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再び活発化の兆しを見せる金相場[佐藤りゅうじ]

株式市場が好調の中金価格にも変化あり

2017年は株式市場の上昇が目立った一年でした。この原稿を書いている時点で年初来リターンをみると、ダウ平均株価は19.20%、日経平均株価が17.98%の上昇となっています。

※この記事は、FX攻略.com2018年2月号の記事を転載・再編集したものです

今年の株価指数の値動きをみると、欧米のそれは年初からしっかりと推移し、春には多少緩んだものの、その後は再び地合いを引き締め、史上最高値更新という文字が幾度となく踊りました。一方、日経平均株価を含め日本の株価指数は夏の終わりごろから、この流れに追随し始め、9月以降の上昇が目立っています。そんな中、ドル建ての金価格が再び動き出しそうな気配が漂っています。今回は、金にスポットを当てていきたいと思います。

チャート①を見ると分かる通り、今年のドル建て金価格は株式市場と同様に年初から堅調となりました。年初は1150ドル前後で取引が始まり、4月17日には1295ドルまで上昇。その後、1200ドル前半〜1300ドル手前でのレンジ取引を経て、9月8日には1356ドルまで上昇しました。年初から15%以上の上昇となり、この間は日経平均株価のパフォーマンスを上回りました。9月中旬以降は、米債利回りの上昇を背景としてドル買い意欲の高まりなどから、1260ドル付近まで軟化しましたが、この原稿を書いている時点では約1か月におよぶ1265ドル前後〜1290ドル前後の狭いレンジ取引から上放れ、1300ドル台回復が迫っています。

金利上昇局面で下落するも…

2017年の金相場の特徴は、リスクヘッジの買いが入っていることだと考えます。今年、金価格が大きく下がった月は3月、6月、9月です。3月と6月は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに動くとの思惑が働いたことが背景にあります。そして、9月は米株が一段と地合いを引き締め、米債利回りが上昇したことが挙げられます。つまり、教科書通りではありますが、米債利回り上昇局面では今年も金は軟化していました。

ただこれまでと違うのは、米利回りの上昇局面では軟化しますが、そこが結果的に良い押し目になって再び上昇していることです。これはイールドカーブのフラットニングにもつながるのですが、米長期債の利回りがなかなか上昇してこないことが背景にあります。

米10年債利回りは、ダウ平均株価が史上最高値を更新しているにもかかわらず、昨年12月15日の2.641%、今年3月14日の2.629%でダブルトップを形成し、9月8日には2.016%まで下落。昨年11月以来の2%割れが目前となりました。その後、米経済指標の好調さや株価上昇を受けて、10月27日には2.477%まで上昇しますが、2.5%台回復には至らず、再び2.3%台に水準を引き下げています。

これまで、株価が上昇すると債券が売られ(金利上昇)、金利上昇を嫌気して金が売られるということがよく起こりました。ただ、現状の株価が史上最高値を更新するような上昇をしても、長期金利が上昇せず(債券が売られず)、そして金が買われるのは違和感があります。

リスクヘッジの金買い

この違和感の正体は、投資家の不安心理の非常な高まりでしょう。ダウ平均株価は最高値を更新し続けるものの、米トランプ大統領の政策遂行能力への不安は拭いきれません。減税法案に対する期待も萎んでいます。このような状況下、機関投資家は株を買うと同時に金をリスクヘッジで買っているとみられます。

また、北朝鮮問題が長期化しているのも気掛かりです。先日も中国共産党の習近平総書記の特使として北朝鮮を訪れた宋濤・党対外連絡部長は金正恩氏に会えなかったそうですが、北朝鮮が8月末に立て続けにミサイルを発射した直後に金価格は急騰しました。最近は「有事の金売り」といわれるほど、このような突発的な地政学リスクの高まりで金が急騰しても、すぐに元の価格に戻ることが多かったです。しかし、このときは元の価格に戻すのに約1か月を必要としました。このことも、今までとは違うと感じさせます。

2018年の金相場は1400ドル台回復か

2018年の金相場ですが、北朝鮮問題やトランプ政権の政策遂行能力が劇的な改善を見せなければ、ジリ高調の展開が予想されます。また、米国政府が本質的には強いドルを望んでいないとみられることも支援材料になるでしょう。来年は1400ドル台を回復していく可能性が高そうです。

※この記事は、FX攻略.com2018年2月号の記事を転載・再編集したものです

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