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FX力を鍛える有名人コラム

これからの外国為替場の行方 第118回(月刊FX攻略.com2020年2月号)[田嶋智太郎]

これからの外国為替場の行方 第118回(FX攻略.com2020年2月号)[田嶋智太郎]

米株価指数は最高値更新もドル円の上値は重いまま

 前回更新分の本欄で、米国株の今後について「S&P500種には少し長い目で3200ポイントあたりが次の上値の目安になってきてもおかしくない」などとし、ドル円が109円処の節目水準をクリアに上抜けるかどうかは「一つに、主要な米株価指数が史上最高値を更新する強気の展開となるかどうかにかかっている」などと述べた。

 実際、S&P500種は執筆時までに3142ポイントまで上昇する場面があり、NYダウ平均も連日のごとく史上最高値を更新する展開となっている。こうした状況は大方想定していた通りなのであるが、如何せんドル円の上値は相変わらず重い。

 実際、執筆時のドル円は、依然として200日移動平均線と109円処の節目をクリアに上抜けたとは言えない状況で、1か月前とほとんど変わらない水準で推移しているのだ。それは一つに、善かれ悪しかれ「米中貿易協議の進展状況が10月下旬から1か月間、あまり変わらなかったこと」に因るとみていいだろう。

 既知のとおり、かねて11月に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、開催地であったチリの反政府デモ激化で中止となり、結果的に米中首脳会談も先送りされることとなった。

 事前に、両国首脳はチリでの首脳会談の場において貿易交渉の「第一段階」での合意文書に署名する見通しとされていたが、一部では「合意内容の最終的なすり合わせが間に合わない」との見方もあったわけで、その意味からすればAPEC首脳会議自体の中止は、両国にとって結果オーライだったと言えるのかもしれない。

 その実、11月末を間近にした執筆時点においても、なお合意文書への署名は行われておらず、それ以前に次の米中首脳会談の場所も日程も定められていない。それでも、関連のニュースは日々様々な形で伝えられており、基本的には「合意をめぐる重要問題の解決で共通認識に達しようとしている」といった報道内容であることから、少なくとも米・日の株式市場は進展期待をずっと抱き続けている。

 むろん、米株価は米金利が低水準に居留まっていることに支えられている面もあり、それは10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で事前の予想通り、今年3回目の利下げ実施が決定されたことと、その後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による会見での発言や議会証言の内容が「どちらかと言えばハト派寄りであった」と捉えられていることが大きいと見られる。

 パウエル氏は、議会において米消費が底堅く推移していることを認めながらも、一方で「米経済成長の下支えに向け『適切に』行動する」とも述べ、追加利下げ実施の可能性を封印していない。

過去最大のネットショートでVIX先物価格の行方に警戒

 執筆時点では、12月15日に米国が予定している中国製品への新たな関税の発動は少なくとも延期される公算が大きいと見られている。また、米中首脳による合意文書への署名は年明けに持ち越されると見る向きも多い。

 そうであるとするならば、なおも年末年始に向けて市場の期待は引き継がれる可能性が高い。それは同時に、当面の材料が出尽くしとなって、米・日株価が一旦利益確定の売りに押されるタイミングをも先送りする可能性があるということである。

 実のところ、執筆時の市場は米商品先物取引市場においてVIX(恐怖)指数先物のファンド(投機)筋によるネットショートが過去最大に積み上がっている点に以前から警戒を強めている。

 ちなみに、11月19日時点におけるVIX先物の投機ポジションはショートが31万枚余り、ロングが9.5万枚弱と、差し引き20万枚超の売り越し状態になっている。これは当然、VIX指数が年初来で最も低い水準まで低下してきていることに因るわけであるが、いずれは必ずアンワインドの動きが生じる。

 利益確定のために先物が買い戻されてVIX指数先物価格が上昇すれば、やはりVIX指数自体も多少は上昇する。それは、あくまで一時的なポジション解消に伴うものであると当然理解できるわけであるが、プログラム売買のシステムは、VIX指数が上昇してくれば“機械的に”株売りの指示を出す可能性が高い。そのタイミングがいつ訪れるか、戦々恐々としている向きもあるというのだ。

 もちろん、投機筋がショートを手仕舞うタイミングは、株価が調整売りに押されやすくなるタイミングに相前後するだろう。それは、足下の株価を支える好材料が一旦出尽くしとなる場面と重なる可能性があると見られる。

世界景気と主要企業の業績は7-9月期が底だった!?

