有名なチャート・パターンの落とし穴[水上紀行]

チャートには、相場の転換や急騰・急落を示唆するパターンがいくつも存在します。基本的にチャート・パターン出現後はセオリー通りに動くことが多いのですが、当然ながら思惑とは反対の方向に進んで行くケースもあるので注意が必要です。ここでは有名チャート・パターンの落とし穴を、水上紀行さんに解説していただきます。

※この記事は、FX攻略.com2018年3月号の記事を転載・再編集したものです

最近実際に起きた二つの事例とは?

相場が動くとは、実際に資金が動くということです。例えばロングポジション(買い持ち)を解消するために売れば相場は下がります。また、ショートポジション(売り持ち)を解消しようとして買えば相場は上がります。実は、相場はこの簡単な原理から出来上がっています。ところが、時として本末転倒が起きます。それが有名チャート・パターンの落とし穴です。それでは、最近実際に起きた二つの事例を紹介します。

事例①|ヘッド・アンド・ショルダー

ヘッド・アンド・ショルダーは三尊とも呼ばれますが、左肩、右肩、真ん中が山(ヘッド)になっており、麓の部分をネックラインと呼びます。そのネックラインをしっかりと割り込むとヘッドとネックの高さ分、さらに下がるとされています。

10月26日時点において、ユーロドルは日足ベースでヘッド・アンド・ショルダーをきれいに形成。しかも既に1.1700近辺のネックラインも下に抜けており、それだけでいえば続落の可能性が高かったはずでした。しかし、11月9日以降、大幅な買い戻しとなりました(チャート①)。

事例②|ダブルトップ

ダブルトップはほぼ同じ高さの二つの山からなり、これもヘッド・アンド・ショルダーに似て、麓のネックラインをしっかりブレイクすると、山のトップとネックの高さ分、ネックラインから下がるとされています。

ユーロ円の日足では10月30日ごろまでにダブルトップが形成されたと思いきや(チャート②)、11月14日ごろには大きく反発し、今度はトリプルトップ(三山)になり、それで下げても反発となって12月に入るころにはクアトロトップという有様でした(チャート③)。

有名なチャート・パターンが完成すると…

何が起きているかと申し上げれば、ヘッド・アンド・ショルダーの他、ダブルトップ、トリプルトップ、ダブルボトム、トリプルボトムなど、有名チャート・パターンが完成すると、我も我もと同方向で相場に参入してきます。つまりヘッド・アンド・ショルダーであれば、ネックラインをブレイクしてからマーケットが大挙して売りに出てくるのが一般的です。したがって、ごく短期間にマーケットのポジションがショートに大きく偏ることになります。

そして、さらにオーバーソールド(over sold、売り過ぎ)になるため、下を攻めはするものの下げきらず、そして観念して一人止め、二人止めと買い戻しになります。こうしてアヤ戻しが本格化し、下げた当初には予想もしなかったような反発にロスカット的な買い戻しを誘発することが散見されます。

なお、このショートに偏ったポジションが調整されると身軽になり、今度こそ本格的な下げが始まることがよくあります。しかし今回の場合、買い戻しても執拗にチャート・パターンは売りとばかりに売り直しているため、いつになってもショートのポジションは減らなかったということです。

チャート・パターンが完成しても自動的に相場が動くわけではない

ここから学んでおくべきことは、いくら教科書的なチャート・パターンが形成され、そのパターンが完成したからといっても、それで自動的に相場が下がるとか上がるわけではないということです。やはり、フロー(資金の流れ)ができなければなりません。

フローは基本的に投資家と実需によって作られます。投資家は長期に投資するため、いったん売ったらすぐに買い戻すことはありません。また、実需とは輸出入企業のことを指します。例えば輸出企業であれば、海外に製品を輸出した代金をドルで受け取ると、そのままでは日本国内で使えないためドルから円に換えます。つまり、ドル売り円買いをするわけですが、輸出企業にとってはドルを売って円を買えばそれで話は完結してしまいます。これを輸出企業の売り放し、輸入企業の買い放しといいます。

ところが投機筋の場合、売ったら利食いか損切りのために買い戻さなければならないですし、買ったら利食いか損切りのために売り戻さなければなりません。長くはポジションを持ちきれないため、今回の二例のように時を置かずして買い戻していますし、すぐ買い戻しているため仕掛けているのが投機筋であることが簡単に露見します。

いくらチャート・パターンを確認できたからとはいえ、投機筋が力を込めて売っても下げには限界があります。むしろ、投資家や実需の売りのフローがなくて下がろうとするならマーケットがロングになる必要があるのですが、きれいにできたチャート・パターンの前ではなかなかロングにならないケースが多いです。

大事なことはチャート・パターンではない、と個人的には考えます。教科書的なチャート・パターンなど誰もが気づくことです。それよりも、そのことによってマーケットのポジションがどう偏っているのかを知ることの方が大切だと思います。

※この記事は、FX攻略.com2018年3月号の記事を転載・再編集したものです

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水上紀行(みずかみのりゆき)

1978年、上智大学経済学部卒業後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。5年間の支店業務を経て、ロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。東京外国為替市場で「三和の水上」の名で知られる。ドレスナー銀行にて、外国為替部長。1996年より RBS銀行にて、外国為替部長を経て、外為営業部長。2007年より バーニャ ーケット フォーカスト代表。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。

公式サイト:Banya Market Forecast

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