「大人の経済」基礎講座

FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座|第4回 金利動向から為替相場を読む[雨夜恒一郎]

ファンダメンタルズ(分析)を体系的に学ぶことができる当企画。前回までで「金利のきほん」について理解を深めることができたと思います。今回からはその応用編として、金利動向が為替相場に与える影響や、金利動向から為替相場を読む方法を解説していただきます。

※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです

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投資家に好かれるのは金利が高い通貨

前回まで金利の基本について述べてきましたが、本稿ではいよいよ応用編、金利動向が為替相場に及ぼす影響や、金利動向から為替相場を読み解く方法について述べていきたいと思います。

金利とはその通貨から得られる収益ですから、金利が上昇しそうな通貨は買われやすく、金利が低下しそうな通貨は売られやすいといえます。連載2回目「金利のきほん~前編」では、金利はむやみに高ければ良いというものではなく、名目金利より実質金利が重要であるということを説明しましたが、現在の主要国ではインフレ期待が非常に低く、名目金利も歴史的な低水準にありますから、少しでも金利が高い通貨が投資家に好まれる傾向にあります。

織り込み済みと材料出尽くし

そして米国は先進国の先頭を切って2015年末に利上げサイクルに入りました。直近では今年、2017年6月13~14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今年2回目の利上げが決定され、政策金利であるFF金利は1.00~1.25%となりました。日本との金利差は着実に拡大しています。米国がいつ、どこまで金利を引き上げるかということが、現在の為替市場における最大の関心事といっても過言ではありません。

しかし今年のドル円相場の動きを見ると、3月と6月の2回の利上げにもかかわらず、下落していることが分かります。前述した「金利が上昇しそうな通貨は買われやすい」という説明と矛盾していますね。なぜそうなってしまうのでしょうか? それは、常に将来を先取りするという市場の性質が大きく影響していると考えられます。つまり今年米国で利上げがあることは広く予想されており、ドル円相場はそれを先取りして既に買われていたわけです。これを「材料織り込み済み」といいます。そして実際に利上げが決定されると、予想通りとの受け止め方で、ドル円相場はむしろ下落してしまったというわけです。こうした動きを「材料出尽くし」といいます。

昔と違って今はインターネットなど情報伝達手段が発達し、市場の隅々まで情報が行き渡っているため、今後米国の金利がどう動きそうか、ある程度の予想=コンセンサスが出来上がっています。したがって、ドル相場が利上げで買われるためには、利上げの幅やペースが市場の予想を上回る(サプライズ=驚きとなる)必要があるのです。

利上げの幅やペースが市場の予想通り、あるいは予想を下回るようだと、利上げしたにもかかわらず材料出尽くしでドルが売られるという事態が発生します。これは金利の上げ下げだけでなく、景気指標の良し悪しでも同じことがいえます。

つまり第一義的には、米国の利上げ=ドル高材料なのですが、市場での実際的な反応としては、

米国の利上げ<市場の期待=ドル買い(サプライズ)
米国の利上げ≦市場の期待=ドル売り(材料出尽くし)

となるわけです。

米国の金利動向が分かったとしても、市場の期待を理解できなければ、トレードに生かすことはできません。

FOMC声明で当局の意図を知る

では市場の期待やコンセンサスをつかむにはどうしたら良いのでしょうか。それにはまず中央銀行の金融政策スタンスを知らねばなりません。実は米連邦準備制度理事会(FRB)が経済をどう評価し、今後金融政策をどのように運営していきたいかということは、FOMC声明に全部書いてあります。FOMCは米国の金融政策を決定する最高意思決定機関であり、年8回会合を開いて、その都度声明を発表します。市場はこの声明を基に今後の金融政策の動向を予想するわけです。FRBは米国の中央銀行であり、おそらくは世界で最も米国経済について精通している集団です。彼らが公式の見解として発表するFOMC声明を読めば、米国経済の現状や見通しを簡単に把握することができるというわけです。

そんなわけで、FOMC声明の発表は世界中が注目するイベントであり、米国雇用統計と並んで市場のボラティリティが最も高まる瞬間です。なお3・6・9・12月の会合では議長の会見と質疑応答がセットされるため、重要な政策変更はこれらの会合で行われることが多いです。今年も既に3月と6月の会合で利上げが決定されました。

声明は過去数年間の分も含めてFRBのウェブサイトに掲載されています。英語は苦手で…という方は、ロイターが日本語訳を無料で配信していますので、遠慮なく利用しましょう。「FOMC声明全文 ロイター ○月○日」で検索すれば簡単に見つけることができます。ブックマークするか、URLをどこかにコピーしておき、FOMCの翌日はチェックするようにしましょう。では実際に直近2017年6月14日のFOMC声明を見てみましょう。よほどのことがない限り、FOMC声明はほぼ同じフォーマットで書かれています。それは、

① 景気・雇用・インフレの現状評価
② 景気・雇用・インフレの予測
③ 今回決定した金融政策
④ 今後の金融政策予測(ガイダンス)
⑤ 具体的行動(公開市場操作)
⑥ 誰が賛成・反対したか

