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FX力を鍛える有名人コラム

米国雇用統計で金利上昇・ドル高が正当化されるか[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年4月30日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、米国債利回りの上昇を背景としたドル買いが継続し、2か月半ぶりに109円を突破。米国第1四半期GDPが予想の+2.0%を上回る+2.3%となったことから一時109.54円まで上昇した。米国10年債利回りは一時3%台に乗せ、政策金利動向に敏感な2年債利回りも2.5%を上回った。好調な米国経済を背景とした利上げ期待に加えて、大型減税により国債発行が増加し需給が悪化するとの見方から、債券利回りは上昇傾向となっている。

先週の当コラムでは、米国の金利観が重要な転換期に差し掛かった可能性があり、「弱気局面終了・強気局面入りの可能性をにらみつつ、この金利上昇が本物・持続的かどうかを見極めたい」としたが、その可能性は一段と高まったと見ている。

「昇給なき景気回復」を抜けたか

先週発表された1-3月期の米雇用コスト指数は前期比+0.8%上昇し前回の+0.6%、予想の+0.7%を上回った。前年比では+2.7%と金融危機直後の2008年第3四半期以来約11年ぶりの伸びを示している。労働市場の逼迫を背景に、まず地方自治体が最低賃金を引き上げ始め、それを追って民間の時給にも上昇圧力がかかっている。

また昨年末に決まったトランプ政権の大型減税によって浮いた資金を時給アップで従業員に還元する企業も出始めた。米国は長らく「昇給なき景気回復」と言われてきたが、完全雇用の下でいよいよ賃金も上昇し始めた可能性が高い。下のグラフを見ると2015年の高値を突破し、上昇トレンドに乗ったように見える。もしこれが持続的なら、FRBはこれまでのようにインフレに対して鷹揚に構えてはいられなくなる。

労働市場の逼迫を背景に企業は賃金を引き上げている 出所:Bloomberg

FF金利先物市場では6月の利上げはすでに100%織り込まれ、12月までに「3回以上」の利上げが行われる確率は「2回」の確率を上回った。金利先高観は着実に強まってきており、当面はドル買いをサポートしそうだ。

出所:CME FedWatch 

今週金曜の米雇用統計がドル円相場の分水嶺に

そんな中、今週金曜日には米国4月の雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数(NFP)は大雪の影響で落ち込んだ前回の+10.3万人から+19.5万人と巡航速度へ回復する見通しで、失業率は前回までの4.1%から4.0%へ一段と低下するとの予想が多い。市場が最も注目する平均時給は、前月比+0.2%、前年比+2.7%と前回(+0.3%、+2.7%)からやや減速すると予想されている。

平均賃金の上昇率が少しでも予想を上回るようなら、米国金利上昇とドル高が正当化され、ドル円は節目の110円をトライする可能性が高くなる。予想が控えめだけに、ポジティブサプライズとなる可能性は小さくない。反対に予想以下となった場合は、このところの急上昇の調整局面となり、107-108円のもみ合いゾーンへ押し戻される公算が大きくなるだろう。今週の雇用統計はドル円相場にとっての大きな分水嶺となりそうだ。

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