マーケットが決定する長期金利
中央銀行は「物価安定の維持」を責務とし、その安定が損なわれないように金利を上げたり下げたり調節しながら、政策金利の決定を行っています。しかし、為替取引をする上で注意しなければいけない金利は、中央銀行の政策金利だけではありません。もう一つの気になる金利とは、国が発行する国債の利回り、別名「長期金利」です。
政策金利は中央銀行がコントロールできますが、長期金利を決定するのはその国の国債を買う投資家たちや、外貨準備金の一部として購入する他の国の中央銀行です。つまり、長期金利とはそれぞれの国債の人気投票のようなもので、経済・財政運営がしっかりしており、満期にきちんと返済できる能力や信用力の高い国の国債には、たくさんの買いが入ります。反対に、返済能力に疑問が生じた国の国債には、誰も見向きもしません。
この「信用力」「返済能力」に応じて、国債の利回りが決定されます。したがって、返済能力があると判断された国は、あまり高い金利を払わずにお金を借りられます。逆に、数年後には、その国の経済や財政事情がどうなっているか分からない、最悪の場合は破綻するリスクを抱えた国は、投資家にとって魅力的な高い金利を提示しなければ、買ってくれる人がいなくなります。
このように、国債の利回り(長期金利)は、中央銀行でさえコントロールできず、あくまでも市場の需要と供給のバランスで決定されるものです。そして、中央銀行が設定する政策金利と同じように、市場が決定する長期金利も為替に影響を与えているのです。
なお、政策金利は中央銀行の金融政策理事会で決定されます。つまり毎日変わるわけではなく、変更が必要となれば金融政策理事会が開催されたときに変更されます。それに対し、長期金利は将来の経済成長期待や格付けなどを総合的に判断して決定されます。その結果、金利水準は一日のうちに何度も変わります。
長期金利の仕組みと期間

国債価格と金利の関係は、慣れるまで混乱するかもしれません。というのも、国債価格が上昇すると、利回りは下落するからです(図①)。そのため、長期金利が上昇したという報道は、国債価格が下落したことを意味するので、あまり良いニュースとはいえません。普段マーケットのニュースでは「上昇」といえば「良いニュース」となることが多いので、そういう固定観念を取り払うことが必要かもしれません。
国債の期間は、数か月の短いものから、最長100年というものまであります。その中で、長期金利のベンチマークとなるのは、「10年物」です。
悪い金利上昇と良い金利上昇
長期金利に影響を与えるのは、政策金利動向、財政政策内容、格付け機関による信用格付けなど多岐にわたります。

出典:米セントルイス連銀
チャート①は、2016年11月に実施された米大統領選挙後の米国長期金利の動向です。トランプ大統領は当選直後、大型減税と大規模な公共投資を約束したため、財政支出が一気に拡大し、赤字国債の乱発は避けられないという発想で、国債の買い手が引いてしまい長期金利が上昇しました。こういう場合は、「悪い金利上昇」と受け止められます。
その後、大統領として就任してからは、労働市場が改善され緩やかな景気拡大と物価上昇のもとで、経済活動が堅調な速度で拡大しました。これを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は何度も利上げを実施しました。このように、景気拡大が確認される中での前向きな長期金利上昇は、「良い金利上昇」となります。
長期金利は上昇することが必ずしも良いこととは限らないため、十分に気をつけてニュースをチェックしたいですね。
※この記事は、FX攻略.com2020年12月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。
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