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「まさトラ」でも高値更新!これは変化の胎動なのか?[雨夜恒一郎]

【ズバリ!今週の為替相場動向】2016年11月11日号

今週の米ドル/円相場は、米国大統領選挙で共和党のトランプ氏の優勢が伝わると、急激なリスク回避の動きで一時101.20円まで急落。しかしトランプ氏の勝利が濃厚となると、イベント通過による巻き戻しの動きで105円台へ猛反発。翌日にはトランプ新大統領の経済政策(トランポノミクス)に期待とはやす声も強まり、106.95円と7月以来の高値を示現した。

筆者を含め多くのアナリストはトランプ勝利ならリスクオフで円高と予想しており、確かに一旦はその通りになったのだが、意外にもドル売り・円買いは続かなかった。下のチャートは米ドル/円の1時間足チャートだが、相場の流れはクリントン氏のメール問題が再燃した11月3日の時点で実質的に底を打っていた可能性が高い。丸で囲んだ部分つまり「まさトラ」(まさかのトランプ勝利)後の急落は、一般大衆の狼狽売りによるセリングクライマックスであり、目端が利いた投機筋にとって絶好の買い場でしかなかった。


米ドル/円・1時間足 出所:NetDania

ではトランプ大統領誕生ならドル高・円安か? もちろん「トランポノミクスで景気加速」と浮かれるのは気が早すぎるが、さりとてトランプ氏が大統領になったら米国経済や世界情勢が滅茶苦茶になると考えるのも悲観的すぎる。トランプ氏とてあの暴言王のまま大統領になるほど愚かではあるまい。移民排斥など有権者受けを狙った極端なレトリックはいずれ修正し、現実的・融和的なスタンスにシフトしていくことは想像に難くない。新政権の為替政策、通商政策、金融政策、日米同盟の行方など不透明な点は多いが、実際にトランプ政権が動き始めるのは来年1月であり、何も分からない今から心配しても仕方がない。

一方トランプ氏が掲げる減税とインフラ投資を組み合わせた拡張財政政策は、1980年代の金利上昇とドル高をもたらしたレーガノミクスと通じる面がある。共和党が上下両院を制した今、議会との関係さえ改善すればトランプ氏はやりたい政策を実現できる。前評判最低のトランプ新大統領が、レーガン大統領のように大化けする可能性も決してないとは言えない。

株式市場の反応はストレートだ。NYダウ平均は今週、陽線4本を並べて一気に史上最高値を更新した。関連銘柄に対するご祝儀買いはあっただろうが、それだけでは通常このような動きにはならない。8年にわたる民主党政権で停滞した経済が政権交代によっていよいよ前向きに動き始めるとの期待が生まれているのである。この株価上昇が本物なら、金利上昇・ドル高もやがて正当化され、それらしい理由が後からついてくる。


NYダウ平均・日足 出所:NetDania

昨日のレポート(トランプ勝利後の短期シナリオと留意点(雨夜恒一郎))で円高予想を述べたばかりだが、一旦スタンスを中立に戻し、しばらく状況を見極めることにする。セリングクライマックス的な急落と急反発。普通に考えれば円高だがそうならないという違和感。そして株式市場で感じられる変化の胎動。新たな上昇相場の「息吹」である可能性があり、重要な分水嶺にさしかかったと考える。(11月11日午後1時執筆)

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