トレイダーズ証券の井口喜雄による【Dealer’sEYE】をお届けします。
FOMCメンバーによる発言に一喜一憂する展開が続いております。
アトランタ、サンフランシスコ、シカゴ、フィラデルフィア、セントルイスと複数の米地区連銀総裁から、金融政策に関するタカ派発言をきっかけに米ドル/円で113円台に定着したかと思えば、昨夜、イエレン議長は、米経済の回復を脅かす要素に対して警戒感を示し、タカ派的だった連銀総裁の見解に異を唱える形となりました。東京市場でもドル安地合いは継続して現在は112.50円付近で推移しています。
ここ数日のFOMCメンバーによる発言にはかなり違和感があります。今まで比較的ハト派寄りな発言を繰り返してきた各連銀総裁が一転タカ派的な発言へシフト変更しており、前回の発言は一体何だったのかと言いたくなるほどです。
このいきなりタカ派への方向転換には、イエレン議長が世界経済に慎重な見方を示し、金利見通しを引き下げるハト派発言の調整と考えています。FOMCメンバーがハト派一色になり、6月の米利上げが否定されるのを回避する意味合いがあったように思います。
また、セントルイス連銀総裁のブラートを除き、あからさまな方針転換でタカ派発言をした4連銀の総裁には今年の投票権はなく、過度な反応は禁物かもしれません。このように整理した結果やはり、FOMC内部ではハト派が大勢で、米利上げペースに関しては緩やかにしていきたいとのシナリオがあるのではないかと推測しており、引き続き米ドル/円は弱気バイアスをもって臨む方針です。
では、週末にかけて米ドル/円は売り地合いかといえば、そうとも言い切れません。
利上げに慎重姿勢を示したことは株価には好影響を与えるため、リスクオンの展開が下値を支える可能性があります。
また、週末にかけてADP、新規失業保険申請、雇用統計、ISMと米重要指標が控えるなか、直近の堅調な指標結果を鑑みると、今回も米経済の力強さを確認するのではとの思惑もあります。上昇余地の見極めをつけてから再び売り場を探すのが得策かもしれません。
テクニカル面では5日移動平均線と25日移動平均線がゴールデンクロスを形成するかに見えましたが失敗、引続きこのレンジ相場の出口は見えてきません。レンジ内で次のテーマを探る時間帯が続きます。
<長期展望>
米ドル/円は、中国を始めとした世界的な先行きの不透明感からリスクオフ地合いが簡単に払拭されるとは考え難く、円高に振れやすい地合いが続くと見ています。また、米利上げペースの鈍化、日銀金融緩和への限界などネガティブな材料は多く、長期的なターゲットとして100円付近までの下値を想定しています。
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