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FXと人|Vol.2 愛猫家トレーダーコウスケさん 投資を始めたきっかけ、ロビンスカップ裏話

FXと人|Vol.2 愛猫家トレーダーコウスケさん

ファンダメンタルズやテクニカルといった各種分析や、自動売買、システムトレードといった運用方法に目を奪われがちですが、FXの本質は人間と人間の関わり合いで生まれる価格推移です。分析や運用方法が相場を動かすことは決してありません。どんな相場も、動かすのは無数の人です。

この企画では、徹底してFXにおける「人」にクローズアップします。第2回ゲストは、国内外のFX大会、ロビンスカップで好成績を収めているコウスケさん。ミュージシャンからトレーダーへ転身した経緯なども語ってもらいました。

愛猫家トレーダーコウスケさんプロフィール

愛猫家トレーダーコウスケロビンスカップ日本大会で3位、米国の大会で2位入賞の実績を持つ裁量トレーダー。テクニカル分析主体で、短期トレードを得意とする。元ミュージシャンで、バンド時代にはギタリストとして活動。

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●聞き手:鹿内武蔵(FXライター)

メインは音楽活動。副業として投資信託

——コウスケさんが投資を始めたきっかけについて教えてください。 

 私の場合、最初からFXに手を出したわけではなく、投資信託からスタートしました。当時2008年のリーマンショック直後だったこともあり、なるべく安定している金融商品として選んだのが投資信託です。

 そのころの私はバンド活動中心の生活をしていましたが、音楽業界全体に元気がなくなっていくのを肌で感じていたので、不安を払拭するための副業として投資信託に取り組むことにしました。

——投資信託はプラスになったんですか?

 REITを買い続けていたのですが、タイミングがリーマンショック直後だったこともあり、4〜5年たったころに大きな利益が出たんです。この体験を機に「もっと儲けたい」という欲が出てきて、投資信託より良い方法がないか調べている中でFXと出会い、やってみることにしました。

——FXを始めたころはどういったスタイルでトレードしていたんでしょうか。

 FXについて調べていくうちに、外貨預金よりも手数料が安いことが分かり、とりあえずドル円が下がったら買うを繰り返して、資金を突っ込んでいました。

 あとは、ネットの記事に書いてあることをうのみにして取引していました。ちょうど消費税が8%に上がる時期だったんですよね。「消費税増税後は円安になる」という記事を読んでいたので、とにかくドル円を買い込んでいました。

——アノマリー的なものを信じて買い込んだわけですね。その結果どうなりました?

 結構儲かったんですよ(笑)。2014年ごろからドル円がガンガン上昇していって、一時期120円くらいまで上がったんです。そこからさらに欲が出ましたね。スワップ目的で、豪ドル円、NZドル円、南アフリカランド円をガンガン買っていました。

 このまま順調にいけば良かったんですが、翌年のチャイナショック(2015年8月に起きた中国株の大暴落)で大ダメージを受けてしまい、それまでに得ていた収益の半分をがっつり持っていかれました。

——順調に見えましたが、チャイナショックで大きな負けを経験してしまったんですね。

 今までは何となく得た情報を信じてやってきていたけれど、ちゃんと勉強しなければこうなるんだな、と分かりました。あれが私にとっての転機でしたね。

チャイナショックからFXの勉強を本格化

——その後、どのようにFXの勉強を進めていったんでしょうか。

 まずは基本を勉強するところからでしたね。『FX攻略.com』も基本を知るために読んでいました。あとは「損小利大」に努めて、教科書通りのトレードを心がけるようにしました。長期的な目線で見てプラスになっていることが増えだしてからは、かなり調子が整ってきたように思います。

——「これはいけるかも」と感じ始めたのがそのころですか。

 そうですね。短期的な負けがあっても、それを2か月〜3か月の大きなスパンで見たときに「そこまで負けてないな」と感じるようになりました。

 例えば、1000万円ある資金のうち、もし100万円負けていても、「ここから200万円の利益を目指せばOK」と発想を切り替えて、もう少し頑張ればトータルで勝ちだと思える場面は増えましたね。

