トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
日銀の政策決定会合に対する期待感が米ドル/円をサポートして一時111.80円まで水準を切り上げました。戻り売りも散見し現在は111円前後で落ち着いています。
上昇のきっかけは、ブルームバーグ関係者の観測記事で「日銀がマイナス金利拡大とあわせ、金融機関向けの貸し出しにもマイナス金利適用を検討している」と報じたニュースです。観測記事でここまでの上昇は個人的にはあまり腑に落ちていないのですが、相場のことは相場に訊けとの格言があるように、売り目線は一旦解消して今後の展開を考えたいと思います。
注目の日米金融政策
さて、週末にかけての焦点は日米の金融政策になります。
まず、今夜のFOMCは6月利上げに対して声明文でタカ派よりかハト派よりかで値動きが決まります。内容は前回と同様に「世界の経済を引き続き注視する」「米経済指標を鑑みて利上げを決断する」といったどちらともとれるバランスのとれた声明文が予想され、大きな方向感はないとみています。
ただし、FOMCで6月の利上げが既定路線になっているのであればタカ派に含みを持たせる内容になる可能性も否定できずバイアスはやや強気としています。
日銀の追加金融緩和を3パターンに分析
一方、明日開催される日銀の追加金融緩和はどのような内容になっても大きく振れそうな展開です。 観測記事がでた影響で日銀の追加金融緩和に対するハードルは確実に上がっており、市場では何らかの措置が打ち出されるとの見方が完全に織り込まれています。追加金融緩和を3パターンに分けて分析してみます。
- 政策変更なし
- マイナス金利拡大やETF買取り枠の拡大など想定通りの追加緩和
- 量・質・金利の3つで予想以上の追加緩和
1の「政策変更なし」の可能は低いとみていますが、仮にそうなった場合には相当な急落になる可能性があります。米ドル/円は上昇前の107円台まで一気に急落してもおかしくはありません。
2の「想定通りのシナリオ」では発表後に上昇するも、材料出尽くし感などから今年の1月29日の時のように戻り売りのターゲットとなる可能性も否めません。
3の「予想以上の追加緩和」に動いた場合、トレンドは一変します。IMMの投機筋円買いポジションは年初来を更新しており、大量の円買いポジションを巻き込んで上昇すれば2円~3円近い上昇は想定しておくべきです。
1の可能性は低く、2もしくは3になるのではと推測はしておりますが、どちらにせよ発表前にどちらか一方に偏ったポジションは危険です。内容次第でどちらにでも動けるようにしておくべきでしょう。
チャートが壊れてしまう可能性も考えるべき
方向性を示す一目均衡表の基準線は横ばいとなっており、米ドル/円は上昇トレンド入りしたとは言い難いものの、5日移動平均線と21日移動平均線がゴールデンクロスを形成しているように地合いは悪くありません。上値は一目均衡表の雲下限の112.50円付近を見ています。しかし、ビックイベント前なのでチャートが壊れてしまう可能性が高いので、今週は参考程度にしておいたほうがよさそうです。
<長期展望>
米ドル/円は、中国を始めとした世界的な先行きの不透明感からリスクオフ地合いが簡単に払拭されるとは考え難く、円高に振れやすい地合いが続くと見ています。また、米利上げペースの鈍化、日銀金融緩和への限界などネガティブな材料は多く、長期的なターゲットとして100円付近までの下値を想定しています。
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