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ユーロの下落が加速!3つの重荷を抱えまだ底は見えない[雨夜恒一郎]

ますます底が見えないユーロドルの次の下値は…

予想通り先週もユーロ安に歯止めがかからず、ユーロドルは一時1.1754ドルと9年ぶりの安値を示現。ユーロ円も140.57円と2か月ぶりの安値を付けた。ギリシャの政局不安はユーロ圏離脱懸念に発展し、1.20ドル台割れのトリガーとなった。またECBの追加緩和観測が高まる中、ユーロ圏12月の消費者物価指数が前年比-0.2%と予想の-0.1%を下回り、ECBの追加緩和が一段と高まった。ユーロ圏11月の生産者物価指数も前年比-1.6%と予想の-1.4%を下回った。さらにパリの新聞社でイスラム過激派による銃撃テロ事件が発生したこともユーロ敬遠を招いた。容疑者の2名は本稿執筆時点(1月9日)でなお逃亡中だ。

最新のギリシャ世論調査によると、野党・急進左派連合(SYRIZA)の支持率は与党・新民主主義党(ND)を数ポイント上回っており、政権交代の可能性は依然高い。SYRIZAのツィプラス党首はかねてユーロ圏から離脱しないと言明し、メルケル独首相も「ギリシャのユーロ圏残留を望む」と述べているものの、一部では「ドイツ政府は必要な場合ギリシャのユーロ圏離脱を容認する方針」との報道もあり、ギリシャ切捨ても辞さない意向が垣間見える。確かに、反緊縮財政を掲げるSYRIZAが政権を握れば、ユーロ圏にとってはギリシャを救済するインセンティブがなくなり、ユーロ圏残留は難しくなるだろう。ギリシャに万一のことがあったとしてもユーロシステムへの影響は小さいとの楽観論もあるが、何が起こるかわからない先行き不透明感こそが市場にとって最も大きな脅威となる。

ドラギECB総裁が「物価安定の責務を果たせないリスクが半年前より高まっている。必要なら今年初めに行動する用意がある」と述べたのが今月2日。消費者物価指数が5年ぶりにマイナスとなり、総裁の悪い予感が的中した以上、今月22日のECB理事会での追加緩和実施はほぼ確実と見ていいだろう。ECBのバランスシート目標3兆ユーロに対して、直近の規模は2兆1500億ユーロ。残り1兆ユーロ弱を埋めるには、大規模な国債買い入れを決断するしかない。ドイツなど高格付け国の国債利回りは一段と低下し、ユーロの下落余地はさらに広がるだろう。

ECBの国債買い入れ観測、ギリシャの政局不透明感、パリの銃撃テロ事件を受けた地政学リスクという3つの重荷を抱え、ユーロはますます底が見えない状況となってきた。ユーロドルの次の下値めどは2005年の安値である1.1640ドル付近だが、下落のモメンタムは強く、22日のECB理事会、25日のギリシャ総選挙の前後で突破する可能性も小さくない。その場合は、2000年の安値0.8220ドルから2008年の高値1.6038ドルまでの上昇の61.8%押しに当たる1.1206ドルが中期的なターゲットとなるだろう。

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