——大きく負けてなければ何とかなる、と。

 そうですね。小さな負けの方が良いのはもちろんですが、私としてはコツコツドカンでも勝つことはできると考えています。「ドカン」があまりにも大きい「ドッカーーン」でなければ(笑)。負けた分をカバーして、総合的に勝つといったことができるようになった辺りで、今度は師匠にあたる人を自力で見つけて、弟子入りしました。

——ご自身で師にあたる方を探してアタックしたわけですか。

 そうです。トレーダーの方って、割と引っ込み思案で前に出たがらないタイプがほとんどで、自ら「教えてください!」とガツガツする人は少ないようなのですが、私はそれに違和感を抱いていたので、逆にガツガツいきましたね。

 この人だ、と思った方を師と仰いで、いろいろなことを教えてもらいました。とはいえ、私が勝手に弟子入りしただけみたいなもので、師匠からは特に弟子扱いされることはなく、対等に一人のトレーダーとして扱っていただきました。

——師匠に教わり始めたことで、トレードの質も上がりましたか。

 そうですね、FXに関する知識の幅がかなり広がったと思います。MT4のインジケーターをはじめ、自分が知らなかったテクニカル指標の存在だとか、時間軸の見方といったものも師匠から学んで、実践に生かせるようになりました。

2019年ロビンスカップで世界2位に輝く

——コウスケさんが2019年に世界2位の成績を収めた「ロビンスカップ」。これは、どういう大会なんですか。

 リアルタイム、リアルマネーでトレードの腕を競い合うコンテストです。先物取引の大会として1984年にスタートし、35年の歴史があります。現在は世界大会だとFXや株式などの部門があり、日本大会の場合は株式、FX、仮想通貨、CFDの4部門がありました。私は2017年の日本大会にも出場していたのですが、そのときは3位でした。

——2017年の日本大会にはどういったスタイルで参加したのですか?

 比較的長めにポジションを持ちながらトレードに臨んでいました。トレード回数自体はそこまで多くない感じで大会を終えました。

——コウスケさんは短いスパンの取引が得意な印象ですが。

 普段メインで行っているのはスキャルピングですが、大会期間中はスイングトレードで挑みました。ロビンスカップでは選べる証券会社が3社のみで、そのうち1社はMT4を使うことができたのですが、私があまり得意ではない条件のMT4だったんです。そのため、他2社から自分に比較的合っている方を選びました。

 また、大会でのレートのつき方がいつも自分が慣れているつき方と違う点も苦労しました。スキャルピングではレートのつき方やチャートの動き方の癖も重視しながらトレードをしてきたので、いつもと違うプラットフォームなら無理してスキャルピングにこだわらずに、スイングトレードで挑んだ方が良いと考えました。

——大会に合わせたやり方にしていったわけですね。「いつもと違うレートのつき方」というのはどういうことですか?

 リズムに言い換えると分かりやすいかもしれないです。取引するブローカーによって、レートの更新頻度やリズムが若干違うんですよね。ある業者さんだと、1秒に1回と決まっていたり、他の業者さんだとティックに合わせた更新スピードだったりします。MT4で見ても、FX業者ごとにレートのつき方のリズムが若干異なります。

 変動が細かくてドラムのロール(細かく早く叩くこと)のように一気に更新されるブローカーもあれば、一定の速度で「パッパパッパ」とリズムを刻んで更新されるブローカーもあるので、自分になじみやすい、入り込んできやすいリズムかどうかという点も、スキャルピングでは重要だと思っています。

