現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト 細田哲生 前編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]

現役為替ディーラーが、話題のアノ人と語り尽くす Trader’s対談|ゲスト 細田哲生 前編[トレイダーズ証券みんなのFX 井口喜雄]

長期間の研究を経て一目山人を承継した

井口 今回は私の尊敬する細田哲生さんということで、とても楽しみにしています。細田さんといえば一目均衡表で、細田さんの祖父の一目山人さんによって考案されたものです。細田さんは三世一目山人として一目均衡表の解説を行っていますが、まずは一目山人を承継するまでのご経歴と一目均衡表の概要について教えてください。

細田 一目均衡表は祖父の一目山人が昭和44年に自費出版という形で世に広めたことが始まりです。ちなみに私は昭和43年生まれなので、一目均衡表とほぼ同い年です。一目均衡表自体は昭和10年くらいには一目山人の頭の中にあったと思います。

 祖父は私が中学校2年生くらいのときに亡くなりました。亡くなった後は誰も一目山人を継がず、書籍だけは兜町の千代田書店で販売されているという状態でした。祖父の死後は、さまざまな人が勝手に一目均衡表を語り始めました。

井口 確かに一目均衡表を語る人は多いですよね。

細田 祖父の目が光っていたときは適当なことをいう人はいなかったです。本来は2代目を継ぐべき父親が私が20歳のときにがんになりました。余命いくばくもないという中で、一目均衡表をどのように残すかを考え、経済変動総研という会社を設立しました。経済変動総研では書籍の出版など、一目均衡表に関する事業を行っています。1992年くらいに本の再販を始め、それから一年たたずに父が亡くなりました。当時の私は一目均衡表自体については本を読んだことはありますが、相場のことは全く分からない状態でした。それから、一目均衡表の同人会の幹事をされていた竹内先生にご協力をお願いし、私が会社を引き継いで現在に至ります。引き継いだのは22歳のときで、35歳から一目均衡表を使った相場解説を始めました。

井口 長い期間をかけて一目均衡表や相場を研究してきたのですね。

細田 10年以上勉強しました。昔はPCがなかったので、チャートは手で書くことが当たり前だったんです。

井口 私も手書きしていました。

細田 私が20歳くらいのとき、過去のデータは図書館に行って新聞の縮小版から取っていました。当時は相場を勉強するためには自分でチャートを書きながら本を読んでいくのが普通で、書きながら相場のことを考え、それを本に書いてあることと照らし合わせるという往復の作業をこなす必要がありました。特に一目均衡表の書籍は教科書的な書き方をしていないので、かじった人がさまざまなことをいうのも仕方ないのかもしれません。とにかく勉強には時間がかかりました。

井口 一目均衡表の王道的な使い方を勉強していったのですね。

細田 みじめでしたけどね。

井口 みじめとは?

細田 重要なポイントが分かってもリアルタイムで相場を判断できないんです。後から見たら確かにそうなっていると分かりますが、実際の相場を追いかけて確信を持って買ってよい、売ってよいという判断ができない時間がものすごく長かったんです。「今の相場はどうなの?」という答えにたどり着けない時間が長く、それがすごくみじめでしたね。勉強会には若いトレーダーの方も参加していましたが、その人たちの方が圧倒的に経験があり、私自身も勉強になりました。

井口 一目均衡表を極めるにはものすごい勉強が必要なのですね。

妻子の遺品を燃やす

井口 次の質問です。一目山人さんのエピソードを教えてください。

細田 父親が転勤族だったので、10歳くらいまではそんなに会っていませんでした。11歳のときに東京に戻ってきてから、父が祖父から一目均衡表を学ぶため週に一回祖父の家に行くようになりました。祖父の印象としては、いつもニコニコしていましたね。叔母や昔の同人会の方に聞いた話で現在の時流に即した話が一つあります。祖父は私の祖母とは2回目の結婚なんです。一回目の結婚は20歳のときで、子どもが2人いたそうです。当時はスペイン風邪が流行していて、奥さんと子ども2人が亡くなったそうです。そのときに妻子の遺品を全て燃やしてしまったという話を叔母から聞いたことがあります。叔母は妻子がスペイン風邪で亡くなったという事情を全く知らなかったので「なんて情愛のない人だ」と思ったという話を聞きました。

井口 確かに亡くなった経緯を知らないとそう思いますね。

細田 当時の常識に照らして感染症対策として燃やすべきと考えたのでしょう。一目山人は一事が万事、何かこのためにすると決めたら本当に徹底する人だったみたいで、それが分かるエピソードです。また、お酒も好きで、午前中にビール三本、午後は日本酒三合の酒量は晩年でも変わらなかったみたいです。

井口 貴重なエピソードをありがとうございます。

106.7円が山場。下抜けると下落基調に

井口 三つ目の質問です。一目均衡表から見た現在のドル円は今後どのように動くと予想していますか?

