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金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第13回[YEN蔵]

金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第13回[YEN蔵]

※この記事は、FX攻略.com2021年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

米大統領選挙後にリスクオンが加速

 この原稿を書いている12月初めの時点で正式な米大統領は決定していません。ほぼバイデン氏が確定との判断で良いと思いますが、トランプ大統領は敗北宣言をしておらず、法廷闘争も続いている状態です。しかし、世間も金融市場もバイデン新大統領で動いていますので、それを前提として市場が動いているとみて良いでしょう。

 次期大統領への道筋がついたのは米政府一般調達局(GSA)の動きです。通常であれば米大統領選の対立候補が敗北宣言をした直後にGSA局長が勝者を認定します。これは政権交代に必要な予算は、GSAが正式認定するまで利用できないので政権移行に必要な作業が行われないからです。11月23日にトランプ大統領がGSAのエミリー・マーフィー長官に対してバイデン氏の政権移行を容認したことで政権移行の流れが加速しています。

バイデン政権の重要閣僚人事

 トランプ大統領の容認でバイデン氏側は高度な機密情報の入手や7億円超の政府資金の活用が可能になり、新型コロナウイルス対策や安全保障の協議開始ができるようになりました。

 そのような中でバイデン政権の人事が徐々に決まってきています。まず、注目の財務長官にはイエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が指名されました。財務長官の人事は非常に重要でマーケットにも大きな影響を与えます。

 グリーン・ニューディールなど巨額の投資が必要なバイデノミクスにとって財務長官は重要なポストです。米民主党はバイデン氏に代表される党内中道派とサンダース議員を中心とした左派に分類できます。そのような中で左派のエリザベス・ウォーレンも一時財務長官候補に挙がっていました。しかし、ウォーレン氏は反ウォール街、反GAFAで彼女が財務長官になれば、株価が大きく下落するともいわれていました。その前に彼女では上下院での承認が難しいであろうという問題もありました。そこでイエレン前FRB議長が指名されたことでマーケットには安心感が広がりました。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、経済成長を通常のレベルに戻すのは大変な作業です。米国経済はFRBによる大規模な金融緩和と財政出動でここまで何とか支えられています。そのような中でFRBと米財務省のますますの連携が求められます。その意味でイエレン財務長官、パウエルFRB議長のコンビは市場に安心感を与えているようです。

 FRB議長のときは量的緩和で米国債を買う立場だったイエレン氏ですが、これからは発行する米国債をパウエルFRB議長に買ってもらわなければなりません。景気刺激策とトランプ減税によって米国の赤字は大幅に拡大しており、米国債の発行量も増えました。そして米民主党は財政拡張型の大きな政府なので財政がますます拡大するのではないかとの疑念があるので、一時米国債利回りが上昇しました。

 経済がちゃんと回復して金利が徐々に上昇するのであれば良いのですが、金利が急に上昇すると、実体経済にもマーケットにとっても良くないことです。この事態は何としても避けなければいけません。増加する米国の債務をコントロールしながら経済運営をしていくためには財務省とFRBの協力は欠かせないものになります。その意味ではイエレン財務長官とパウエルFRB議長のコンビは良い組み合わせなのでないかと今のところマーケットは評価しています。

 もう一つの人事は国務長官の人事です。国務長官に外交政策のエキスパートであるアントニー・ブリンケン氏を起用しました。ブリンケン氏はクリントン政権時代から米国の外交に関わっている経験豊富なプロフェッショナルです。オバマ政権では国務副長官を務めました。

 トランプ政権では米国第一主義を掲げて孤立主義外交となり、国際社会の中で分断をもたらしました。バイデン政権では同盟国の間でも広がった不信感を修復して、国際協調体制を確立できるか手腕が試されます。同盟国との関係を修復して国際協調体制の中で台頭する中国とどのように対峙するかがバイデン政権の外交の課題になります。

 財務長官、国務長官という主要なポストに信頼感のあるプロフェッショナルを任命したことで、バイデン政権に対する信頼度が増して、そのことがリスクオンの流れを加速させている面があると思います。

バイデン次期大統領の重要閣僚人事

政権交代と金融市場

 米大統領選挙が行われた11月3日以降に金融市場ではドル売り株高でリスクオンの流れが加速しました(チャート①)。2016年の米大統領選挙時にトランプ大統領優勢の報を受けて市場はリスクオフの流れが加速しました。結局その後は株高・円安に戻ったのですが、市場の動きはそのときと同じように米大統領選挙のイベントを通過して株高・円安が進みました。