——なるほど、スキャルピングにはリズムの相性も重要なんですね。

 そうですね、私の場合はスキャルピングをやるトレーダーの中でも売買頻度は低い方だと思います。

 ちなみに、私はマウスクリック派です。スキャルパーの中には、マウスクリック派とスマホタッチ派がいるのですが、スマホタッチ派の方々いわく、マウスクリックだとスマホ画面を指でタッチするよりも遅い感じがするそうなんです。実際にはそこまで差はないとは思いますが、約定までに反応してるスピードとか目視とか、体感的にスマホでタッチする方が早く感じるらしいですよ。

——スキャルパーの中に、そういった流派みたいなものがあるんですか。

 マウスクリックだとかスマホタッチだとか、長期トレードをする方々には一切関係のない話ですが、スキャルピングのように速さが求められるトレードをする場合には重要です。レートの動きについていかないといけないので。自分が「こうしたい」と思ったら、その通りに瞬時に動く必要がありますから。

——日本3位という素晴らしい成績を収めましたが、自信はありましたか?

 特別自信があったわけではありません。ロビンスカップの日本大会自体が初開催でしたし、こういった大会に出場するのも初めてだったので「とにかく、いつもトレードしているときの気持ちでやってみよう」と平常心で臨みました。

 2017年10月から2018年2月末までの5か月間のリアルトレードを競ったのですが、スタートしてしばらく2位と3位を行ったり来たりしていましたね。そこまで相場が動いていなかった時期でボラティリティが小さかったこともあり、私含め皆さん収益率は高くありませんでした。毎月の収益率5%〜10%を目指してコツコツと続けていったところ、最終的に28%の収益率で5か月間を終えて、3位に入ることができました。

——大会を終えた翌年2019年、今度は米国本部の世界大会にも挑んだわけですね。

 はい、世界大会は2019年1月〜12月の1年間のリアルトレードを競いました。海外の大会に参加して初めて分かったのが、使えるFX業者は1社だけということで、ATCブローカーのみだったんです。使用できるプラットフォームはMT4オンリーでした。

——日本大会とはまた違った環境だったんですね。

 大会が始まって、いざふたを開けてみるとスプレッドがめちゃくちゃ広くて、手数料もすごく高かったんですよ。スプレッドが広い上に手数料もあると分かった時点で、スキャルピングで挑むのは無理だと諦めました。スキャルピングは使えない上、レバレッジも50倍までなので、セミスイングで長めにポジションを持つスタイルがベストだと考え、日本大会と近いやり方でトレードすることになりました。

——なぜ、本場である米国のロビンスカップに参加しようと思ったんですか?

 2017年の日本大会で3位だったことで、2018年以降メディア露出が増えたんですよね。世界大会でも良い成績を収めることで、さらにメディア露出が増やせたらいいなと考えたんです。オンラインサロンや、ツールの販売などもやっているので、そちらの宣伝にもなりますし。「ドラフト指名されやすい甲子園球児」みたいな感じですよね(笑)。

——本場のロビンスカップには有名な方も出場していますからね。世界大会でも入賞する自信はありましたか?

 大会の過去の成績を見る限りだと、普通にトレードをやっていれば5位くらいには入れるかな、あわよくば3位以内にランクインしたいな、と思っていました。

——結果2位、素晴らしい成績ですね。2019年の相場自体はやりやすかったんでしょうか。

 まあまあやりやすかったですね。大会期間中は、月利がマイナスの時期などもあったのですが、それでも平均するとだいたい収益率5%〜10%にすることができました。大会終了2か月前の11月時点では収益率を100%まで上げることができたんですが、最後の1か月で結構狩られてしまいました。それでもなんとか最終的に収益率80%以上で終わらせることができました。今回はスロバキアの方に負けてしまったので、いつかリベンジしたいですね。

