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FX力を鍛える有名人コラム

荒野浩の相場を極める相場を楽しむ|第1回

荒野浩の相場を極める相場を楽しむ|第1回

連載開始にあたって

 自分の半世紀の経験で学んだことをこれから数回にわたって、連載で述べていきたいと思います。基本中の基本は当然のことながら現役時代に身につけたものですが、実戦で役に立つ応用問題的な部分は組織を離れてから、取得したものの方が多いようです。

 この連載を読んでもダメだったら、株式投資はやめましょうというぐらいの心意気で書きます。個人投資家の方々は楽しみにしていてください。

数字の正確性は市場分析の基本

■相場における1か月は25日ではなく20日ですし、3か月は75日でもなく60日です

 多くの株式市場関係者は相変わらず25日移動平均線、75日移動平均線を使い続けています。私はこの人たちを「守旧派」と呼んでいます。1か月を20日平均、3か月を60日平均として分析しているのは、私を含めて数名にとどまると推定されます。

 私が証券の世界に足を踏み入れた1970年代は、東京市場の立ち合い日数が年間305日でした。土曜日も毎週立ち合いがあり、国民の祝日も現在の半分程度でした。当然ですが、1週は6日、1か月は25日、3か月は75日、6か月は150日となります。

 ところが、21世紀の年間の立ち合い日数は平均して245~246日(2019年は241日)と、年間の立ち合い日数はこの半世紀で60日ほど減少しています。その結果、1週は5日、1か月は20日、3か月は60日、6か月は120日ということになります(表①)。

1970年代と21世紀の立ち合い日数変化一覧

1970年代と21世紀の立ち合い日数の変化を表にしてみると、21世紀は日数が減少していることが一目で分かります。移動平均線だけでなく、テクニカル指標は手法や相場によってパラメーターを変えてみることが重要になってきます。

■株価の決定要因である企業業績と市場分析の計算期間が異なる「愚かさ」かつ「時間関係」に無頓着すぎる

5、20、60の移動平均線を表示させた2019年の日経平均株価

出所:TradingViewによるNI225チャート

 多くの市場関係者が勘違いをしていることがあります。25日や75日は100日や200日のようにその日数そのものに意味があるのではなく、25日は1か月、75日は3か月であったから意味を持っていたのです。

 今や、相場において25日は1か月と1週間であり、75日は3か月と3週間です。1週間が5日であることは誰の目にも明らかなため、多くの市場関係者は移動平均線のパラメーターを6日から5日に変えました。しかし、25日移動平均線、75日移動平均線は今でも使用しています。株価はサイクル的に1か月、3か月で動く傾向があります。市場分析のベースとして3か月と3週間の75日移動平均線を使用する意味は全くありません。

 マクロの経済指標や企業業績の計算期間は1か月、3か月、6か月、1年であるのに対し、市場分析の計算期間は全く異なるという「愚かさ」を数十年にわたって続けていることになります。昭和30年代の前半に重さや距離を測る基準が「尺貫法」から「メートル法」に変わりました。今、自分の体重や身長を貫匁・尺寸で申告する人がどこにいるでしょうか。25日移動平均線、75日移動平均線を使って相場分析をしている人はその程度のレベルです。

 私はセミナーなどでよく「ほとんどの人が25日移動平均線、75日移動平均線を使って分析しているのに、20日移動平均線、60日移動平均線を使っていると、不利になりませんか」と質問をされます。その質問には「正しくない数値で分析している人たちは間違うに決まっているわけで、当然のことながら、20日移動平均線、60日移動平均線を使っている少数派が勝つことになります」と答えるようにしています。

 株価循環の基本は「時間関係」です。多くの人がその時間関係にあまりに無頓着すぎることに驚くばかりです。

荒野さんが推奨しているパラメーター設定の移動平均線をMT4のドル円5分足に表示

(編集部注)FXにおける移動平均線のパラメーター:荒野さんが推奨しているパラメーター設定の移動平均線をMT4のドル円5分足に表示してみました。赤色の線が5日移動平均線、青色の線が20日移動平均線、紫色の線が60日移動平均線です。FXにおいても移動平均線は5、25、75のパラメーターが一般的ですが、日数を変化させることで新たな分析方法や手法を発見できると思われます。試してみてはいかがでしょうか。

分析データとして何を重視するか

 私が主に分析対象とするデータは以下の通りです。

  • 日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)、ドル円相場などの価格指標
  • 価格の変動幅や変動率
  • 市場のエネルギー指標として売買代金、売買高、売買単価、時価総額
  • 前日比の騰落銘柄数(値上がり数、値下がり数、変動なし)
  • RSI
  • 新高値数、新安値数
  • 空売り比率や日経平均ボラティリティ・インデックス(日経平均VI)など相場の安定・不安定度を測る指標
  • 株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)、利回りなどの投資指標
  • 米国債利回り