細田 チャート①はドル円の月足です。ドル円に関しては2011年の安値と2015年の高値の意味合いをどのように捉えるかが非常に重要になります。

2003〜2020年にかけての一目均衡表ドル円月足チャート

出所:TradingViewによるUSDJPYチャート

井口 2011年というと10年前ですね。

細田 かなり前の相場になりますが、ドル円は1995年に80円割れをしており、2011年は再び80円を割ってきた相場です。一目均衡表で長期的に見れば下げも上げも三波動を成すという考えになります。80円割れは長期的に見ても下げの計算値が残っている状態なので、本来は80円割れをした時点で下げが強調される相場でしたが、2010年10月から26か月をかけて80円水準のもみ合いを続けていました。チャート①の赤文字の26の部分です。見ていただくと遅行スパンと相場実線が交わっていますが、一目均衡表では各線が交わるところは相場水準になりやすいんです。同時に80円水準が以前の安値と同じ水準であったという意味合いになります。

 特に2012年11月~12月は下げの三波動になるための推量時間帯に当たっていたところです。もみ合いを26か月続け、さらに基準線とも交わっています。そういった意味で2011年11月は歴史的な大底の可能性があるということになります。

 そして、2011年以降は上昇相場になったので、底値を中心とする対等数値を意識しなければいけません。2015年6月高値までの上昇は安値から45か月で、2007年6月以降につけた高値からの下落時間53か月よりも短い時間で価格更新しています。要するに、2015年6月までは上げの勢いが勝っているという状態です。

 次にこの2015年6月までの上昇が上げの第一波動なのか、そうではないのかが問題になってきます。上げの三波動の最大時間の間に一目均衡表の押し目としての上昇出発がないと、上昇継続は難しい側面があります。時間的には2016年6月を中心とする、2012年から2015年6月までの第一波動と2015年からの下げの第一波動の二波動分57か月が2021年2月まで残っていますが、その場合は下げの三波動の時間の処理の仕方によって、相場が出発しなければいけないポイントがあります。2015年6月高値から見た下げの三波動の時間は、2018年7月に一回経過しています。

 そして、2016年12月を起点とした場合の下げの三波動の時間、あるいは2018年10月を起点とする下げの三波動の時間を追いかけていかなければいけません。2016年12月から見た場合は最大時間が23か月で、ここからの23か月目は今年の8月になります。これは日足で見ると今年の7月23日に経過しています。この7月には2018年10月からの下げの三波動の時間も経過してきます。特に7月8日、7月15日近辺のところでどんどん経過しています。今年2月から3月にかけて大きな亀裂が入りましたが、2月の高値から89日、2019年4月高値から8月まで89日の下落なので、ここでも三波動の時間は経過しています。このような大事な時間帯を超えて相場が下げてくるようだと、下げの三波動の時間ばかりが残っている状態です。チャート①では水色の転換線106.7円水準のところを下支えにしています。この線は週足の基準線でもあり、日足を見ると今の価格位置だと下支えを期待できる線がありません。非常に微妙な位置ではありますが、2020年7月23日以降、106.7円を割ってくると下げが強調されてしまうことがはっきりしています。

井口 対談時点(7月20日)では際どい位置にあります。ここを下抜けると、下落は深くなるという考えですか?

細田 値段がどのようなつけ方をするか分からないところがあります。例えば、今年の2月からの下落や2019年1月の下落も亀裂が大きく入って、すぐに戻す形を見せていますが、そうなる可能性もなくはありません。長期的に見れば100円の水準は下げてくる過程でも重要ですし、2016年の安値は深くなりすぎましたが、2015年以降の100円はしっかりとした水準だと思います。これを割って下げてくるとは考えませんが、下げの時間だけは残っている状態です。

井口 この号が発売されるころにはどうなっているか分かりますね。ありがとうございます。しかし、われわれが考えている一目均衡表とは違いますね。時間をここまで周到に考えている人は少ないのではないかと思います。

(対談は次号に続きます)

※この記事は、FX攻略.com2020年10月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

細田哲生の写真

細田哲生(ほそだてっせい)

株式会社経済変動総研。三世一目山人。一目山人の遺志を引き継ぎ、正しい一目均衡表の使い方を普及することに従事。経済変動総研主催の「一目均衡表倶楽部」にて、一目均衡表による相場解説、罫線講座を執筆。毎週月曜日ラジオNIKKEIマーケットプレスにて「日経平均一目均衡表から見たテクニカル分析」を放送。

公式サイト:一目均衡表公式ホームページ|株式会社 経済変動総研

Twitter:https://twitter.com/Tessei_Hosoda

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