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3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析

外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|過去の4年サイクルから1か月先に迫った米国大統領選を読む!】

外為オンライン・佐藤正和の実戦取引術|3大通貨の未来を予測するテクノ&ファンダ分析【今月のテーマ|過去の4年サイクルから1か月先に迫った米国大統領選を読む!】

2020年11月3日に迫った第46代米国大統領選挙。2008年のリーマンショック、2012年のアベノミクス始動、2016年のトランプ相場など、選挙後には急激なトレンド転換や加速が起こりやすくなっています。今回は新型コロナウイルスのワクチン開発成功も視野に入り、バイデン氏当選なら米中の緊張緩和期待で「株高、円安、ドル安、ユーロ高」のバブルが起こる可能性もあります。

ボリンジャーバンドの収縮から見ても大統領選後は乱高下が濃厚なドル円

 11月3日の米国大統領選まで1か月半を切り、トランプ大統領に振り回された為替相場は転機を迎えつつあります。振り返るまでもなく、2020年は新型コロナウイルス感染症の蔓延と、それにともなう記録的な経済の落ち込みに世界中が苦しんだ年として歴史の教科書に載るのは間違いないでしょう。

 米国の2020年4-6月の国内総生産(GDP)は前期比・年率換算で「-32.9%」という、四半期ベースの公表を開始した1947年以降で最も急激な落ち込みになりました。米国GDPの7割を占める個人消費の落ち込みが34.6%(年率換算)も減少した影響が大きく、コロナによる相手国の景気悪化にともない、輸出も実に64.1%減となり、GDPを大きく押し下げる一因になりました。

 しかし、ここまで落ち込むと、7月以降も米国で増加し続けるコロナ感染者数・死者数が心配ですが、次の四半期である7-9月期に関しては前期比で見た場合、力強い伸びを見せる可能性が高くなっています。

 当のコロナに関しても、ワクチン開発成功のニュースがそろそろ出てきてもおかしくありません。現在、ワクチン開発に関わっている企業は世界で30社弱あるといわれており、米ファイザーが一歩リード。続いて英アストラゼネカが続いているようです。従って、今回のコロナによる混乱が終息に向かうのは「時間の問題」といえます。年内もしくは年始早々にワクチン供給が開始され、コロナに対する不安や動揺がある程度、静まる時期が近付いていると信じたいところです。

 そんな希望を抱きながら、今回は米国大統領選間近ということもあり、「大統領選の4年」という節目で為替市場がどう変化したか、過去を紐解きながら次の4年間がどうなりそうか、について検証しましょう。

ドル円のオバマ時代・トランプ時代の値動き ドル円週足チャート

 チャート①は、2012年11月の大統領選挙から約8年間のドル円の週足チャートです。為替の変動率を見るために、52週移動平均線(以下、SMA)を中央値にしたボリンジャーバンド±2σライン、それ以外に200週SMA、一目均衡表の雲を表示しました。

 チャートの前半は第2期民主党オバマ政権時代、後半が共和党トランプ大統領時代になります。2012年後半~2016年後半のオバマ時代はちょうどアベノミクスが始動して一段落した時期でもあり、ドル円は79円台から125円台まで実に46円近くも値動きしました。オバマ時代末期には、2016年1月末の黒田日銀のマイナス金利導入が逆に嫌気されたこともあって円高トレンドが加速。2016年8月に99円台の安値をつけています。

 一方、トランプ時代は同氏が大統領に選出される直前の2016年10月時点で一時、105円台まで反転。11月にトランプ氏が大統領に選出されたあとは急騰に転じ、2016年12月に118円の高値をつける激しい動きが起こっています。ちょうど1年間(52週)の為替レートの変動率を示すように設定したボリンジャーバンド±2σのバンドも、この時期が最も拡大しています。しかし、その後は1ドル104円~114円という、約10円の値幅間を上下動するのみ。52週SMAや200週SMA、一目の雲はほぼ横ばいで推移し、ボリンジャーバンド±2σも105円~110円という非常に狭い値幅まで収縮しています。次の4年間は、バンド拡大で波乱相場になる可能性も十分、考えられます。

大統領選後にトレンド転換が起こりやすいドル円。バイデン選出なら120円超えも!? 