 然は然りながら、ドルが基本的に強い状況であることに依然として変わりはない。それは、何より米国経済のファンダメンタルズが、なおも良好な状態を維持し続けていることに因ると言っていいだろう。

 それは、米雇用情勢が変わらず強い結果を示していることとも深く関わる。既知のとおり、10月の米雇用統計においては、非農業部門雇用者数の前月比の伸びが12.8万人、失業率が3.6%、平均時給の伸びが前年比3.0%という結果であった。ただし、実質的には数値以上に強い内容であったと市場の一部では解されている。

 実のところ、今回は9月半ばから10月下旬まで米ゼネラル・モータース(GM)の大規模ストライキが続いたことに加えて、労働参加率が63.3%にまで上昇したことを考慮する必要があり、それらを加味して総合的に判断すると非常にポジティブな内容であったということになるというのだ。なにしろ、仮にGMの大規模ストが行われず、また労働参加率の上昇もなかったなら、足下の失業率は3.4%まで低下し、現場労働者の平均時給は前年同月比で+3.5%にアップしていたとされているのである。これだけ足下の米雇用情勢が好調を維持していることからして、12月のFOMCにおける米利下げ実施の確率が足下で大きく低下しているのも道理と言える。

 かねて、米小売売上高と米雇用統計の結果が「正」の相関を為していることはよく知られる。一段と米消費者のマインドが前向きになれば、いずれ自ずと米国内のインフレ率も強含みになってくる可能性が高まるし、結果的にFRBによる「利下げ打ち止め」の観測が強まれば、市場ではドル買い優勢のムードも強まろう。

 一方、7-9月期の米企業決算においてS&P500種を構成する企業のEPS(1株当たり利益)がアナリスト予想を上回ったケースは全体の7割以上に上るという。これまでに、市場では米企業の利益鈍化傾向は7-9月期を底に切り返し、以降は着実に持ち直すとの見方が有力視されており、そうなれば米株の上値余地が一段と拡がる可能性もある。

 実際、経済協力開発機構(OECD)景気先行指数において「OECD+未加盟主要6か国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、インドネシア)」の前月比年率変化率は、すでに今年の前半のうちに底入れから反発に転じている(図①参照)。この数値は大よそ6~9か月ほど世界の製造業景況指数(PMI)に先行するとされており、そうであるとするならば製造業PMI自体がそろそろ持ち直してきてもおかしくないということになるのだ。

世界の景気先行指数と製造業景況指数(PMI)

完成&上放れは目前!?ドル円のトライアングル

 ときに、ユーロドルが依然として上値の重い展開を強いられていることは、前回更新分でも触れたとおりである。メルケル独首相らが景気下支えのための財政出動に対して慎重姿勢を堅持していることが一因であろう。

なおも、ユーロドルが31週移動平均線に上値を押さえられていることは言わずもがな、一目均衡表の週足の「遅行線」が週足ローソクを上抜けられずにいる点も見逃せない。足下では再び1.1000ドルを割り込む場面も見られており、同水準をクリアに下抜けると、あらためて10月安値の1.0879ドルが視野に入りやすくなると見る。

 一方で、ドル円はついに109円処の節目と200日移動平均線をクリアに上抜ける動きとなってきた。昨日は11月7日高値=109.49円をも上抜ける格好となり、目先は62週移動平均線(62週線)が位置する109.81円処を試す展開という見方もできるだろう。

ドル円週足2015年1月〜

 チャート①に見るとおり、62週線のすぐ上方には一目均衡表の週足「雲」が位置しており、当面の上値を押さえやすいと思われるが、ひとたび上抜ければ、いよいよ2015年6月以来ずっと形成されてきた三角保ち合い(トライアングル)の完成と相成る。

 このトライアングルを仮に上放れた場合、そこから一気に上値余地が拡がりやすくなることは言うまでもない。その場合の上値の目安は、まず112円処ということになるだろう。

 興味深いことに、ドル円の値動きと強い相関が認められるトヨタ自動車株の値動きは、9月半ばに2015年3月以来ずっと形成していたトライアングルを上放れている(チャート②参照)。そうした動きに少々遅れて、ドル円が追随することとなる可能性は大いにあると思われる。

トヨタ自動車株の値動き

※この記事は、FX攻略.com2020年2月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
田嶋智太郎
たじま・ともたろう。経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。 慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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