現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト 奥村尚 後編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]

現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト 奥村尚 後編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]

【前編はこちら】

現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト 奥村尚 前編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]

現在のAIは発展途上。今後の進化に期待

井口 人工知能(AI)の専門家である奥村さんにお聞きしたいのですが、最近ではAIを利用しているとうたう自動売買や投資信託が多く、AIを使えば勝ちやすいというイメージを持っている投資家もたくさんいます。そのことについてはどのようにお考えですか?

奥村 AIというと、おそらく先端技術のイメージが先行していて誤解があると思いますが、人間を超えることはありません。なので人間が勝てないことにAIを使っても突然勝てるようにはなりません。絶対に勝てないとはいいませんが、「人間ができることを機械が最も効率良く行う」というのが現時点でのAIの能力です。

 そして、投資においては「AIとは何か」が重要です。例えば、金融機関に所属し「われわれはAIを使って運用しています」といっている人に「使っているAIはどのような機能を持っていますか?」と質問しても誰も正確に答えられないと思います。なぜなら、その人たちは営業であって研究者ではないからです。

 一方で、自動販売機にお金を入れると飲み物が出てきますが、これも立派なAIです。偽造通貨を見極め、購入者の顔を見てどのような人が何を買ったのかを記憶し、本社にデータを送るわけですよね。そして、飲み物の在庫を予想して枯渇しそうなものを教えてくれます。他には、駅の自動改札も通行する人を一人一人正確に数えているので立派なAIなんです。でも、われわれは自動販売機や自動改札をAIとはいいませんよね。

 今の金融業界のAIは、われわれが期待しているものとはほど遠いレベルの低いものです。例えば「あなたはお金持ちになりたいですか?」みたいな質問に答えると、「あなたにピッタリなポートフォリオはこれです」といきなり出てくるサービスがありますが、それは占いに近いです。今のAIはそのレベルなんです。本当のAIが出てくると、もっとマシになると思いますよ。現時点で日本の大手証券会社でAIを使っているところはほぼないと思います。マーケットで勝てるのはAIというよりも、機械で少しのスプレッドを誰よりも早く取っていくトレード方法です。機関投資家や多くの資金を持っている投資家が今行っているのは、機械を使ったフラッシュトレードが多いと思います。

井口 おっしゃる通りだと思います。いかに早く取引できるかにお金をかけている人は多いです。

奥村 だから株でもFXでも順張りが多いですよね。

井口 ちなみに「テキストマイニング」はどうでしょう。大手のヘッジファンドでも利用されていると思いますが、どのようにお考えですか?

奥村 完成度が高まると面白いと思います。結局はどのような単語が一番多く出てきて、その単語がネガティブなのかポジティブなのかを判定しているだけです。それはAIではなく、データベースのスクリーニングです。例えば、「ソニー」という単語が頻繁に出てくるとした場合、プレイステーション5が発売されるから出ているのかもしれないですし、ブランドのロゴを統一したから出ている可能性もあります。あるいは社長がどこかで酔っ払ってけんかをしたせいかもしれない。なぜ頻繁に単語が出てくるのかまでは、まだ分からないんです。相場に関係ない要素を全て省いて、マーケットに影響を及ぼすファクターだけを取り出して今後のソニーの動向が分かるようになればAIだと思います。ただし、まだそのレベルには達していません。

井口 テキストマイニングは機械学習をして、そのレベルまで近づいているのかなと私は思っていましたが、まだまだということですか?

奥村 現時点ではビッグデータ処理までです。そこまではできると思いますが、ビッグデータを処理するにも時間がかかります。インターネット上からログを集めるだけで一日かかるはずです。膨大な量なので処理するのに何時間か必要で、反応するのが2日後くらいになります。これでは相場に間に合わないです。

井口 テキストマイニングも発展途上ということですね。

機械の気持ちになって相場と向き合うこと

井口 AIについてのお話を伺いましたが、今後は私のようなディーラー職がなくなり、AIに代えられるという話もあります。現在でもアルゴリズムが台頭して個人投資家が勝つことは難しいという声もありますが、今のお話を聞くとそんなに気にする必要はないということですね。

