株価下落でもドル自体は強い 米雇用統計に注目[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2018年10月29日号

先週のドル円相場

先週のドル円相場は、株価連動の色彩が強まる中、上値の重い展開となり、一時111.38円と9月13日以来の安値を付けた。ハイテク株やインターネット関連銘柄が売り込まれる中、S&P総合500は5月初旬以来の安値で終了。日経平均も大幅に下落し、一時21000円台を割り込んだ。恐怖指数VIXは再び27まで上昇し、質への逃避で米国債利回りは急低下した。先週の当コラムでは、「株式市場のガス抜きが一段落したとすれば、今週は当面の底入れから再度上値を試す展開に移行していく可能性が高くなるだろう」と予想したが、その見方は甘かったようだ。

米国企業の決算発表がピークを迎える中で、株式市場はボラティリティが極めて高い局面が続くことを覚悟しなければならない。その恐怖に耐えられない参加者はリスクを回避し、円ショートを巻き戻すことになる。IMM通貨先物の取組を見る限り、投機筋の円ショートはあまり減っておらず、この点からはドル円の下落余地は小さくないことになる。

健闘しているドル円

一方で、今月に入って株式市場が2月のVIXショックと比肩する暴落となっている割には、ドル円はよく健闘していると見ることもできる。下のチャートはドル円と日経平均の値動きを比較したものだが、日経平均がサポートラインを割り込んで急落した局面でも、ドル円はかろうじて土俵際で踏みとどまっていることが見て取れる。

ドル円と日経平均(左目盛・赤) 出所:NetDania

これはなぜかといえば、ひとえに米国のファンダメンタルズの強さのおかげと考えるのが妥当だろう。先週発表された米第3四半期GDPは前期比年率で+3.5%と市場予想(+3.3%)を上回る伸びとなった。米国経済は好調で、減税や緩やかな利上げとあいまって今後の見通しも良好だ。ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは2月~3月のVIXショック時とは異なり、年初来高値圏にある。株価下落の中でもドル自体は強さを維持しているのだ。

ドルインデックスは上昇が続く 出所:NetDania

今週発表される米雇用統計、ドル上昇の可能性は?

今週金曜日には米10月の雇用統計が発表される。現時点の予想コンセンサスによると、失業率は48年9か月ぶりの低水準となった前回と同じ3.7%、非農業部門雇用者数が前回の+13.4万人から+19万人へ回復する見通しだ。そして注目の平均時給は、前年比+3.2%と2009年以来の高い伸びが予想されている。これらの予想が正しければ、米国の利上げ期待は一段と高まり、ドルは上昇する可能性が高くなる。

平均時給はついに壁を突破? 出所:米国労働統計局

問題はその時までに株式市場の動揺が収まっているかどうかだが、もともと株価下落の引き金を引いた米国債利回りの上昇が一服していることから、そろそろその時期も近いと推測できる。株価が金利との折り合いをつけて落ち着くことさえできれば、ドル円もドルインデックスに追随して上昇することができるだろう。

米10年債利回りは1か月分の上昇を消す 出所:Investing.com

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雨夜恒一郎(あまや・こういちろう)

20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。

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