売りへつながる、という可能性も頭の隅に置いておきましょう。
個人的には、短期的にはコロナショック後の需要も相まって資源価格の高騰は続き、豪ドル円も上値を目指す転換もあるかと思われますが、中長期的な資源価格の落ち着きや豪中貿易摩擦の発展懸念などで豪ドル円が下方向を目指す展開もあるのではないかと考えています。
※本記事内容は、執筆者の見解に基づくものであり、将来の利益を保証するものではありません。
※この記事は、FX攻略.com2021年4月号(2021年2月20日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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