銅と木材をクローズアップ
新型コロナウイルスの影響を受けて、今年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ主要国の中央銀行は超緩和政策にかじを切りました。FRBのバランスシートを見ると、今年3月の4兆ドルから7兆ドルにまで急拡大しています。
今回は、日常生活ではあまり注目されることのない素材価格、特に銅と木材にスポットを当て、コロナ禍の中、両商品に何が起きているか見ていきたいと思います。
景気のバロメーター銅
まずは銅から見ていきましょう。銅は耐腐食性、導電性、熱伝導性、殺菌性、加工性などに優れているため、電線・電子機器のパーツをはじめ、さまざまな用途で使われ、多くの産業を支える存在です。そのため銅需要は、住宅、公共インフラ、製造業の実態を映し出します。
一方、供給は安定しており、需要の増減が比較的素直に価格に反映されることから、銅価格は「景気のバロメーター」と呼ばれます。現在、銅需要の半分以上が中国であり、銅の国際指標価格となるのはロンドン金属取引所(LME)に上場されている銅3か月物です。
価格推移(チャート①)を見ると、今年1月に6346ドルの高値をつけましたが、その後、中国でコロナ禍が始まると2月に5523ドルに下落、パンデミックとなった3月19日には一時4371ドルまで下落し、高値から31%もの下落となりました。しかし、その後、中国がいち早くロックダウンを解除した上、主要国の超緩和政策、財政出動などを背景に、一方的な上昇場面を迎え、7月には年初来高値の6346ドルを上抜き、9月21日には2018年6月以来の高値となる6877.50ドルまで水準を引き上げました。その後も、6500ドル近辺で推移しています。
コロナ禍以前の価格をも上回っていますが、需要の約半分を創出する中国の経済指標を見ると、景気回復というより同国の財政出動に支えられ、それにちょうちんをつけた価格のようにも見えます。同国の2020年8月の小売売上高を見ると、前年同月比0.5%増となっていますが、新型コロナウイルスのまん延以降、前年同月を上回ったのは初めてのことです。個人消費が回復してきたというには、時期尚早です。
回復は政府主導
一方、中国の工業生産は5.6%増と、5か月連続で前年同月を上回っています。特に自動車が7.6%増と好調でした。また、工業ロボットやセメントなど企業向け品目も伸びています。ただ、これらは政府の販売支援策や補助金によるところが大きいです。
また、オフィスビルや工場の建設など固定資産投資を見ると、1~7月の累計が同1.6%減だったのに対し、1~8月の累計で前年同期比0.3%減と減少幅が縮小しています。個人消費の回復が遅れている中、固定資産投資が増えるということは、国有企業主導の景気対策を受けて大型の工事が進んでいる可能性が高いです。中国政府は、新型コロナウイルス対策として8兆元の財政出動を行っており、このお金が流れているのでしょう。
こうしてみると、今の銅価格は財政出動によるところが大きく、これに個人消費が追いつけるかが、今後の注目材料となりそうです。一部では、中国国民はコロナ禍を経て、貯蓄への関心が高まっているとの報道があります。同国の消費回復が停滞するようなら、積極的な財政出動がなされているうちはいいですが、これが細くなったタイミングでの銅価格の下落、中国景気が再び減速する可能性には留意が必要でしょう。
木材価格が急騰。米住宅市場はバブル?
中国要因で上昇しているのが銅なら、米国の要因で急騰したのが木材です。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)には木材が上場されていますが、現在、指標価格となっている11月限は4月1日につけた安値277ドルから8月28日には820.60ドルまで上昇しました。約3倍です。その後、550ドル付近まで急落もしましたが、コロナ禍以前より価格水準は依然として高いです。
そもそも米国では、低金利を背景にコロナ前から住宅需要が高まっていました。そして、コロナ禍を受けたFRBの超低金利政策が、これに拍車を掛けています。米国では、新築住宅市場より中古住宅市場の方が大きいのですが、全米リアルター協会(NAR)が9月22日に発表した8月の米中古住宅販売件数は、年率換算で前月比2.4%増の600万戸と、2006年12月以来約14年ぶりの高水準となりました。一方、米新築住宅市場の動向を見ると、今後もリモートワークが増加するとみられることから、郊外の一戸建て住宅の需要が高まっているようです。
また、コロナ禍による在宅時間の長時間化も木材需要を高めているようです。これは、米住宅用品小売り最大手のホーム・デポの2020年5-7月期の決算を見ても明らかで、売上高が前年同期比23%増の380億5300万ドル、純利益は同25%増の43億3200万ドル、既存店売上も同23.4%増と伸びています。超低金利と在宅ワークの拡大が続いているうちは、木材価格も乱高下はあるにせよ、高値圏での推移が続きそうです。
※この記事は、FX攻略.com2020年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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