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「大人の経済」基礎講座

FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座|第8回 株式市場と為替市場の関係を理解する[雨夜恒一郎]

今回のテーマは「株式市場と為替市場の関係」です。株価はファンダメンタルズや経済指標とは分野が異なりますが、投資家心理へのインパクトが極めて大きいため、近年では為替相場に対して最も大きな影響を及ぼす要因となっています。ファンダメンタルズ分析を行うものにとって重要な材料になりつつある株式市場について、ここでしっかり学習しておきましょう。

※この記事は、FX攻略.com2018年1月号の記事を転載・再編集したものです

【FXトレーダーのための「大人の経済」基礎講座[雨夜恒一郎]】
第1回 ファンダメンタルズのきほん
第2回 金利のきほん~前編
第3回 金利のきほん~後編
第4回 金利動向から為替相場を読む
第5回 伝統的金融政策と非伝統的金融政策
第6回 米国経済指標の攻略法〜ソフトデータで先を読む〜
第7回 インフレとデフレは結局どちらが「買い」なのか?

為替市場における「株価」とは「株価指数」のこと

一口に株価といっても、世界中の株式市場には膨大な数の株式が上場されています。われわれ為替市場の参加者には、それこそ星の数ほどもある個別株の値動きをいちいちチェックする時間はありません。そこで活用されるのが株価指数です。為替市場で「株価」といえば、普通は株価指数のことを指します。

われわれが真っ先にチェックしておかねばならないのは、米国の代表的な株価指数であるダウ工業株平均(NYダウ)です。株式市場の参加者にとって米国の株価指数といえば、より多くの銘柄をカバーするS&P500種やラッセル指数ですが、NYダウはニュースで最初に取り上げられる指数であり、何といっても誰でも知っているネームバリューがあります。為替をメインに取引する人なら普段はNYダウをウォッチし、余裕があればハイテク株が中心のナスダック総合指数をチェックしておけば良いでしょう。

日本の株価指数は、日経平均をウォッチしておけば十分です。ただし東京市場での値動きだけでなく、夕方以降の大阪証券取引所ナイトセッションやシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されている日経225先物にも目を配っておく必要があります。前日のCMEの日経225先物がどう引けたかをチェックしておけば、当日の東証がどう寄り付くかおおよそ分かります。

また、NYダウも先物がCMEグローベックスで取引されており、アジア・欧州時間でも大きく動くことがあります。これらの指数や先物をリアルタイムで見られるポータルサイト(例:図①)がいろいろありますので、利用してみてください。


http://realtime-chart.info/

ちなみに米国や日本の株価指数と比べると、欧州や他地域の株価指数は為替市場への影響は小さめです。初級者の方は、まずは日米の株式市場をしっかりチェックする習慣をつけておけば良いでしょう。

日本株上昇=円高になるとは限らない 

では、株価はどのような経路を通じて為替相場に影響しているのでしょうか? 例えば日経平均が上昇した場合、円は買われるでしょうか? 外国人が日本株を買えば円買いが発生するから円高になる? …確かにそういう時代もありました。しかし今は違います。東証第1部の売買代金は通常1日あたり2兆円から3兆円といった水準ですが、仮にその大半が外国人投資家の注文だとしても、日々何兆ドルもの取引が行われる為替市場においては、相対的に見て微々たるものです。それに外国人投資家の株取引は為替リスクを除去するためにヘッジ付きで行われることが多く、為替市場の需給に与えるインパクトはさらに小さくなります。

現代の「ゲームのルール」では、逆に「株高=円安」となります。為替市場にとって重要な要因は、株取引にかかわる直接的な売買・需給ではなく、株価が上昇・下落することによって生じる投資家心理の変化なのです。

リスクオンとは

例えば日経平均が大幅に上昇したとすると、日本株を大量に保有している生保など機関投資家は含み益が増加して懐が温かくなります。リスクを取って投資をする余裕ができ、外国債券などへの投資を増やすこともできるようになるわけです。このリスクに対する許容度が拡大した状態を「リスクオン(リスク選好)」といいます。

株価が上昇し、市場心理がリスクオンの状態になると、為替市場では高金利通貨や資源国通貨、新興国通貨などハイリスクな通貨が買われ、対照的に低金利通貨が売られるという展開になります。低金利通貨を調達して高金利通貨を買う取引「キャリートレード」が人気化するのです。したがって株高になると、低金利通貨の代表格である円はいち早く売られることになります。

リスクオフとは

逆に、株価が大幅に下落したとすると、投資家の行動は消極的・防衛的になり、リスクのある投資やポジションを縮小・敬遠することになります。このようにリスクに対する許容度が低下した状態を「リスクオフ(リスク回避)」といいます。

株価が下落し、市場心理がリスクオフの状態になると、リスクオンのときとは逆に高金利通貨などハイリスク通貨を売って安全通貨に逃避する動き、もしくはキャリートレードを巻き戻して調達していた低金利通貨を返済する動きが強まります。株安になると、安全通貨・調達通貨の代表格である円は真っ先に買われることになるのです。

