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相場見通し

インフレ懸念+米国債利回り上昇=円安[雨夜恒一郎]

インフレ懸念+米国債利回り上昇=円安[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2021年3月1日号

先週のドル円相場は

ドル円は米国債利回りの上昇とともに上値を試す展開となり、一時106.69円と昨年8月以来半年ぶりの高値を示現。パウエルFRB議長が半期に一度の議会証言で、長期金利の上昇について当面静観する姿勢を示したことがきっかけとなった。

米国10年債利回りは、国債入札の消化不良や、500億ドル規模とされる先物市場のポジション調整もあり、一時1.61%台と1年ぶりの高水準をつけた。

前回の当コラムでは、「パウエルFRB議長が期待先行による金利上昇や利上げ観測に不快感を示すか牽制球を投げる可能性は十分ある」と予想したが、残念ながら逆の結果となった。

米国株式市場では、ワクチン普及によるコロナ終息期待や景気回復期待を背景にNYダウが一時3万2千ドル台をつけるなど続伸したが、週末にかけては金利上昇を懸念して3万1千ドル割れまで反落した。

インフレ懸念台頭

現在市場が最も警戒しているのは明らかにインフレリスクである。大規模な金融緩和と財政拡大でカネ余りが加速していること、景気回復期待を背景に半導体や素材の品薄・価格高騰が続いていることが背景だ。

コロナ禍における世界的な金利低下局面でこれまで積み上がっていた債券ロングポジションが、5年債0.75%、10年債1.5%という節目を抜けたことで大規模なアンワインド(巻き戻し)を誘発し、長期金利が急激に上昇した。市場が織り込む期待インフレ率も2.17%台とじり高の状況だ。

米国10年債利回りチャート

米国10年債利回りは1.5%を突破

リフレトレード

先進国ではほぼ忘れ去られていたインフレが本当にやってくるかはわからない。しかしインフレリスクに対する市場の備えがまだ十分でないことから、当面この流れは続くと見るのが賢明だろう。

原油や素材などコモディティー価格は上昇が続き、米国10年債利回りは次の節目である1.75%を目指す展開となり、米国株式市場は債券市場からの資金流入で不安定ながら上昇する可能性が高い。

こうした中、為替市場ではいわゆる「リフレトレード」が活発で、ここ1か月で資源国通貨である豪ドル、NZドル、カナダドル、英ポンド(英国は一応産油国だ)、ノルウェークローネなどが買われ、ドル、円、スイスフランの「安全通貨御三家」が売られている。

今週も、資源国通貨に対してドル安・円安基調が継続する一方、ドル円は米国債利回りの上昇が下落の歯止めになり、当面底堅い展開と見るのが現実的な読みだろう。

ただし米雇用統計には要注意

なお今週金曜日には2月の米国雇用統計が発表される。先行きの景気回復期待とは裏腹に足元の雇用情勢は依然厳しく、失業率は6.4%(前回6.3%)と高止まりし、非農業部門雇用者数も15万人の増加(前回4.9万人)にとどまる見通しだ。

FRBの金融緩和解除の条件である「最大雇用の評価に一致する水準に達する」状況からは程遠く、市場心理が現実に引き戻されれば、長期金利の上昇一服・ドル円反落という展開もあり得る。ドル安・円安の綱引きの中で、過度のドル強気も避けるべきであろう。

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雨夜恒一郎
あまや・こういちろう。20年以上にわたって、スイス銀行、JPモルガン、BNPパリバなど、大手外銀の外国為替業務要職を歴任。金融専門誌「ユーロマネー」における東京外国為替市場人気ディーラーランキングに上位ランクインの経歴をもつ。2006年にフリーランスの金融アナリストに転身し、独自の鋭い視点で為替相場の情報をFX会社やポータルサイトに提供中。
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