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これからの外国為替場の行方 第119回(月刊FX攻略.com2020年3月号)[田嶋智太郎]

これからの外国為替場の行方 第119回(FX攻略.com2020年3月号)[田嶋智太郎]

米株価&米景気は上向きで経済はバブルへと向かう

 2019年の年の瀬を迎えた執筆時においても、なお米株式市場ではNYダウ平均をはじめとする主要な株価指数が、連日のごとく史上最高値を更新し続けている。なかでも、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の値動きは特に好調であると言え、年初に1130ポイント前後だった同指数が執筆時には1850ポイント前後と、ほぼ1年間で60%以上の上昇となった。文字通り、米株式市場における半導体関連株の値動きが総じて好調であるということになるわけだが、それは同時に2020年の米景気を楽観視する向きが増えることにもつながっている。

 世界半導体市場統計(WSTS)が12月初旬に発表した半導体市場予測によれば、2019年の半導体市場は前年比12.8%減となったものの、2020年は第5世代移動通信システム(5G)の本格的な普及やデータセンターへの投資の回復、次世代ゲーム機の登場といった要素から、2019年比で5.9%増の回復基調になるという。

 いまや「産業の主役」となっている半導体の市場に底打ちの兆しが見えてきたことは、世界経済全体にとっても明るい兆候であり、結果として生じている世界的な株高は今後、そのプラスの「資産効果」を存分に発揮することとなるだろう。

 なお、ここにきて米住宅販売の好調ぶりを示す指標の発表が相次いでいることも見逃せない。たとえば、全米ホームビルダー協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが発表した12月の米NAHB住宅市場指数は76(前回から5ポイント上昇)と、1999年以来の高水準に達した。

 このNAHB指数の「70」超えは、かねて米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利の引き上げを開始するサインとして知られてきた。ところが、現状におけるFRBの政策方針は「向こう1年程度は据え置き」である。まして、トランプ米大統領はFRBに対して一段の金融緩和を求め続けている。こうした状況を放置し続ければ、良かれ悪しかれ米国経済はいよいよバブルの様相を呈し始めることとなろう。

なおも下値リスクに要警戒。英総選挙後のポンド相場

 もともと米景気は堅調に推移し続けてきており、その背景にはすこぶる良好な米雇用情勢と、それに支えられた賃上げ期待、消費マインドの高まりがある。そこへもってきて、長らくの懸案であった米中貿易戦争は一旦「休戦」のモードに入るというのだから、米国の株価と景気が上向くのも当然である。

 むろん、肝心のドルが他の主要通貨に対して強含みで推移しやすい状況であることは言うに及ばず、このまま2020年も基本的にはドル高基調が続くと見ていいものと個人的には考える。そろそろポンドやユーロがドルに対して反撃の狼煙を上げても良さそうなものではあるが、やはり今しばらくは難しいと見ておかざるを得まい。ことにポンドにおいては、なおも下値リスクへの警戒が解けない状態が続く。

 既知のとおり、12月に英国で行われた下院総選挙において与党・保守党は歴史歴な大勝利を収めるに至った。結果、同選挙の「出口調査」の結果が判明した時点でポンドドルは2019年の年初来高値を更新し、一時1.35ドル台まで大きく上値を伸ばした。ところが、ほどなく失速して再び下げに転じた後、あっと言う間に1.30ドル処を下回る水準まで下押すこととなったのだ。

 考えて見れば、今回は「選挙で保守党が勝利した」というだけのことであって、それで欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」の可能性が封印されたわけでも何でもない。まして、ジョンソン英首相は、選挙後の施政方針演説に付随する序文のなかで「移動期間の2020年末以降の延長は排除する」との方針を正式に表明しているのである。

 これまでの原則では、英国とEUとの合意があれば「2022年末までの延長」という選択肢もあった。ジョンソン氏は、あえて退路を断つことでEU側にプレッシャーをかけたい意向なのであろうが、それを受けたEU側が英国の好き勝手を簡単に許すはずもない。結局、今後も長らく市場は英国による「合意なき離脱」の可能性を警戒しながらポンドと向き合い続けねばならず、その上値は自ずと限られることとなりそうなのである。

ポンドドル週足2015年1月〜

 チャート①に見るように、ポンドドルが英総選挙後に1.35ドル台の高値をつけに行った場面にあっては、一目均衡表(週足)の遅行線が週足「雲」上限に上値を阻まれて、押し戻されるような格好となっていることがわかる。過去においても、この遅行線と週足「雲」の位置関係が要所、要所でモノを言う場面は多々あった。

 また、1.35ドル台の高値をつけに行った時点で、2018年4月高値から2019年9月安値までの下げに対する61.8%戻しを達成したという事実も見逃せない。一つの重要な節目に到達したことで、当面の達成感が売りを誘った可能性もある。

 もちろん、節目ということでは執筆時点で1.3000ドルが非常に重要と見られるが、それだけにひとたびクリアに同水準を下抜けると、そこから下値の余地は拡がりやすい。当面は、週足「雲」の上限・下限や62週移動平均線(62週線)、31週移動平均線(31週線)が下値の目安ということになると思われるが、これらの移動平均線が上向きから下向きに転じるかどうかという点も注視しておきたい。

今しばらくユーロ相場は方向感が見出しにくい!?