奥村 そうですね。勝ち続けてきた投資家を見ると、どこかで相場を張っているんです。ジョージ・ソロスのような著名な投資家も、バークシャー・ハサウェイのような機関投資家も同じで、自分の信じるやり方で相場を張っています。相場を張るのはAIではできないです。AIの領域の言葉だとヒューリスティックといいますが、要するに勘です。その部分がコンピュータには一番難しい処理なんです。ヤマ勘や霊感は人間一人一人の定義が違うので、なぜそのタイミングでトレードしたのかを言葉で説明するためにはその人の記憶や経験をたどらなければいけません。そのレベルまで到達すればコンピュータが相場参加者の勘を感知し、勘を使って相場を張るということがAIでもできるようになります。今はまだそのレベルまで達していません。

井口 なるほど。ちなみに1年前にフラッシュ・クラッシュがありましたが、その犯人はAIやアルゴリズムだといわれています。私は一理あると思っています。ロスカットが置かれているところが見えていて、そこが狙われた。なので、そこまで下がる必要のないクラッシュが起きてしまったのではないかと想像していますが、クラッシュへの対策はありますか?

奥村 下がるときに下がり過ぎ、上がるときに上がり過ぎる…というように、振り子がこれまでよりも大きく振れる傾向は確かにあると思います。ただ、それはAIではなく機械が自動で行うトレードによるものであることはほぼ間違いないです。それを見極めるには気持ちをリラックスさせることですね。「これは振れ過ぎているけど、どうせ元に戻るだろう。どうせ機械があたふたしているんでしょ」と思い浮かべていただければいいと思います。機械もしくは相場の気持ちになってみることが大切ですね。

井口 なるほど。確かにフラッシュ・クラッシュ時には独特な動きをしていたと思うので、その動きを見ていた経験が生かされてくれば「今は機械が作動しているのかな」と考えられるようになると。

奥村 そう思います。特にコロナショックの経験をされた方は今後につなげる良い経験ができたと思います。これを忘れないことです。

井口 そうですね。コロナショックでの相場を教訓にしていきたいと思います。ただ、人間は忘れてしまいますが(笑)。

奥村 2か月もたつと忘れてしまいますからね(笑)。

知りたい知識以外も勉強することが大切

井口 最後に、FX攻略.com(以下、FX攻略)の読者に向けてアドバイスをお願いします。

奥村 FX攻略にはいろいろなことが書かれています。例えば、金利動向についての記事が載っているときもありますし、テクニカル分析もさまざまな種類の手法が載っています。ただ、読者がこれら全てを読んでいるとは思えません。おそらく自分が読みたくない・興味のないところは読まず、読みたい・気になるところだけを読んでいると思います。だからこそ読みたくない記事を読むべきです。自分が知りたい知識はFX攻略を買わなくてもおそらく知っています。FX攻略にしか書いていない知識があるのに読んでいない人は多いと思うので、それらを読んで自分のものにすることをお勧めします。新しい道が開けますよ。明日も明後日も同じ知識だけではいけません。普段見ない部分を見ることが大事です。

井口 そうですよね。ファンダメンタルズが苦手な方も多いので、ファンダメンタルズ系の記事は敬遠する読者も多いと思います。

奥村 今は知識を仕込む時期だと思います。だからこそファンダメンタルズが苦手な人はFX攻略で知識を仕込むべきです。その他にもインターネットを使ったり本を買って勉強してみることですね。

井口 難しいところも飛ばさずに読んで、幅広い知識を身につけることが重要ですね。

奥村 難しいと飛ばしたくなる気持ちは分かりますが、逆に飛ばしたくなる記事を読んでみることをお勧めします。

井口 ぜひ読んで勉強してもらいたいと思います。本日はありがとうございました。

テキストマイニングAI

テキストマイニングAI

https://min-fx.jp/textmining/

トレイダーズ証券の「みんなのFX」では、為替ニュースを基にした売買シグナルで自動取引を行ってくれるFX業界初の自動売買ツール「テキストマイニングAI」を提供しています。設定は簡単で、たった3ステップで取引を行うことができ、一度運用を開始すればパソコンやスマートフォンの電源を切っても運用を続けてくれます。現在は4種類のストラテジーが用意されており、新しく追加される可能性もあります。今後の展開に期待したいところです。