 とにかく、トランプ大統領という「不確定要素」にコロナという「ブラックスワン(まったく予期しないリスク要因)」も加わり、ドル円は次なる変化に向けてマグマを溜め込んでいる状況といえるでしょう。

ドル円と「4年に1度の大統領選」の関係 ドル円月足チャート

 チャート②は2000年以降のドル円の月足チャートに、米国大統領選挙の年・月を区切りにした4年サイクルを表示したものです。この間、米国では共和党のブッシュ氏(2001年~2009年)、民主党のオバマ氏(2009年~2017年)、共和党のトランプ氏(2017年~2021年)という3人の大統領が選出されました。大統領選は5回行われたわけですが、いずれもその直後にトレンド転換もしくは加速(2008年11月)が発生しています。2020年11月直後にも為替相場が大きく変動する可能性があることを意識しておくべきでしょう。

 詳しく振り返ってみると、ブッシュ氏の8年は1ドル101円台が安値になっていましたが、政権末期の2007~2008年に起こった米国住宅バブルの大崩壊で、90円台まで円高が進みました。

 オバマ氏の1期目は2011年10月の史上最安値75円まで円高トレンド、2期目はアベノミクスや米国経済の復活による円安トレンドと、大統領再選を境にトレンドが大転換しています。

 続くトランプ大統領の4年間は選出当初にいったん101円台まで急落したあと、2016年12月高値118円台まで短期間で急騰。しかし、それ以降はチャート①でも見たように歴史的な膠着相場が続いています。

 共和党政権のときを見ると、ブッシュ時代の大半、トランプ時代のすべてでドル円は100円を割り込んでいません。歴史的に見ても、共和党政権のほうが円安に振れやすい傾向があるようです。そう考えると、トランプ氏再選なら100~101円という共和党時代の鉄板安値を割り込まないまま、膠着相場もしくは多少の上昇相場。バイデン氏が大統領に選出されれば、米中緊張関係緩和なら1ドル120円台乗せの円安加速、同氏が政策に掲げる法人税増税による米国株の急落で100円割れの円高トレンドなど、急騰、急落いずれに転んでもおかしくありません。

ドル円超長期チャートと重要トレンドライン ドル円月足チャート

 チャート③は、さらに長期の月足チャート(1996年~)にトレンドラインを引いて、今後のドル円の行方を囲い込んでみたものです。ドル円のここ25年間の高値は1998年8月につけた1ドル147円台ですが、この高値を起点に2007年6月高値の124円台を結んだラインAの上に重要な過去の高値・安値といった「節目」が重なっています。ライン分析では過去の節目がたくさん通って、値動きに対して何度も抵抗帯や支持帯になっているラインが重要です。その意味では2011年10月安値の75円台と2016年8月安値の99円台を結んだサポートラインBなどはすでに下方ブレイクされているので、あまり重要でない(=投資家から意識されていない)ラインといえます。

 長期的に見ると、ドル円は円高トレンドが今もって続いているため、約25年間のトレンドをライン1本で示すなら、1998年8月高値と2015年6月高値125円台を結んだラインCになるでしょう。このラインをブレイクしない限り、ドル円が長期的に見て上昇トレンドに転換したとはいえないわけです。右肩下がりのラインCはちょうどトランプ時代の高値118円台に位置しており、トレンド転換には、まず118円超えが必要。さらに124~125円台の過去の高値を勢いよく超えていくようなら、本格的な上昇トレンド入りといえるでしょう。

 一方、下方向の大きな節目はなんといっても、1ドル100円ライン。そこに到達するには、トランプ時代の鉄板安値104円割れが必要です。もし多くの節目が通るラインAに寄せていく流れが生まれるなら、長期的に80円ちょうどあたりまでの円高加速があるかもしれません。

株高、金高、ユーロ高のバブルが大統領選後に加速する可能性も。豪ドルは米中冷戦の結果次第か!?

