ズバリ！今週の為替相場動向2016年11月7日号
先週の米ドル/円相場は、週初の105円台から一時102.55円まで急落。クリントン氏のメール問題が再燃し、米国大統領選挙に対する不透明感が強まったことがリスク回避の円買いをあおった。
また水曜日に公表されたFOMC声明が、次回会合での利上げに言及しなかったことも失望の米ドル売りにつながった。金曜日に発表された米国10月の雇用統計は、平均賃金が7年ぶりの伸びを示すなど堅調な結果となったが、米ドルを押し上げるには至らなかった。
今週火曜日はいよいよ大統領選挙の投票日だ。タイムスケジュールは図1の通り。日本時間水曜日の夕方頃には大勢が判明する見込みである。
図1
スイング・ステートと呼ばれる激戦州の出口調査が発表されるたびに市場は神経質に揺れ動くだろう。超短期的には「クリントン優勢なら米ドル買い、トランプ優勢なら米ドル売り」ということになるが、この時間帯はポジションを小さくし、リスクを限定して臨むべきだろう。
図2 出所：バージニア大学 Center for politics
大統領選挙は、538人の選挙人の過半数270人以上を獲得した方が勝利を勝ち取ることになる。最新の予想によると、クリントン293、トランプ214、接戦31となっており（図2）、これを見る限り、クリントン氏は（一時より減ったとはいえ）セーフティーリードを保っている。
ただもともと金融市場からは「クリントンが勝って当然」と見られていただけに、たとえ勝ったとしても新たな米ドル買いを呼び込むとは考えにくい。「クリントン優勢」で多少買われることはあろうが、「当確」が出たころにはむしろ材料出尽くし感から米ドルが反落する可能性のほうが高いのではないか。
そしてトランプ氏がまさかの逆転勝利をつかむ可能性もゼロではない。米国大統領選挙の投票率は通常50数パーセントと意外に低く、英国の国民投票がそうだったように、当日の天候などによって状況は大きく変わってくる。有権者の約2割は未だ態度を決めていない浮動票と見られており、彼らの投票は直前のニュースや世論調査の動きによっても左右される。トランプ勝利の確率は低いが、もし起これば市場に激震が走ることは確実だけに無視はできない。
さらに、クリントン氏はかねて日本を為替操作国と批判しており、同氏が大統領になれば、これまで以上に円安に非寛容な政権となる可能性が高い（これはトランプ氏でも同じことだ）。中期的に見ると、クリントン氏が大統領になったとしても米ドル/円の見通しは決して明るくないのである。
筆者は10月上旬以来米ドル/円に対しては強気のスタンスをとってきたが、どうやら再考すべき局面に差し掛かったようである。
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