——コウスケさんの活躍を見て、日本のトレーダーも続々と世界大会に参戦するかもしれませんね。

2020年は難しい相場環境。スキルを高める期間に

——ここからは、読者の皆さんからコウスケさんに寄せられた質問に回答していただきたいと思います。

Q1.コウスケさんは現在トレーダーですが、アーティストとして活動していたときとどちらの方が大変でしょうか。

 圧倒的にアーティストの方が大変です。トレーダーの場合は全て自分の責任なので自分の判断で突き進むことができますが、バンドの場合、メンバー全員の意見が食い違うことも多く、一つのことを決めるのに話し合う時間がすごく長いんです。しかもどれだけ長時間話し合ったところで、その分だけ良い方向にいくとも限らないですから。レコーディングも24時間かけて録り続けて、結局1回目の録音が一番良かったりしますからね。もちろん、音楽活動をする中で楽しいこともたくさんありましたが、話し合いで時間を浪費している感じがつらかったですね。

Q2.お金が自由になることと、音楽の世界で脚光を浴びること、どちらにやりがいを感じますか?

 お金と音楽活動とは切り離して考えなきゃいけないと思います。人を幸せにすることと、たくさんのお金を持って裕福になることは別ベクトルの話なので。

 ライブで何人集客できたかはお金の話ですが、ファンの人たちが演奏を楽しんでくれたり、楽曲に救いを感じてくれたりすることって、お金では換算できないですよね。音楽活動では、どれだけ売り上げたかよりも、どれだけの人にプラスの影響を与えることができたかの部分が重要だと思っています。

Q3.もしバンド活動だけで金銭的余裕があったら投資はしていましたか?

 バンドの収益が安定していたら投資の世界に進むことはなかったと思います。ただ、音楽業界全体が低迷期に向かっていたので、仕方のない部分はありますね。握手会参加券だとかそういった音楽以外の部分がビジネスの基盤になってきていると感じていましたし、自分の音楽に対する価値観と世の中の音楽に対する価値観の間にずれが生じ始めたことも音楽業界を去った理由として大きいです。

Q4.インジケーターは、何でも使えるようになった方が良いのか、一部に絞って使った方が良いのか教えてください。

 個人的には一つ一つのインジケーターをきっちりマスターして潰していった方が良いと思います。移動平均線関連のインジケーターを完全に使いこなしてから、次のインジケーターに移る、といった具合に、一つずつ完全に落とし込んでいきながら次の勉強に進んでいくことをお勧めします。

 パラメータを細かくいじったり、数値を変えて検証しながら、さまざまな移動平均線を勉強しておけば、選択肢が増えます。まずは三つほどマスターして、一番自分に合ったものを武器にしていくと良いかもしれません。

Q5.コウスケさんのオンラインサロンについて教えてください!

 他のトレーダーさんとやりとりしたり、私とディスカッションを行いながら、勝ちトレーダーになっていただくためのサロンです。年間収支で見てプラスで終わることができている(確定申告で20万円以上の利益を申告できている)ことを一つの目標としています。

 勉強するためのスキームや手順を私が毎日生配信でアウトプットしているので、それらの情報を活用しながら成長していただけたらうれしいです。既に150名ほどの方が参加していて、継続される方も多いのでさらに学べるような環境を作りたいですね。

 それと、私のサロンはオリジナルインジケーターが多いのも特徴です。現在25種類まで増えていますので、インジケーターやテクニカルが好きな人にとっては面白いサロンだと思います!

Q6.2020年の相場環境をどう捉えていますか?

 今年は難易度が高い環境なので、大きく稼ぐことは諦めても良いと思います。相場観でいうと違和感がすごくあるので、今年は無理せず、来年に向けてスキルを高めるような気持ちでやっていくのが良いかもしれません。

 この異常な状況が永遠に続くわけではないので、3月や4月に負けてしまった人もいったん気持ちを切り替えて、平均的な相場が来るのを待ってみてください。過去にも異常な状況は1〜2年単位で続きましたが、そのあとに5〜10年平均的な相場が続く期間がありました。今は損を極力最小限にして、損せず儲け過ぎずの状態を維持していきましょう。

※この記事は、FX攻略.com2020年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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