ちなみに主要通貨をリスクが高い順に並べてみると、以下のようになります。

(1)南アフリカランド・トルコリラ・ブラジルレアルなど新興国通貨
(2)豪ドル・NZドル
(3)ポンド・カナダドル
(4)ユーロ
(5)米ドル
(6)円・スイスフラン

リスクが高いほど株高に強く、低いほど株安に強い通貨となります。以前は安全通貨といえば円とスイスフランだけでしたが、近年では米ドルも安全通貨に近い立ち位置になっています。最近のドル円相場はボラティリティが小さくなっていますが、これは安全通貨のドルと円が同じ方向に動いてしまうことが一因です。さらに最近ではユーロも安全通貨に分類されることがあり、ユーロドルやユーロ円のボラティリティも大幅に低下しています。

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好循環と負の連鎖

相場付きにもよりますが、株式市場の動向、リスクオン・リスクオフに最も敏感な通貨は円です。図①はアベノミクス相場がスタートした2012年以来のドル円と日経平均(赤線・左目盛)を重ねたものですが、両者の連動性が極めて高いことが見て取れると思います。2012年末から2015年にかけては、日経平均の上昇を受けてリスクオン型の円安になり、円安を好感して日経平均がさらに上昇するという好循環が起こりました。逆に2015年後半から2016年にかけては、日経平均の下落を受けてリスクオフ型の円高になり、円高を懸念して日経平均がさらに下落するという負の連鎖が起こりました。

本稿執筆時点(2017年10月下旬)では日経平均が2万1千円を突破し21年ぶりの高値をつけていますが、ドル円は112−113円台とちょっと物足りない動き。今後リスクオン傾向が強まり、日経平均との乖離を埋めに行くのかどうかが注目されます。 

リスクオン・オフの程度を示す恐怖指数


出所:http://www.stockcharts.com/

市場がリスクオンの状態にあるのか、リスクオフの状態にあるのかを簡単に知る方法があります。それはボラティリティ・インデックス(VIX)を見ることです(図③)。VIXは米国個別株を対象とするオプションのボラティリティを指数化したもので、株価が大きく変動(主に下落方向)し、恐怖に駆られた投資家が保険としてオプションの購入に走ることによって上昇します。このためVIX指数は別名「恐怖指数」とも呼ばれています。

逆に、株価が上昇もしくは保ち合い状態にあるときは、投資家は不安を感じることがなく保険を買う必要もないため、VIXは低水準となります。VIXが跳ね上がっているときはリスクオフ、VIXが10を下回っているときはリスクオンとなっていることが多いので、常にチェックしておくと良いでしょう。

世間を騒がすようなニュース(例えば北朝鮮絡みなど)が出ても、VIXが反応していないときは、そのニュースの重要性を疑う必要があります。逆に一見何もニュースが出ていないにもかかわらずVIXが急騰しているときは、われわれが気づいていないところで何か重要な事案が起こっている可能性があり、警戒を強める必要があります。

株・金利・為替の三角関係 

株価は金利動向を通じて為替市場に影響を及ぼすという経路もあります。株と債券はどちらも投資家にとって重要な運用対象ですが、その性格は正反対です。例えば、株は元本保証がないのはもちろんのこと、業績次第では価値がゼロにもなり得る、ハイボラティリティ・ハイリスク商品の代表格です。これに対して債券は、基本的に償還期限が来れば元本が戻ってくる元本保証商品であり、ローボラティリティ・ローリスク商品の代表格です。

株式は、企業業績の改善やマクロ経済の成長により無限に値上がりする可能性があります。景気が強くなり物価が上昇するときには、株価も総じて上昇するものです。このため株式はインフレに強い資産であるといえます。これに対して債券は、インフレに弱い資産です。債券の償還額は元本より多くなることはなく、インフレになるとその価値は目減りしてしまうからです(例外として、インフレ率に応じて元本が変動する「インフレ連動債」という債券もあります)。

また景気の回復期には収益性の低い債券を売って、値上がりが見込める株に乗り換えるという投資行動が起こり、景気後退期にはその逆が起こります。したがって、一般的に株価が上昇するときには債券は売られやすく(金利は上昇)、株価が下落するときには債券は買われやすい(金利は低下)という傾向があります。

そして米国債利回りとドル円は正の相関関係があります。米国債が売られ利回りが上昇するとドル円は買われる傾向にあります。反対に米国債が買われ利回りが低下すると、ドル円は売られる傾向にあります。つまり、米国株が上昇するときは市場心理がリスクオンとなる上、米国債が売られ利回りが上昇するため、ドル円は二重のサポートを受けることになります。逆に米国株が下落するときは、リスクオフと米国債利回りの低下という二重のハンデを背負うことになるのです。

為替市場は常に他の市場を注視しつつ、他の商品に影響を受けながら動いていますが、とりわけ株式市場からは計り知れない影響を受けているということがお分かりいただけたかと思います。

第8回まとめ

① 日米株式市場(米国はNYダウ、日本は日経平均)のチェックは必須
② リスクの高い通貨ほど株高に強く、低い通貨ほど株安に強い
③ 株式市場の動向やリスクオン・オフに最も敏感な通貨は円
④ 株価は金利動向を通じて為替市場に影響を与える

※この記事は、FX攻略.com2018年1月号の記事を転載・再編集したものです

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