FXでは金融政策を知ることが重要!
金融政策とは、中央銀行が決定権を持つ金融面からの経済サポートです。そして、世界中の中央銀行は「物価安定の維持」という責務を背負い運営されています。
欧州と英国それぞれの中央銀行の仕組みや運営方法については次回以降に説明しますが、今回は金融政策についてざっくりとした認識を持っていただけるよう、記事にまとめてみました。まずはインフレ・ターゲットと金融政策理事会について説明します。
●インフレ・ターゲット(インフレ目標)
具体的に、中央銀行はどのようにして、物価を安定させるのでしょうか? 答えは、「インフレ・ターゲット」(インフレ目標)の設定です。インフレが進み過ぎたり、デフレが深刻にならないよう、政策金利というツールの調整をしながら、中央銀行は金利の決定を行います。
●金融政策理事会
中央銀行は定期的に政策金利を決定するための会合を開き、それを「金融政策理事会」(以下、理事会)と呼びます。その中でも為替市場に大きな影響を与えるのは、マーケットの取引高が高い米国(ドル)、ユーロ圏(ユーロ)、日本(円)、そして英国(ポンド)の理事会であることは疑いの余地がありません。21世紀に入ると、中国や南アフリカ、トルコなどの新興国の金融政策も、マーケットのかく乱要因となっています。
インフレ・ターゲットの決定権と達成手段
インフレ・ターゲットの決定権を持っている機関は、国によって違います。私が住む英国では財務大臣、スイスでは中央銀行、カナダや豪州では政府と中銀が共同で決定しています。つまり、中央銀行は独立機関ですが、ターゲットの数値設定は政治的な決定という認識になります。
もう一方の達成手段ですが、中央銀行は政府からの干渉を受けずに最善の金融政策を実施できるという「達成手段の独立性」を確保しています。しかし、米国ではトランプ大統領誕生以来、中央銀行の政策運営に介入を続けており、深刻な問題となっています。
理事会に向けた注意点
理事会を控えたマーケットでは発表内容のコンセンサスが出来上がっていきます。実際の発表内容との乖離が大きければ大きいほど、ボラティリティが上がる傾向にありますので、当日までに①事前予想のコンセンサスは、どうなっているか?②コンセンサスに向けたポジションの構築具合は、把握できているか?③予想外の結果となった場合の対処も、きちんと考えているか?—などを、自分なりにまとめておくことが必要です。
例えば、事前予想が利下げであった場合、その通貨の売りポジションが既に出来上がっているはずです。そして、予想通りの結果となれば、バイ・ザ・ファクトでその通貨は買い戻されます。もし事前予想を調べずに、中央銀行が金利をカットしたからといってその通貨を売ると、流れに逆行してしまいます。
それと同じくらい危険なのが、予想外の結果となった場合です(図①)。例を挙げれば、マーケットのコンセンサスは利下げなのに、いざふたを開けたら「金利据え置き」が発表された場合、既にマーケットは売りポジションですので、大きなショート・カバーが入ります。
また、政策発表と同時に声明文を発表したり、総裁が記者会見を行ったりする中央銀行もあります。その場合は、事態はさらに複雑です(図②)。というのは、政策金利は据え置き決定であったにもかかわらず、声明文内容や総裁発言で将来の金利変更の方向性や具体的なタイミングを示唆した場合、その事実を織り込むため新たな為替の動きが出てくるからです。
他の例を挙げると、「今回の金利カットで利下げサイクル終了」という声明文が出れば、市場参加者は手持ちのショートの手仕舞いを優先しますので、せっかくの利下げでも結果として通貨高で終わるということも珍しくありません。
このように金融政策の発表時には、事前のコンセンサスをしっかり調べ、マーケットのポジションの傾きを頭に入れておかないと、アナウンスだけに踊らされ痛い目に遭うことがあります。必ず予習をする癖をつけるようにしましょう。
※この記事は、FX攻略.com2019年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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