逆イールド発生は景気後退のサインか?そのヒントはジャクソンホールに[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年8月19日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、夏休みシーズン・盆休みの薄商いの中、米中貿易摩擦や香港でのデモ、アルゼンチン市場の混乱などを背景にリスク回避の動きとなり、一時105.05円まで下落。しかし米国が中国からの輸入品に対する追加関税について、一部製品に限り発動を12月15日まで延期すると発表したことから106.98円まで急反発。その後は株式市場の乱高下を眺めながら、106円を挟んでの神経質なもみ合いとなった。NYダウは25200ドル台まで急落する場面もあったものの、後半は持ち直し、25886ドル(前週比401ドル安)で週の取引を終えた。

逆イールド発生

先週の株式市場の下落の背景には、米国債市場での逆イールド発生という要因もあった。イールドカーブのフラット化が急速に進み、これまでプラスを堅持してきた2-10年債の利回り格差が一時2007年以来となるマイナスに転じたのだ。株式市場はこれを景気後退のサインと受け取った。政策金利に敏感な2年債の利回りは1.46%まで低下、10年債利回りも3年ぶりに1.5%台割れとなった。

景気後退か債券バブルか

確かに過去の経験則では、逆イールド発生は景気後退の前触れだ。しかしリーマンショックを契機とした経済危機が終息した2009年以来、インフレも景気後退もないニューエコノミー、あるいはゴルディロックス(適温経済)といわれる過去最長の景気拡大が続いている。情報が乏しく金融政策も洗練されていなかった過去の経験則が、今の時代にそのまま通用するかどうかは疑わしい。筆者には、現在の債券市場は景気に対して悲観的過ぎる、もっと言えば世界的なバブルであるように思えてならない。

2-10年利回り格差 グレーの帯は景気後退期 出所:セントルイス連銀

バブルとは、資産価格が実体価値を大きく離れ長期的に持続できない高値で取引されている状態を指すが、例えば日本やドイツの10年債(日本がマイナス0.2%、ドイツはマイナス0.7%)は明らかなバブルではないか。これらの債券を満期まで保有すれば確実に損失となる。長期保有はありえず、買うのはさらに高い価格(低い利回り)で転売することを前提とした短期の買い手だけだ。さらに高い価格で買ってくれる相手が中央銀行だとしても、長期的には到底持続しえない。

米国債も、利回りこそマイナスではないが、世界的なカネ余りとイールドハンティングを背景に資金が押し寄せた結果、利回りが実体よりはるかに押し下げられている可能性がある。そもそも、2%の成長率と2%のインフレ率を持つ米国の10年債利回りが1.5%というのは、何かがおかしい。しかもFRBはすでに量的緩和(長期債の買い入れ)を終了している。

ジャクソンホール会合

逆イールド発生は果たして景気後退のサインなのか、それとも債券バブルなのか。そのヒントになりそうなのが、今週木・金に予定されているカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、通称ジャクソンホール会合だ。今年も二日目にパウエル議長の講演がセットされる。昨年はFRBの利上げ観測が支配的な中で、議長は「インフレが2%超で加速する明らかな兆候はなく、経済の過熱リスクは高まっていない」と述べ、実際その通りとなった。今年は逆に市場の過度の悲観や利下げ期待を牽制し、利下げはあくまで予防的な措置であることを強調するのではないか。この予想が正しければ、イールドカーブはスティープ化し、株式市場は徐々に安定し、ドル円は底入れに向かうはずだ。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

Twitter:https://twitter.com/geh02066

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