2017年も後半に突入しましたが、原油価格はいまだ安値低迷から抜け出せない状況にあります。この原油安の主な要因は何なのか、また原油価格は今後どのように推移していくのか。原油価格の現状と未来を、佐藤りゅうじさんに考察してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
原油価格は一段安減産枠の拡大は?
昨年12月、15年ぶりとなる石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国による協調減産が実現し、原油価格は今年1月に一時55ドル台まで上昇しました。しかし、協調減産効果は3か月も持ちませんでした。さらに、5月には協調減産の期間が延期されたにもかかわらず、6月には価格レンジが切り下がる事態となりました。今回は、今後の原油価格の行方を占っていきましょう。
減産効果の剥落
まずは、今回の減産と上半期の値動きをおさらいします。昨年12月10日、OPECとロシアなどのOPEC非加盟の主要産油国は、15年ぶりに協調減産で合意し、日量180万バレルの減産が約束されました。これは、世界生産の約2%にあたります。
これまでOPECの減産といえば、その実効性が疑問視されることが多かったのですが、今年1月の減産遵守監視委員会(JMMC)では、一部の国で減産への着手が遅れているものの、全体としては前進していることが確認されました。
原油価格も1月3日に55.24ドルまで上昇し、2月までは50ドル台〜54ドル台でのもみ合いが続いていました。しかし、3月になるとロシアの減産が鈍っている上、米エネルギー情報局(EIA)が発表する米国の原油在庫が過去最大に膨れ上がったことをきっかけに、47ドル台まで下落しました。その後、4月中旬にかけて53ドル台まで戻す場面もありましたが、米国のシェールオイル産油量増加を背景とした需給緩和観測から、5月5日には昨年11月以来となる43ドル台まで水準を引き下げました(チャート①参照)。
いったん上昇するも再び下値を探る展開に
6月21日には、年初来安値の42.05ドルをつけました。これは、今年5月まではおおむね45ドル〜55ドルのレンジ相場だったのが、40ドル〜50ドルにレンジが下方移動したことを意味しています。
なお、6月24日に開かれた減産監視委員会では、減産の再延長とナイジェリアに生産枠が設けられましたが、上昇は一時的でした。
シェールオイル増産が近くピークアウトか
昨今の原油価格の下落要因には、米国のシェールオイルの増産があるのは既知の事実です。そのシェールオイルですが、7月17日にEIAが発表した月報によると、8月の生産量は日量558.5万バレルと予想されています。この数字が達成されると、7月につけるとみられる過去最高記録(同547.2万バレル、実績見込み)を上回ることになります。
ただ、原油価格が50ドル以下での滞空時間が長くなっていることもあり、リグ(掘削装置)稼働数は目先のピークをつけたような動きとなっています。リグが稼働を再開してから生産量が増加するまでのタイムラグを考えると、9月くらいまでは米国のシェールオイルは増産する可能性がありそうですが、ピークは近そうです。
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さらなる減産枠の拡大は可能か?
原油価格を引き上げるには、OPECサイドとしては一段の減産を実施したいところですが、5月に実施できなかったのはアラブの盟主でありOPEC減産を主導したサウジアラビアの事情がありそうです。
2014年の中盤まで、100ドル台を中心に推移していた原油価格は、2015年には40ドルを割り込む水準まで下落します。これを受けて、同年のサウジアラビアの財政赤字は過去最高となる3670億リヤルに膨らみました。その後、原油価格の回復や公務員の給与削減、賞与カットなど歳出削減に努めたことから、2016年は財政赤字が2970億に縮小し、2017年第1四半期には原油価格の回復などを背景に260億リヤルまで減少してきました。これを受けて、今年4月には上記の公務員給与削減等を撤回しています。しかし、その後の原油価格は価格水準を一段引き下げており、同国の2017年予算での想定価格は55ドルとされています。
これを映してか、同国の6月の原油生産量は日量995万バレルと、減産が決定してから初めて前月比で増加に転じています。この状況では、サウジアラビアが再び産油国に声をかけて追加減産するのは自分の首を絞めることに繋がりかねません。原油価格の低迷は、しばらく続きそうです。
※この記事は、FX攻略.com2017年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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