移動平均線やRSIなど、多くの市場参加者が見るメジャーな指標は王道の分析ですが、必ずしも自分に合うとは限りません。ここでは本誌にあまり登場しない指標を、インジケーターの造詣に深く分析のプロフェッショナルである山中康司さんに解説していただき、奥深いテクニカル分析の視野と選択肢を広げていきましょう。
ワイルダーを魅了したテクニカル指標
「ディレクショナル・ムーブメント(DMI)」は、トレンドが出ているのか、もみ合いなのかを判断できる指標です。第1回と同様にJ.W.ワイルダー・Jrによって“New Concepts in Technical Trading Systems”(邦題『ワイルダーのテクニカル分析入門』)の中で、「パラボリック」「ボラティリティ」に続いて三つ目に紹介されています。
二つ目のボラティリティは、TR(真のレンジ)をベースにした指標ですが、ここでTRとATRを紹介した上で、次の説明につなげている流れです。そしてDMIの説明の冒頭で、DMIがワイルダーを最も魅了した研究で、最も時間をかけたと述べています。ワイルダーにとってDMIは自身が開発したテクニカル指標の中で最も思い入れがある指標であったのかもしれません。
DMIの計算式
ワイルダーの指標は計算式が複雑なものが多いのですが、なるべく分かりやすい説明をしてみます。まず日足で2日間のローソク足の組み合わせを考えます。2日目のローソク足が1日目のローソク足の上下どちらかに抜けている場合は抜けている値幅を、両側に抜けているつつみ足の場合はより大きく抜けている方の値幅を、どちらにも抜けていないはらみ足の場合はゼロとします。そして上に抜けている場合は+DM、下に抜けている場合は-DMとします。これを14日間(原著のデフォルト)の合計で計算しATRで割った値が+DI、-DIです。そして、+DIと-DIの和と差の絶対値を求め、差を和で割った値を100倍したものがDX、DXを14日(原著のデフォルト)で平均したものがADXとなります。さらにその14日平均がADXRです。
一言でいうと「前日に比べてどちらに動きが出ているのかを指数化したものが+DIと-DI、その勢いを示したものがADXとADXR」になります。原著を読むと、よくこのような仕組みを考えたものだと感心してしまいます。最終型として紹介されているDMIの完成は、ワイルダーが最も満足のいく成果を上げた日の一つと述べていることも頷けます。
基本の見方
ここでは、全てワイルダーの原著に沿った手法で考えてみます。DMIのパラメーターを14として+DI、-DI、ADXなどの見方を説明します。
①トレンドの有無を判断
ADXRが20~25よりも大きいときにトレンドがあるとします。幅があると使いにくいので、ここでは20以上の場合にはトレンド、20未満の場合はトレンドがない、つまりもみ合いとします。よくADXRではなくADXのみで20という数値が出てきますが、これはADXRに対応していないチャートツールで代替案として動きの速いADXを使ったことから広まったものと考えられます。
②エントリー手法
エントリーは+DIと-DIがクロスした日、つまり「+DI>-DIであれば買い、-DI>+DIであれば売り」となります。①でトレンドのあることを前提として、ADXRが20以上でクロスしているか、20以下の場合にはADXRが20を超えるまで待ち、その時点でエントリーが良いでしょう。
③エグジット手法
エントリーとは逆の+DIと-DIの位置関係になったらやめるというのが一般的です。ですが、ワイルダーは「極大値ルール」という興味深い概念も紹介しています。これは+DIと-DIがクロスした日のローソク足を見て、買いのエントリーであればそのローソク足の安値、売りのエントリーであればその高値を転換点と考える手法です。
実際のチャートに表示
TradingViewで検索すると「Directional Movement Index」として出てきます。ここではドル円日足に表示してみます(チャート①)。パラメーターは原著のデフォルトをそのまま使い、色は+DIを緑、-DIを赤、ADXを青にしています。
その他にADXを14日移動平均させたADXRを追加(※)、20の位置に水平線を引きました。DMIだけでは細かなダマシが多いため「MTF MA(yasujiy)」を20週MAとして表示し、価格が20週MAの上ならば買いのみ、下ならば売りのみのフィルターをかけます。
※PRO+以上の有料プランで指標を値にする指標を出す機能を使ってADXの14日移動平均を計算してADXRを紫で表示
エントリー条件である①トレンドと②シグナルの揃った位置が紫の矢印で示した場所です。ここで売りになりますが、その後すぐに+DI>-DIとなるため、通常であればその時点でいったんストップになります。単独で見るエントリータイミングとしては、このケースでは使いにくいため、話を原点に戻してADXRの20を閾値として20以上はトレンド、20以下はもみ合いと考えるシンプルな使い方をして、他に自分が使いやすいテクニカルの補助的な使い方をする方が良いかもしれません。
また、極大値ルールをエグジット水準に利用する場合は、先ほどのエントリーの元となった+DIと-DIがクロスしたときのローソク足の高値に水色の水平線を引きます。前回のパラボリックと同様に直近の+DIと-DIがクロスした日の高値・安値をストップの水準として使う「エグジットのためのDMI」というのは面白い視点ではないでしょうか。
※この記事は、FX攻略.com2021年3月号(2021年1月21日発売)の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
・「あなたの知らないテクニカル指標の世界」連載記事まとめはこちら
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