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金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)第5回[YEN蔵]

金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)第5回[YEN蔵]

コロナショックによりボラティリティが急騰

 新型コロナウイルスの感染拡大が加速し、マーケットはまれに見るボラティリティ(変動率)の高さで変動しています。今の変動率の高さを見ると、本誌が皆さんの手にわたるころは相当大きく変動しているかもしれませんが、とりあえず3月19日(編集部注:2020年)までの為替相場の動きを追ってみましょう。

  • ドル円は2月20日:112.20円→3月9日:101.20円→3月19日:110.70円
  • ユーロドルは2月20日:1.0778ドル→3月9日:1.1495ドル→3月19日:1.0655ドル
  • ポンドドルは2月28日:1.2725ドル→3月9日:1.3200ドル→3月18日:1.1450ドル
  • 豪ドル米ドルは2月28日:0.6435ドル→3月9日:0.6685ドル→3月19日:0.5510ドル

 こうやって見ると、日時に多少の違いがあっても2月20~28日にドルの高値、3月9日にドルの安値、3月19日にドルの高値となってドルが高い状態が続いています。結果的に、欧米の感染拡大の初期にはドル売りとなりましたが、感染拡大が広まると共にドルが上昇していきました。

 これまで、何かマーケットにショックが起こったときは円やスイスフランなどが買われました。今回はクロス円では円高になっていますが、ドル円ではむしろ円安になっています。クロス円ではポンド円、豪ドル円の下落が激しかったのですが、ドルが買われているということは間違いありません。

リーマンショック時のドルの動きを振り返る

 有事のドル買いが復活したようですが、実はこれは2008年のリーマンショック時も起こっていたことです。リーマンショック時のドルの動きを検証してみましょう。ドルは2001年の同時多発テロ以降、下落を続けていました。ドルの強さを表す指標のドルインデックス(DXY)があります(チャート①)。2001年7月6日のDXYのピークは121.02でした。その後のDXYは下落トレンドが続き、2004年12月31日に80.39まで下落しましたが、2005年11月16日に92.63まで反発しました。

2001年〜2009年のドルインデックス(DXY)の推移

出所:TradingViewによるDXYチャート

 しかし、その後再び下落し、途中で何度か反発する局面もありましたが、2008年3月17日に70.70の安値まで下落しました。その後は70.70~74ぐらいでもみ合いましたが、8月に入り77まで上昇しました。ここら辺からサブプライムショックのまずさも広がり始め、小さな銀行の破綻などもあり、9月に入って米政府系金融機関のフレディマックとファニーメイが米国政府の管轄下に入ることが決定すると、DXYは80.38の高値まで上昇しました。

 9月15日にリーマン・ブラザースが破綻すると、さすがにDXYは下落して9月22日に75.89の安値をつけました。その後、11月21日に88.46まで上昇し12月18日に77.69まで下落した後、2009年3月4日に89.62まで上昇して最高値をつけました。

 このときのNYダウの動きを見ると、2008年10月10日に7882ドル→10月14日に9794ドル→11月21日に7449ドル→2009年1月6日に9088ドル→3月6日に6470ドルという動きをしました(チャート②)。ダウは2008年10月~11月に1番底、その後2009年3月に2番底をつけて、ここから上昇に転じました。DXYの高値は3月4日、ダウの安値は3月6日と2日間の違いはありますが、ほぼ同時期に転換点を迎えました。

2008年〜2009年のNYダウの推移

出所:TradingViewによるNYダウチャート

 2020年3月16日の週にDXYは3.3%の上昇となりましたが、通貨によってその騰落率はまちまちでした。ドルが一番上昇したのはNZドルに対してで6.7%、次に豪ドルで6.13%、ポンド5.11%、ユーロ3.68%、スイスフラン3.54%、円2.69%となりました。

ドルが上昇した要因

 今回なぜドルが上昇したのかというと、やはり危機が起こると市場がドルを必要とするからです。世界の基軸通貨はドルです。国境をまたぐ融資の場合はドル建てであることが多く、また新興国などは国内の資金が不足すると海外から資金調達をしますが、その資金は当然ドルであることが多いです。

 一方で、ドルの供給先は米国の銀行や米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)なのですが、このように金融市場が大きく変動するときはマーケットが疑心暗鬼になり、短期の資金を融通し合う短期金融市場ではドルの調達が難しくなってきます。また、MMFは短期金融市場で大きなドルの供給元になっていますが、株式市場で株が売られMMFからも資金が抜かれるとドルの大きな供給元がいなくなります。そのため、これまた短期金融市場でドル不足が起こります。

 これはあくまで米国内の短期金融市場で起こった出来事ですが、国境をまたぐドルの調達ではドルの資金市場、スワップ市場、為替市場などでもやはりドル不足が起こりました。それが分かっているからこそ、米連邦準備制度理事会(FRB)はまれに見るスピードで金融緩和を行ってドル不足を解消しようとしたわけです。何せあのトランプ大統領が「パウエル議長よくやった」と褒めたほどですから、いかに迅速な対応だったのかが想像できますよね?