奥村さんのYouTubeチャンネル

奥村さんのYouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCH6E6sGJIOEQJlM9_BmzIGg/

奥村さんのYouTubeチャンネルでは相場解説の動画を見ることができます。投資の基本的な部分やファンダメンタルズの観点から見た相場分析を展開しています。初心者は勉強になると思うので、視聴してみてはいかがでしょうか。

※この記事は、FX攻略.com2020年9月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

井口喜雄の写真

井口喜雄(いぐち・よしお)

トレイダーズ証券市場部ディーリング課。認定テクニカルアナリスト。1998年より金融機関に従事し、主に貴金属や石油製品のコモディティ市場を中心としたカバーディーリング業務に携わる。2009年からみんなのFXに在籍し、「米ドル/円」や欧州主要通貨を主戦場にディーリング業務を行う。ファンダメンタルズから見た為替分析に精通している他、テクニカルを利用した短期予測にも定評がある。最近では、みんなのFXの無料オンラインセミナーにも登場し分かりやすい講義内容が好評を得ている。さらにTwitterでは、プロディーラーが相場についてリアルな意見を発信しているので要チェック。

公式サイト:トレイダーズ証券

Twitter:https://twitter.com/yoshi_igu

YouTube:みんなのFX|トレイダーズ証券

奥村尚の写真

奥村尚(おくむら・ひさし)

1987年工学部修士課程修了。テーマはAI(人工知能)。日興証券で数々の数理モデルを開発。スタンフォード大学教授ウィリアム・シャープ博士(1990年ノーベル経済学賞受賞)と投資モデル共同開発、東証株価のネット配信(世界初)。さらにイスラエルのモサド科学顧問とベンチャー企業を設立、AI技術を商用化し大手空港に導入するなど、金融とITの交点で実績多数。現在はアナリストレーティングをAI評価するモデル「MRA」、近将来のFXレートをAI推計する「FXeye」、リスクとリターンを表示するチャート分析「トワイライトゾーン」を提供。日本の金融リテラシーを高めるため、金融リテラシー塾を主催している。
趣味はオーディオと運動。エアロビック競技を15年前から始め、NACマスター部門シングル9連覇、2016年シニア2位、2014~2016年日本選手権千葉県代表、2017~2018年日本選手権 マスター3準優勝。スポーツ万能と発言するも実は「かなずち」であり、球技も苦手である。座右の銘は「どんな意思決定でも遅すぎることはない」。

公式サイト:奥村尚の投資ブログ

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCH6E6sGJIOEQJlM9_BmzIGg

FX力を鍛える有名人コラム | FX業者 | Trader’s対談 | トレイダーズ証券 | 井口喜雄 | 人工知能・AI | 奥村尚 | 対談・座談会の最新記事
ミラートレーダーの「Tスコア」をどう活用するか[中里エリカ]
市場に漂うトリプル・ブルー期待とは[雨夜恒一郎]
高田資産コンサル流・ドル円分析(2020年10月18日)[高田智雄]
眞壁憲治郎のFX長者列伝<第二章> 第12回
インヴァスト証券サンドウィッチ間瀬が即解決!気になるFX Q&A|第5回 知ったかぶり卒業宣言シリーズPart2「量的・質的金融緩和」とは? その①
FX初心者に伝えたい資金管理のポイント – 犬トレーダーがるちゅーぶFXX[Masato Shindo]
ブレグジット再び緊張高まる[井口喜雄]
金融リテラシーが身につく YEN蔵の投資大学(アカデミア)|第8回[YEN蔵]
川崎ドルえもん流 時間統計論|第8回 月足予測8月編[川崎ドルえもん]
人工知能と相場とコンピューターと|第6回 新しい時代のメカニズム[奥村尚]
この不透明感の中での上昇は不可解[雨夜恒一郎]
犬的資産運用〜複利と単利のお話〜 – 犬トレーダーがるちゅーぶFXX[Masato Shindo]
なにわのチャート博士・神藤将男の中間波動攻略メソッド!|第12回 ダブルトップ/ボトムについて[神藤将男]
ロット数を同じにする〜単純で簡単なことを身に付けよう!〜[田向宏行]
スキャトレふうたのテクニカル道場|第2回 テクニカルはトレードの強力な武器になる!?