 分析の基本は「加減乗除」することであり、算出した答えを再び加減乗除し、複合レシオをよく作ります。

 附随データとしては、以下を対象とします。

  • 海外株式:NYダウとナスダック総合指数、そしてS&P 500(チャート①)の米国主要3指数、フィラデルフィア半導体株価指数(SOX指数)、ダウ・ジョーンズ輸送株平均、ダウ公共株15種平均、ドイツ株価指数(DAX)、上海総合指数(チャート②)
  • 商品市況:CRB指数ロンドン銅、WTI原油先物、NY金先物など
S&P 500のチャート

出所:TradingViewによるSPXチャート

上海総合指数のチャート

出所:TradingViewによるSHCOMPチャート

 不正確なデータは意思決定の誤りにつながります。少なくとも期間・日数は25日・75日でなく、20日・60日を基準にします。1か月、3か月を正確に認識することから分析は始めるべきです。

■株価指標

 日経平均株価とNYダウについては4本値を日々取得します。まずは価格指標の分析です。日経平均株価を例として、日ごとに把握すべきデータは以下の通りです。

  • 移動平均株価…5日、20日、60日、100日、120日、200日、1年

 それぞれの移動平均株価の水準と方向性(傾き)を常に意識します。短期・中期・長期の移動平均株価同士の位置関係の把握も重要になります(短期は5日と20日、中期は20日と60日、長期は60日と120日の移動平均線)。

 短期移動平均線同士のクロスは短期の投資家がタイミングを計る上では重視されますが、4~5割の確率で“ダマシ”というか、数日で終わる場合が多いので、見極めが必要になります。

 中長期の移動平均線は60日線から1年線まで「向き」が重要になります。クロスであれば、60日線と120日線、月足でいえば、3か月線と6か月線、週足だと、13週線と26週線が「基調」「トレンド」を見極める上では重視されます。私が基調判断する上で最も重視するのは1年移動平均線の「傾き」です。

■1か月移動平均線からの乖離率

 価格指標で使い勝手がいいのは20日移動平均線からの乖離率です。天井と底を見極める上でも、「堅調相場」あるいは「軟調相場」の持続性を判断する上でも重要です。

■変動幅と変動率

 20日平均の変動幅(ボラティリティ)と、その変動幅を20日平均で除した変動率も株価が急変動のリスクを内包しているのか、安定的に推移すのかの判断材料として、使用します。詳しい価格指標については次回で詳述します。

■価格指標以外のデータ(複合レシオを含む)

  • 売買代金・売買高

 かつては市場エネルギーは株価に先行するといわれて重宝されましたが、今の分析においては以前ほど重視していません。指数の銘柄入れ替えに伴う商いや特別清算値算出日の商いなどをはじめ、ノイズが多すぎて、かつてほど有効ではないからです。

  • 騰落レシオ

 当然20日で算出しますが、1か月サイクルと3か月サイクルの強弱を判定するために60日平均も算出します。20日平均は天井・底の測定に有用で、特に底値を特定するときにはピンポイントで有効です。騰落レシオの20日平均と60日平均の和は堅調な相場が安定的に推移しているかどうかを見極めるときに用います。

  • RSI(上昇幅計÷変動幅計)

 このデータも20日で算出します。通常はTOPIXをデータとして用います。計算式からも分かるようにRSIの天井・底と株価の天井・底は一致する傾向があります。1か月サイクルが反映されているものと思われます。20日で算出の「騰落レシオ+RSI」はタイミングを計る指標としては、より有効です。

  • 新高値数と新安値数

 相場の強弱を測るときに用います。新安値数は日々のベースで500を超えてくると安値が近いという指標になりますし、新高値数の10日累計(または20日累計)のピークはほぼ高値という使い方も可能です。

  • 相場の安定度を測る

 空売り比率と日経平均VIの「積」として求めます。高ければ高いほど相場は不安定で、急変動のリスクが高いです。逆に低ければ低いほど相場は安定、株価は下がりにくい状態にあることを意味します。

  • PER、PBRなどの投資指標

 私自身は株式市場そのものが賢いと思っていますし、株価はおおむね理屈通りに動くと考えています。基本的に株価は業績に連動すると思いますが、乖離しながら動くこともあります。PERの拡大は「期待」の結果として起こるものであり、日本は少子化を背景に低成長・低金利・低インフレで賃金が上がりにくい国でもあります。なので、PERは他の先進国との比較で低めに抑えられます。米国とのPERの単純な比較で日本株は割安と短絡的な論調がいつも展開されますが、そんなことはありません。

 これから毎月、株式投資で勝つために何が重要かを連載していきます。次回は株価指標を中心に投資のタイミングの計り方をリポートします。

※この記事は、FX攻略.com2020年3月号の記事を転載・再編集したものです。本文で書かれている相場情報は現在の相場とは異なりますのでご注意ください。

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