 FRBにしてみれば株価は二の次で、まずは資金市場のドル不足を何とかしなければ金融危機になってしまいます。ですから、金融危機を起こさないために資金はいくらでも供給するといった姿勢を示しました。資金のやり取りをする資金市場が落ち着いて初めて株式市場などにもお金が回るのです。

 今回、株はもちろんですが、米国債や金(ゴールド)といった、いわゆる安全資産と呼ばれるものでさえ売られました。これはリーマンショック時にも起こったことです。売れるものは何でも売って資産市場からいったん現金にお金をシフトする動きが、危機時のファーストアクションとなります。

 ドルは3月の第4週に下落に転じ、ドル不足による上昇が終了しました。これはやはり、FRBが短期金融市場でレポ・オペレーション(国債などを担保とした資金供給)を行い、巨額の資金供給をしたことによります。QE(資産買い入れ)を再開したFRBがすごいスピードで買い入れ額を増やすと共に、3月23日にQEを無制限で行うと発表したことが材料になりました。これでドルの供給は大丈夫だと安心した市場が、ドルを売り始めたというところでしょうか。前述の通り、3月にドルの高値と株の安値がほぼ2日違いで一致し、その後ドルは下落して危機は去っていきました。

ドルを供給し市場を沈静化

 今回はこれまで私たちが見てきたリスク選好、リスク回避とは異なった金融市場の動きになっています。これまではリスク選好で株高・債券安・円安、リスク回避で株安・債券高・円高となっていましたが、そこに究極のリスク回避の株安・債券安・ドル高という要素が加わりました。これはめったに起こらない緊急事態です。

 リスク選好、リスク回避というのはマーケットのボラティリティによって資産をどこの市場に移すかという考え方です。ですから、マーケットがリスクを求めるときはよりボラティリティの高い株などに資金が向かい、逆のときには債券などに資金が移ることが多いです。いずれにせよ、資金をどこのマーケットに移せば儲かるかという選択を、ボラティリティを見ながら行っているということです。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界がより深刻な危機に直面した今回は、どこに資金を移せば儲かるかというレベルの話ではなくて、いかに損失を出さないようにするかに意識が向かい、市場から資金が逃げ出す事態が起こりました。全ての市場で持っている資産を売却して資金を引き揚げ現金化するという、究極のリスク回避状態となったわけです。

 現金の王様はドルですから、当然ドルを求める動きが加速しました。本来であれば市場にドルはたくさん流通していますが、今回は市場から資金が逃げ出して一気に現金化=ドルを求める動きが強まり、ドルの資金不足が起こってしまいました。そこでFRBは、世界の資金市場の混乱を収めるためにドルの供給体制を強化する政策を総動員しました。

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FRBは最後の貸し手

 FRBは今回、米国の政策金利を0~0.25%に引き下げ、終了していたQEを復活。国債、住宅ローン担保証券(MBS)の無制限買い入れ、レポ・オペレーションの供給額の大幅引き上げ、各国の中央銀行とドルのスワップ協定を締結するなど、矢継ぎ早に政策を実行に移しています。

 中央銀行の役割を教科書的にいうと、「最後の貸し手」です。ドルを供給できるのは米国の中央銀行で、今回FRBは最後の貸し手としての役割を果たしています。世界がドルを求めている中、FRBが最後の貸し手として登場し、ドル不足を解消しました。

 2020年3月後半になり、FRBの政策が功を奏してドルの上昇は沈静化しています。しかしまだ安心できず、危機が再燃するとドル高になる可能性はあります。本当の危機のとき、市場は現金化に向かうということを肝に銘じておきましょう。

FRBが行った主な施策

  • 政策金利を0~0.25%に緊急引き下げ
  • QE(資産買い入れ)の再開
  • 国債、住宅ローン担保証券(MBS)の無制限買い入れ
  • レポ・オペレーションの供給額引き上げ
  • 各国の中央銀行とドルスワップ協定を締結

※この記事は、FX攻略.com2020年6月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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YEN蔵
えんぞう。米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在はトッププロトレーダーとして為替、日経平均、日経オプション、個別株の取引を行う。投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。 ・メルマガYEN蔵 リアル・トップ・トレーディング
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