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ドルが消去法的に買われる展開へ[雨夜恒一郎]

FX攻略.com ズバリ!今週の為替相場動向 2020年2月10日号

先週のドル円相場は

新型コロナウィルスの感染拡大が懸念される中、週初は108円台前半の安値圏でスタートしたが、中国が大規模な資金供給を実施したことを好感して株式市場が反発すると、ドル円も力強く水準を切り上げる展開となった。「中国や英国などで新型コロナウィルスに対応する薬が開発されている」との一部報道や、「中国が約750億ドル相当の米国からの輸入品に対する関税率を14日から半分に引き下げる」との発表も追い風となり、一時110.02円まで上昇した。

まず悲観、やがて楽観へ

筆者は1月27日付のコラムで「悲観のピークが過ぎた後は悲観と楽観が交錯するもみ合いの時間帯に移行し、最終的にはV字型に元の水準に戻る」と予想した。また前回2月3日のコラムでは「春節明けの中国株大幅下落がセリングクライマックス」と想定した。実際春節明けの上海総合指数の値動きはこうなった。

上海総合指数

上海総合指数 出所:NetDania

連休明け直後こそ10%近い暴落となったが、その後は下げ幅を縮小する展開となっている。中国国内の患者数が日々増え続ける中で、中国株はむしろ反発上昇しているのだ。ウィルスの感染拡大とサプライチェーンの分断で中国経済に重大な下押し圧力がかかることは、市場も当然承知している。ということは、市場はウィルスによる経済的損失がリカバー可能と読み切ったことになる。

感染が現在想定されている範囲を劇的に超えない限り、先週以上の上海株下落は考えにくい。そして今週もこのまま回復が続き、春節前の水準3000ポイントを回復すれば、センチメントは一気に楽観に傾くだろう。米国株はすでに先週史上最高値を更新し、日経平均も急落前の水準を回復している。流れからすれば十分可能なシナリオだ。

確かに新たな買い材料はない

ドル円もすでに110円にタッチし、コロナウィルスの感染拡大前の水準をほぼ回復した。では今後ここからさらなる上昇はあるだろうか。識者のコメントを読むと、「ドルに新たな買い材料はなく、110円からさらに上昇するとは思えない」との見方が目立つ。確かに、米国債利回りはかなり下げているし、年内のFRBの利下げを予想する向きも増えている。ドル自体に新たな買い材料がないのは確かだ。

消去法的ドル買い

しかし為替相場というものは、通貨同士の相対的な力の差で決まる。たとえドルに買い材料がなくても、ほかの通貨と比べて相対的にマシであればドルは買われることになる。今後中国の景気悪化やサプライチェーン分断の悪影響をもろに受ける欧州、オセアニア、日本と比べて、米国が受ける打撃ははるかに小さい。先週発表された一連の米国景気指標を見る限り、米国がただちにリセッションに陥るリスクはなさそうだ。米国は相対的に見て最も安全な投資先であり、ドルは消去法で買われる可能性が高い。また株式市場が上昇しリスクオンとなれば、安全通貨の筆頭である円が相対的に売られやすくなる。今週もドル円は上値を試す展開を予想する。

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