チャート① 米大統領選後のドルストレート日足(赤い垂直線が大統領選の11月3日)

出所:TradingViewによるUSDJPYチャート など

 ワクチンの開発が進んだことも市場の雰囲気を明るくして株高に貢献しました。それ以外には、やはり市場が次期政権への移行を好感し始めたことも大きかったのではないでしょうか。ごたごたは続いていますが大勢はバイデン政権を織り込みました。そしてそのメンバーが発表されてプロフェッショナルが選ばれたことで党派色が薄まったことも市場が好感した理由だと思います。

 米国は政権が交代すると、ワシントンの官庁の上級スタッフなども交代し約4000人が入れ替わるといわれています。バイデン政権の政策は選挙前から公表されていて、ある程度は周知されていますが、詳しい政策は就任以降の発表待ちになります。そうはいっても重要な閣僚の人選は政権の方向性をある程度知らしめます。今回は財務・国務長官という経済の主要閣僚の人選を市場は好感しました。

米財務長官が果たす大きな二つの仕事

 イエレン財務長官はこれから大変な仕事が待ち受けています。まずは米国経済を立て直すための経済政策に協力することです。実際の経済対策は議会によって作成されます。金融政策はパウエルFRB議長がリーダーシップを取ります。イエレン氏は米国の財政政策をつかさどります。トランプ減税と大規模な経済対策で米国の赤字は拡大しています。その赤字を埋め合わせる国債を発行して米国の財政をうまくコントロールしなければなりません。それがイエレン氏に課された重要な仕事です。イエレン氏はクリントン政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を経験していますし、FRB議長としても仕事をしているので米国の経済、金融に精通している非常に良い人事と思います。

 もう一つ財務長官の重要な仕事は通貨ドルに関しての仕事があります。ドルに関するさまざまな仕事を行うのは財務省です。ですからイエレン財務長官はドルをコントロールしなければなりません。

 イエレン氏が財務長官として通貨ドルに関してどのような考えを持っているのかは今のところはっきりしていません。今後はドルに関してどのような考えを持っているのか、とりわけドルのレベルに関しての発言が注目されます。

 イエレン氏は労働経済の専門家でもあるので、雇用を回復させることを何より望んでいると思われます。そうなると金融政策に対する考え方はハト派的になると思います。ただ、金融政策はパウエルFRB議長の仕事です。

 ハト派的な金融政策を望むのであれば、ドルの下落はしょうがないことだと思っているかもしれません。いずれにして今後出てくるであろうイエレン財務長官の通貨政策に注目しておくことが重要です。

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ドル安と米国債のかじ取りに注目

 米国の輸出企業にとってはもちろんドル高よりドル安の方が業績にとってはプラスです。これは日本の輸出企業が円高より円安を望むのと同じです。しかし、米国は経常赤字国です。今後膨らむであろう財政赤字の財源を確保するために米国債をたくさん発行しなければなりません。これを行うのがイエレン財務長官の重要な仕事です。そうなるとその米国債を投資家に買ってもらわなければなりません。

 日本は財政赤字で国債をたくさん発行していますが、その国債の90%以上が日本国内で消化されています。どうでもいいとまではいいませんが、外国人投資家をあまり重要視しなくても国債を順調に消化できます。

 しかし、米国債は海外投資家が大量に購入しています。とりわけ日本と中国は米国債の大量保有国です。そうなると外国人投資家にとってドルが下落し続けると米国債の保有にとっては良くはありません。ですから米国は国内の輸出業者にとってはドル安が望ましいのですが、海外投資家に米国債を買ってもらうにはドル安を放置することはできません。その辺りのかじ取りが重要になります。

ドル円日足と米国債10年利回り(2020年〜)

出所:TradingViewによるUSDJPYチャート など

 今後イエレン財務長官は、雇用を拡大し経済を回復させるために金融緩和策を容認しつつ、ある程度のドル安を黙認しつつもドルの急落を避けて海外投資家に米国債を買ってもらうために魅力的な環境を作る仕事をしなければなりません。イエレン財務長官のお手並みを拝見しつつ、マーケットを理解して利益を出していきましょう。

※この記事は、FX攻略.com2021年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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えんぞう。米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在はトッププロトレーダーとして為替、日経平均、日経オプション、個別株の取引を行う。投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。 ・メルマガYEN蔵 リアル・トップ・トレーディング
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