 ユーロドルについても、いまだ大きく持ち直す兆しは見られず、なおも方向感を見出しにくい相場展開がしばらく続くと見ておかざるを得まい。週足で見れば、依然として31週線の上値抵抗が強烈に利いていて、仮に一旦同線を上抜けてもすぐ上方に62週線と週足「雲」下限の水準が控えるという、いかにも重苦しいチャート・フェイスになっている。よって、当面はまず31週線をクリアに上抜けるかどうかを見定めねばならない。

 一方、下値は1.1000ドル処でのサポートが意識されやすく、同水準を下回るとすかさず買いの手が出てくることも事実ではある。市場の見方としては、今のところ望み薄とは言え、注目のドイツが突然手のひらを返したように財政政策の積極化方針を打ち出し、ユーロが一気に買い戻されるリスクにも一応は備えておきたいというところなのではないだろうか。

 もちろん、欧州中央銀行(ECB)の政策方針も、まだラガルド(総裁)体制になったばかりであることから、しばらくは様子見したいというところがあろう。その実、総裁は就任後初めての記者会見で、2020年1月から政策の総点検を開始する考えを表明した。

 同時に、総裁は「タカ派」にも「ハト派」にもくみしない考えを改めて示し、事実上の分裂状態にあるとされる理事会を一つにまとめていく必要にも迫られている。いずれ政策方針がまとめられていく過程では、ユーロ相場に大きな動意が見られるようになる可能性もあり、やはり今しばらくは「様子見が吉」ということになるのだろう。

 もちろん、最近は少々明るいニュースもぼちぼち散見されるようにはなってきている。欧州自動車工業会(ACEA)が12月半ばに発表した2019年11月の欧州主要18か国の新車販売台数(乗用車)は、前年同月比3.9%増と3か月連続で前年実績を上回る結果となった。最大市場のドイツが前年同月比9.7%増と大きく伸び、メーカー別ではシェア首位の独フォルクスワーゲン(VW)の販売台数が14.8%増と好調だった。

 米中の対立関係が多少なり緩んで行くことによって、中国との関わりが深いユーロ圏の景況感が徐々に改善していく可能性もないではない。正直、ユーロ圏の景気とユーロ相場の行方は、今現在が一番読みにくい時間帯にあると言えるだろう。場合によっては、近い将来において大きな転換期が訪れる可能性もあり、その点は今から心得ておきたい。

いよいよドル円はトライアングル上放れへ?

 肝心のドル円については、前回更新分でも注目したように、109円処の節目と200日移動平均線を12月半ば以降にあらためて上抜ける動きとなり、執筆時点では109.50円を挟んでの小動きに連日終始する展開となっている。

ドル円週足2015年3月〜

 週足で見ると(チャート②参照)、一目均衡表の週足「雲」のなかに潜り込む恰好となっているうえ、62週線の上値抵抗が依然として強く利いているという、いかにも動きにくい状況下にあると言える。仮に62週線を上抜けても、すぐ上方には週足「雲」上限が位置し、さらに上方には2015年6月以来ずっと形成されてきた三角保ち合い(トライアングル)の上辺が位置している。

 ここは、まさに一つの正念場ということになるわけだが、それだけに複数ある重要な節目を上に抜けた場合のインパクトは大きいとも言えそうである。少々気が早いかもしれないが、仮にトライアングルを上放れた場合の上値の目安を想定しておけば、それは一つに2019年4月高値の112.40円であり、同水準を上抜ければ、次に114円台半ばから後半あたりの水準まで目線が上がることとなってもおかしくはないだろう。

 ちなみに、ドル円の21日移動平均線は12月半ばに200日移動平均線を明確に上抜けた。そして、執筆時点では89日移動平均線が上向きでの推移を続けており、いずれ200日移動平均線を上抜ける公算が大きい。足下では徐々に強気の条件が整いつつあるように思われる。あとは、年明け以降の日経平均株価が2万4000円台で根固めできるかどうかが一つの焦点ということになるだろう。

※この記事は、FX攻略.com2020年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

ABOUT ME
田嶋智太郎
田嶋智太郎
たじま・ともたろう。経済アナリスト。アルフィナンツ代表取締役。1964年東京都生まれ。 慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、ひいては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」、ダイワ・証券情報TV「エコノミ☆マルシェ」などのレギュラーコメンテータを務める。主なDVDは「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX入門」「超わかりやすい。田嶋智太郎のFX実践テクニカル分析編」。主な著書は『財産見直しマニュアル』(ぱる出版)、『FXチャート「儲け」の方程式』(アルケミックス)、『なぜFXで資産リッチになれるのか?』(テクスト)など多数。最新刊は『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)。
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