定番のテクニカル指標、移動平均線は、簡単な概念のツールであるために、その本当の使い方を学ばず、いいかげんに扱われてしまっている傾向が…。この企画は、そんな現状を変えるべく、テクニカルアナリストのマックス岩本さんに、移動平均線の基本を整理してもらうことを意図しています。今回のテーマは、複数本分析です。
※この記事は、FX攻略.com2016年12月号の記事を転載・再編集したものです
移動平均線の複数本分析とは?
前号では、移動平均線分析が広く知れ渡るきっかけともなったグランビルの法則についてお話ししました。移動平均線を取り上げて4話目となる今回は、さらに踏み込んだ部分について解説していきたいと思います。
なお今回取り上げていくのは「移動平均線の複数本分析」です。単線でも有用な移動平均線ではありますが、短期と中期、または中期と長期など、異なる期間の移動平均線を複数本用いることで、さらにマーケットを多面的に捉えることが可能となります。
移動平均線を1本用いたときに分類できるトレンドの種類は、上昇トレンドか下落トレンドかのいずれかしかありません【図1参照】。良くいえばシンプル、悪くいえば大雑把です。単に上昇トレンドといっても、急激な上昇トレンドもあれば、穏やかな上昇トレンドもあるからですね。
またこれは下落トレンドにおいても然りです。そのため、欲をいえばトレンドをもう少し細分化して把握したいと考えるのが、トレーダーの心情ではないでしょうか。そんな心情を汲み取り、役に立ってくれるのが移動平均線の複数本分析です。
とはいえども、本数が増えれば増えた分だけ手法も複雑化するため、ただ闇雲に本数を増やせば良いというものでもありません。しっかりと目的を持って表示本数を決定することが大切です。なお今回は2本線分析として話を進めていきます。
複数本分析で分かること
それでは、移動平均線2本で分析することで具体的に何が分かるのでしょうか【図2参照】。移動平均線を2本用いただけでも、マーケットを六つの局面に分類することが可能となります。順に見ていきましょう。
まず、分かりやすいところで①と④について触れていきます。①は価格が短期線と中期線を上抜いているため、短期と中期の両観点から上昇トレンドであると認識できる局面です。売買戦略として売りは禁物であり、積極的に買い場を探っていきたい局面です。その反対に、明確に下落トレンドであることが確認できるのが④の局面です。当然、基本戦略は売りということになります。
では、残る②⑤、③⑥はどう解釈すべきでしょうか。②の局面は短期線の観点からは下落トレンドであるものの、中期線の観点からは上昇トレンドであると認識できます。つまり、売り方と買い方が拮抗しているもち合い局面であることから、トレンドとしてはニュートラルであると認識すべきです。売買戦略としては買いでも売りでもなく、様子見が望ましいでしょう。
⑤についても同様といえます。今度は短期線の観点からは上昇トレンドであるものの、中期線の観点からは下落トレンドです。いずれにしても、方向性一致は確認されておりませんので、こちらもニュートラルであり、方向性がはっきりするまでは様子見が得策といえます。
トレンドの信憑性を判断する基準になる
では最後に③⑥の局面です。まず③は、価格が短期線と中期線を共に下抜いているという点では④と同様に下落トレンドであると認識できます。しかし、2本の移動平均線の並びに注目すると若干異なることがお分かりいただけると思います。④は価格と移動平均線の位置関係が、下から順に価格→短期→中期であったのに対して、③は価格→中期→短期という順番です。
2本の移動平均線のクロスをもって「トレンド確定」とするならば、④は明確な下落トレンドであるのに対して、③は潜在的な下落トレンドと認識すべき局面です。その分類こそ下落トレンドだということで同じではありますが、トレンドの信憑性や、トレンドの若さという点では若干の違いがあります。しかしながら、売買戦略としてはどちらも売り場を探っていくのが望ましい局面であることに違いはありません。
そして、最後の⑥は③の反対になりますので、潜在的な上昇トレンドの局面であり、基本戦略は買いということになります。
いかがでしたでしょうか。単線ではなく、複数本でマーケットを見通すことによって、トレンドを細分化することができる他、トレンドの信憑性の度合いも把握することができます。
図3では、①から⑥まで全ての分類が確認できます。価格、短期線、長期線の3種類を用いて解説したとはいえ、実戦ではそれぞれの距離感が異なり、慣れないうちは局面を分類するにも手こずったり間違えたりすることもあるかもしれませんが、こればかりは慣れが必要。どうぞ根気強く、焦らず、そして冷静に判断し、トレードに活用していただければ何よりです。
次号で移動平均線の解説を完結します。複数本分析ならではの活用方法や実戦での注意点をお伝えしますので、ぜひお読みくださいね。
※この記事は、FX攻略.com2016年12月号の記事を転載・再編集したものです
【移動平均線を理解する[マックス岩本]】
・その1|パラメーターの種類について
・その2|単線分析について
・その3|グランビルの法則
・その4|複数本分析
・その5|3本線分析
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