ユーロドルと「4年に1度の大統領選」の関係 ユーロドル月足チャート

 一方、チャート④は米国大統領選の行われた2000年11月~2016年11月の節目を記入したユーロドルの月足チャートです。ユーロドルはブッシュ時代の8年間で、2000年10月安値0.82ドル台から2008年7月高値の1.60ドル台まで約2倍も上昇したあと、オバマ時代の8年間は1.20ドル~1.50ドル間のレンジ相場で推移。2015年1月にその下限を割り込んで急落し、トランプ時代の2017年1月に1.03ドル台まで続落しますが、そこから2018年2月に1.25ドル台まで上昇。その後は、1.03~1.25ドルという、一段階下値レベルで再びレンジ相場を形成しています。

 コロナショックでレンジ下限近くの1.06ドル台まで下げたあとは、7500億ユーロ(約92兆円)の欧州復興基金の設立合意など、コロナからの早期立ち直りが好感されてユーロが急騰。8月末には1.20ドル台突破しました。2020年5月以降のユーロ高が今後も続くかどうかは、各国のコロナ封じ込め政策の成否も影響しそうです。

 米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利をゼロに誘導しており、インフレ率を考慮した「実質金利」はマイナスが続いています。実質金利のマイナスは、現金を持っていたら目減りすることを意味します。そのため、投機マネーは配当利回りが2%を超える株式市場へ向かい、ドル安が進むと上昇しやすい金(ゴールド)も1900ドル台まで買われています。

 個人的には、米株式市場はバブルにまみれていると思われ、大きく調整するリスクがあるという考えは捨て切れません。ただし、新たな4年がスタートする米国大統領選は、むしろバブル加速をさらに進める可能性のほうが高いようにも思われます。株高、金高、ユーロ高トレンドが続けば、ユーロドルの1.25ドル超え、より長期スパンでは2014年5月高値の1.39ドル台到達もありえるかもしれません。

豪ドル米ドルと「4年に1度の大統領選」の関係 豪ドル米ドル月足チャート

 最後に、中国経済の影響を受けやすい豪ドル米ドルの長期月足チャートを見ておきましょう(チャート⑤)。豪ドル米ドルは2008年9月のリーマンショックで0.60ドル台まで暴落。しかし、ショックからいち早く回復した中国経済の強さに引っ張られて2011年7月には1.10ドル台まで急騰。その後、中国のGDPが8%割れしたオバマ時代の2012年以降は下落トレンドに転換。トランプ時代初期の2018年1月に0.81ドル台まで上昇したものの、トランプ大統領による対中関税発動、米中貿易戦争勃発もあり、2020年3月のコロナショックでは0.55ドル台の安値をつけています。

 コロナの発生源でありながら、欧米以上に素早くコロナ禍を脱した中国経済への期待感もあるのか、7月後半以降は0.70ドル台を回復。しかし、ユーロドルに比べると上昇力は弱いものになっています。もしトランプ氏が再選したら、次の4年間のメインテーマは間違いなく「米中冷戦」になるので、豪ドル米ドルは下降トレンドへ回帰しそうです。一方、バイデン氏が大統領に就任した場合は対中強硬論の緩和が予想され、豪ドル米ドルの上昇が続きそうです。

 米国第46代大統領がトランプ氏、バイデン氏のどちらになるのか、まだわかりません。ただ、今後4年間の為替市場は、

●コロナ禍からの世界経済復活

●米中冷戦時代の到来

●中央銀行の量的緩和策によるバブル発生とその崩壊

といった点が重要テーマになりそうです。いずれにしても、大統領選後には、新たなトレンドが生まれることが非常に多いので、その方向性を間違えることなく、為替レートの大きな変動に乗って利益を得たいもの。「絶対、こちらに向かう」という独断は避け、11月3日の結果判明後、1週間ぐらいは様子見して、どちらに向かうか、注意深く、先入観なく観察することが大切です。

※この記事は、FX攻略.com2020年11月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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