トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
本日は日米金融政策の発表があり、日銀会合では「総括的な検証」から金融緩和がコンセンサスとなっている一方、FOMCでは米利上げは見送られる公算です。今年のトレンドを左右する可能性のある日米の金融政策前についてしっかり準備をしておきましょう。
日銀が持っている緩和カードは?
まず、本日正午過ぎに発表される日銀金融政策決定会合ですが日銀が持っているカードはあまり多くありません。大きく分けて下記4パターンだと思います。
- 量的緩和
- ETF増額
- 外債購入
- マイナス金利
①の量については民間銀行の国債保有率をみると2013年には約40%近くありましたが、現在は約20%台まで低下しており、量に関しては限界が近いように思われます。今後のテーパリング(金融緩和縮小)を視野に入れているはずですから、これ以上の増額は副作用も強く、まずやってこないとみていいでしょう。
②のETF増額についても何度かお話ししていますが、日経平均が下げるべき時に下げ渋るなど違和感のある値動きが散見していて弊害も確認できており、ここにメスを入れるとも思えません。
今回サプライズがあるとすれば③の外債購入になりますが、国債が買えないから外債というのもわかりますが、為替介入だと海外から批判を受けるため、可能性は低いとみています。最後に残った④のマイナス金利深掘りが現実的な選択肢となりそうです。
日銀発表後の値動きは
メインシナリオは④マイナス金利をー0.1%→-0.2%への深堀です。その場合、円安要因となりますが、米ドル/円では強固なレジスタンスとして機能している75移動平均線の差し掛かる103円丁度を超えてくるかには疑問が残ります。
上値が重い要因としては、発表後に銀行株が売られてリスクオフの展開となり円が買われる動きも想定されます。前回のマイナス金利発表の時を考えると戻り売りのチャンスとなるかもしれません。
また、今回は「総括的な検証」の結果発表にとどめ、実際の追加緩和は次回以降に見送るということも十分に考えられます。その場合はシンプルに円が買われるため、米ドル/円は100円を目指していきます。
ただし、今回は日銀の政策判断がFOMCより半日ほど先行する日程になっているため、思い切って突っ込めないのも事実です。上記に記載した想定内の発表であれば上下共には割と堅いのではないかとも思っており、発表後に思い切って反発を狙っても面白そうです。
FOMCイベント通過後の円買いの動きに警戒
黒田総裁会見の約12時間後、FOMCが開催されます。
直前のFedWatchで9月の利上げ確率を確認すると18%となっており、FOMCは9月利上げをマーケットへ織り込ませることに失敗しています。慎重なイエレン議長がこのマーケットモメンタムで利上げに踏み切ることはまずないと考えていいでしょう。(万が一利上げした場合、少し遅れてでもドル買いで追随しても遅くはないです)
さて、政策金利の変更がないため、注目はイエレン議長の記者会見となるわけですが、こちらも12月の利上げを匂わせながら「データ次第」といったいつも通りのコメントとなりそうです。
会見で12月の利上げを強く主張すればドルが上昇する場面もありそうですが、米大統領も控えるなか極端なタカ派スタンスとは考えにくく、ドル安に反応する可能性がやや高いとみています。
また、イベント通過後の安心感からファンド勢が円買いを仕掛けてくるかもしれません。くしくも明日22日は秋分の日で本邦は休日になります。何度も経験しているのですが、このパターンだと日本時間の5時から7時くらいの間に薄いリクイディティを狙わることが往々してあります。米ドル/円は下値への警戒のレベルを上げておく必要があるでしょう。
世界的なリスクオフ懸念も
世界的なリスクオフも気になっています。米大統領選もヒラリー氏とトランプ氏が拮抗しており不透明感が増しているなか、ドイツ銀行が米司法省から140億ドルも支払うことを要求されております。欧州金融関連の株価も崩れやすく、簡単にリスクオフマーケットになってしまいそうな地合いだということも意識しなくてはならないようです。
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