米雇用統計は、為替相場を大きく動かす月1回のビッグイベントといわれており、プロ・アマ問わず世界中の投資家が注目する経済指標です。しかし、ここ最近は米雇用統計の様子に大きな変化が生じているようです。今回は米雇用統計の過去と現在について、水上紀行さんに考察してもらいます。
※この記事は、FX攻略.com2018年4月号の記事を転載・再編集したものです
発表時に参加するのは投資家ではなく投機筋
原則として毎月、月初の金曜日に発表される米雇用統計は、ここ20年余りずっとマーケット全体で最注目の経済指標でした。それこそ米雇用統計発表当日は、世界中のディーリングルームにはディーラーたちが待機し、一種お祭りのような雰囲気がありました。それが、ここのところ様子が違ってきています。
最近の米雇用統計にリアルタイムで参加しているのは投機筋ばかりで、以前のような投資家の存在が皆無になってきているということです。投資家が参加すれば長期的な視野から相場を見ますが、投機筋ばかりですと短期の売買に集中するためトレンドは出にくく、むしろ短期の「往って来い」の相場になりがちです。
最近の投資家は一つの指標結果で結論を出すのではなく、複数の指標をしかも時系列的に見ることで方針を決めており、つまりは極めて慎重だといえます。そうなるとマーケットに残るのは投機筋ばかりとなるわけです。
トレンドが生まれず荒い相場になりやすい
これにより何が起きるかといえば、それは投機筋の宿命が顕著になるということです。投機筋の宿命とは、すなわち投機筋は売ったら利食いか損切りのためにいずれ必ず買わなくてはならないということです。これは逆も同じで、投機筋は買ったら利食いか損切りのためにいずれ必ず売らなくてはなりません。こうした宿命がある以上、そう長くはポジションを持ちきることはできません。
したがって、相場がトレンド性のある相場になるためには、長くポジションを持つ投資家や、売ったら取引が終わりの輸出企業、買ったら取引が終わりの輸入企業などの存在が欠かせません。ところが最近の米雇用統計の発表にあたっては、こうした資本筋や実需は様子を見ているだけで参加する雰囲気がなく、参加しているのは投機筋ばかりです。
これは現在の米国が完全雇用となっているため、雇用自体の指標の重要度が落ちてきているからともいえます。そして投資家が過去にも増して、結論を出す最終段階でもなければ一つの指標で投資方針を決めることがまれになったのも一因です。
こうした理由から、米雇用統計発表後にトレードに直接参加しているのは投機筋ばかりで、相場が荒くなっています。また「荒い」といっても、既に申し上げたように投機筋の宿命があるため、原則、その月の最初の金曜日に発表となる米雇用統計は、とりあえず結果に対して素直に順張り方向へ進もうとします。しかし、それが思うように進まなければ今度は逆方向を試し、本来の雇用統計が示唆している方向性など無視してしまいます。
そしてニューヨーク・クローズに向けては、指標通りであっても指標通りでなくても一方向に進み、高値引けや安値引けで終わりやすいといえます。これは単なるトレーダーの意地でしかなく、翌月曜になってもさらに意図した方向に進んでいなければ、早速投げてくるものだと見て良いと思います。
要するに、米雇用統計は注目されて20年以上たち、完全に金属疲労(材料がもろくなって、やがては破壊される)となっているのではないでしょうか。
関心が集まるテーマは各中央銀行の金融政策
こうなってくると、米雇用統計に代わるべき指標が別に必要となります。そこで私は、米貿易収支が注目される指標になるのではないかと考えたわけです。なぜなら、今トランプ大統領は通商問題に関心があり、米国の貿易赤字の原因となっている中国・日本・ドイツ・メキシコに圧力を加えていたからです。しかし、マーケットは米貿易収支に対して全く関心を示しませんでした。
そのことから分かったのは、最近のマーケットは各先進国の中央銀行における金融政策に関心を寄せていて、個別の経済指標にはあまり関心を示さなくなっているということです。昔であれば、米雇用統計はもちろんのこと、重要視された経済指標発表時にはディーラーはディーリングルームに残っていたものでしたが、今やそういうことも皆無です。その代わり、中央銀行のスタンスには皆さん神経を尖らせているのです。
大げさにいえば、個別経済指標重視の時代から各国中銀の政策スタンス重視の時代に変わり、「往って来い」の米雇用統計はやはり過去の遺物になってきたということ。したがって、今、中央銀行は何に注目し、そのためにどういった金融政策を取ろうとしているのかを知ることが大切です。また、各中銀の方向性はそろってきますので、個別の中央銀行の方向性だけでなく全体的な方向性を知ることも大事だと思います。
※この記事は、FX攻略.com2018年4月号の記事を転載・再編集したものです
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