というものです。

2017年6月14日の声明によると、

① 労働市場は引き締まり続け、景気は緩やかに拡大、インフレ率は低下
② 経済は緩やかに拡大し、労働市場はさらに力強さを増すと予測、インフレは安定
③ FF金利の誘導目標レンジを1.00~1.25%に引き上げる
④ 経済状況は緩やかな利上げを正当化する形で進むと予測
⑤ 償還金を再投資する既存の政策を維持。経済が予想通りならば今年中にバランスシートの正常化に着手
⑥ カシュカリ委員が政策金利据え置きを主張し反対

①と②からは、景気は堅調だがインフレはまだ問題ないと見ていることが分かります。④と⑤では、今後も緩やかな利上げ(1回につき0.25%という意味)を続け、量的緩和からの出口戦略にも着手するといっています。そして⑥では、2017年3月に続いて2回連続で利上げに反対票を投じたミネアポリス連銀総裁のカシュカリ委員が、最もハト派寄りメンバーであることが判明しました。


画像:FRB公式サイト掲載のFOMC声明


画像:2017年6月14日FOMC声明全文(ロイター日本語版)

ドットチャートの読み方

また3・6・9・12月に発表されるメンバーの経済・金利見通し(いわゆるドットチャート)も、今後の金利動向を予想するための重要な手がかりとなります。

2017年6月のドットチャート(図①)によると、2017年末のFF金利は1.25~1.50%(年内あと1回利上げ)との見通しが最多の8票を集めました。一方1.00~1.25%(年内利上げなし)、1.50~1.75%(年内あと2回利上げ)の予想も4票ずつ入っています。この票の分布が前回からどう動いたかによって、FOMCメンバーたちの金利観の変化をつかむことができるようになります。すなわち、ドットが上方にシフトしているときにはFOMCの利上げ意欲は高まっており、ドットが下方にシフトしているときには利上げ意欲が後退していると見ることができるわけです。

ちなみに2017年3月のドットチャート(図②)も、2017年末のFF金利は1.25~1.50%が最多の9票を集めているので、FOMCメンバーたちの金利観は3月からあまり大きく変わっていなかったといえます。

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FF金利先物で市場の声を聞く

さて、これまではFOMC声明とドットチャートを基に、FRBの意思を探る方法を述べてきましたが、これらはあくまで公式見解であり、時として市場の実感と乖離していることもあります。また大本営発表のように、意図的に脚色が加えられていることもないとはいえません。したがって、こうした公式見解を鵜呑みにするのではなく、市場の声もよく聞き、もしそこに乖離があるならば、どこに齟齬があるのかをよく考えてみることが重要です。

市場が金利の先行きをどう予想しているかを知るには、金利先物をチェックするのが手っ取り早い方法です。米国ではFF金利の先物がシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されており、先々のFF金利が何パーセントと予想されているのかが簡単に分かります。

例えば2017年12月のFF金利先物が98.775で取引されているとします。金利先物は100から金利を引いた数字で取引されますので、同月のFF金利は100-98.775=1.225%と予想されていることになります。詳しい計算方法は省きますが、これを基に12月FOMCまでの利上げ確率を計算すると約45%となります。そして、この計算を自動的に行い、グラフィカルに表示してくれるのが、CMEグループが提供する「Fed Watch」というサービスです。市場の金利観の変化を簡単につかむことができる非常に有用なサイトですので、常にチェックしておくことをお勧めします。

2017年12月の利上げ確率が45%ということは、年内あと1回の利上げもあるかどうか分からないということです。FOMC声明とドットチャートは年内あと1~2回の利上げを示唆しているわけですが、市場はFRBの公式見解よりずっと慎重であるということが分かります。

最終的にどちらが正しいかはそのときになってみないと分かりませんが、両者の見方が大きく乖離しているということは、相場が大きく動く可能性を秘めていることになります。そして中央銀行は、事前に利上げをできるだけ市場に織り込ませ、ショックを回避したいと考える習性があります。

2017年12月までにFRBが本当に1~2回利上げしたいと考えているならば、今後さまざまな情報発信によって市場が織り込む利上げ確率を高めるアプローチをしてくるはずです。実際2017年6月利上げの際にも、Fed Watchの利上げ確率は最終的にはほぼ100%に達していました。この利上げ確率が上昇していく過程で、ドル円は連動して買われていくことになります。

逆にFRBが利上げの確信を失っていくならば、市場の利上げ期待をさらに引き下げるアプローチがあるはずです。こういう局面ではドル円は売られやすくなります。

第4回まとめ

① FOMC声明を熟読し、公式見解をつかむ
② ドットチャートでFOMCメンバーの金利観をつかむ
③ CME FedWatchで市場の声を聞く
④ 両者の見方に乖離がある場合は相場が大きく動く可能性が高い

※この記事は、FX攻略.com2017年9月号の記事を転載・再編集したものです

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