二つのグッドニュースにも上値が重いドル円[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2019年12月16日号

先週のドル円相場

週前半は米中貿易協議の行方やFOMCを控えて108円台で神経質な一進一退が続いていたが、木曜日にトランプ大統領が「中国との大きな取引に非常に近づいている」と述べたことを受けて109円台を回復。さらに英下院選挙で「与党保守党が過半数を大きく上回る議席獲得見通し」と報じられたことを受けてリスクオンの流れとなり、一時109.71円まで上昇した。

米中は第1フェーズ合意

米中両国は、ようやく貿易交渉の第1段階(フェーズ1)合意にこぎつけた。これにより15日に予定されていた対中制裁関税第4弾の発動は見送られ、これまでに適用していた関税率も引き下げられる。中国は、米国が求めていた知的財産権の保護、技術移転の強制の見直し、米国産農産品の大量購入などに応じる模様だ。これまでの制裁と報復の応酬がひとまず一段落し、交渉開始以後初めて緊張が緩和することになる。米国株は史上最高値を更新し、日経平均も1年2か月ぶりに2万4千円台に乗せた。

英国はハードブレグジット回避へ

英国では、ジョンソン首相率いる保守党が歴史的な大勝を収め、来年1月のEU離脱に向けて大きく前進した。保守党が下院で過半数を獲得したことで、EUとの経済的関係を維持したまま離脱する「秩序ある離脱」が実現する公算が大きい。英欧経済を覆う不確実性は大きく低下したと見て、欧州株、英国株、英ポンドはいずれも大幅に上昇した。

つまり先週は、米中合意と英ハードブレグジット回避という二つのグッドニュースがもたらされたことになる。

やはり時間切れか

しかし、その割にはドル円の反応はいま一つだったのではないか。ドル円はこれらの吉報を受けて上昇するにはしたが、前回高値の109.73円を上抜けすることなく失速した。筆者は先週の当コラムで「109円台に乗せてから1か月以上にわたる上値トライが、休暇シーズンを前に時間切れとなる可能性」を指摘したが、この材料で110円を抜けられないとなると、材料出尽くし感と時間切れ感は一段と強まるだろう。考えてみれば、米中第1フェーズ合意も、英保守党勝利も、全くの予想外というわけではなく、ある程度の確率で予想されていたシナリオだった。ポジティブサプライズはあまり感じられない。

IMM通貨先物の取り組みを見ると、12月10日時点で投機筋は中規模の円ショート・ドルロングを保有しているが、年内110円突破が難しいとなると、今週は巻き戻しが入る可能性が高い。

IMM通貨先物の取り組み 出所:CME、QUICK

先週は予想に反して上昇があったが、見方は変わらない。好材料にもかかわらず想定ほど上昇しないのは潜在的な売り圧力の存在を示唆しており、弱気のサインだ。引き続き中立スタンスで、下振れリスクをより警戒して臨むのが賢明だろう。

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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