松崎美子

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    2020年12月11日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第14回 ブレグジット交渉延長戦[松崎美子]
    追加交渉では歩み寄り見えず  6月末に英国が移行期間の延長はやらないと決定したため、泣いても笑っても今年いっぱいで、欧州連合(EU)との離脱交渉は打ち切りとなります。それまでに合意できれば問題ありませんが、EUも英国も歩み寄りを見せず、厳しい状況が続いています。  例年であれば夏休みのバカンス真っ最中の8月中旬。新型コロナウイルスのパンデミックによる移動制限もあり、今年はEUと英国それぞれの交渉関係者がブリュッセルに集まり、7回目の交渉を行いました(図①)。結果は、双方が主張を曲げず、合意ならずでした。 EUと英国、譲れないところ  いったいどんな問題が、合意を妨げているのでしょう? それについて調べてみると、四つありました。 LPF  日本人にとってなじみのない言葉ですが、LPFは「Level Playing Field」の略であり、EUの環境規制や公正競争規約を順守し、英国は離脱後もEUとは対等で平等な競争環境を築きあげるべきであると、EU側は主張しています。  例えば、英国がEUとの貿易で、できる限り関税をゼロにしたいのであれば、ギブアンドテイクで何らかのEU規制は受け入れるべき…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第13回 9~10月のマーケット・アノマリー[松崎美子]
    2020年10月30日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第13回 9~10月のマーケット・アノマリー[松崎美子]
    9月と10月は要注意  今年も残すところあと4か月となりました。長年相場に関わってきた私ですが、毎年9月から年末までの期間は非常に神経を使います。過去の相場を振り返ると、9月と10月は世界的金融危機などの特殊要因が起こりやすく、特に今年は新型コロナウイルスのパンデミックにも関わらず米国株の上昇率が大きかったので、その反動が一気に来るのではないかと気を使っています。株価動向は為替市場へも波及するため、今まで以上の注意が必要になることには留意したいものです。  最初に、9月と10月に起きた過去の出来事を年代順にまとめた下画像をご覧ください。 株価暴落と為替市場の動き  なお、米国の代表的株価指数であるダウ平均株価やS&P500と円は逆相関性が高いといわれています。これはリスクオン/オフで色分けすると、分かりやすいかもしれません。例えば、投資家たちのリスク許容度が上がるリスクオン相場では株高円安へ、その反対のリスクオフ相場では株安円高という具合です(図①)。 秋は円の変動幅が大きいのか?  冒頭でも申し上げた通り、9月と10月は金融危機勃発などの特殊要因が起こりやすいため、世界的な株価下落に…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第12回 移行期間延長を断った英国政府[松崎美子]
    2020年10月7日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第12回 移行期間延長を断った英国政府[松崎美子]
    ブレグジット関連の要人発言に注目!  今回は、年末に期限が迫ってきた英国の移行期間について書こうと思います。  2020年6月12日、ブレグジットに向けたジョイント委員会が開催されました。欧州連合(EU)からは欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長とバルニエ首席交渉官、英国からはゴーブ内閣府担当相が出席したそうです。移行期間の延長期限が6月末に迫っておりましたが、ジョイント委員会が延長要請の受付機関であり、実質的には6月12日の会合で延長要請をしなければいけなかったそうです。  会合終了後、シェフチョビッチ副委員長が「交渉期間延長に関する英国の立ち位置を確認した。EUは延長については柔軟に対応するが、英国の決断は決定的なものとして受け取った。EU・英国共に、ここからの共同作業を手早く終わらそうということで意見が一致した」と語りました。  これとほぼ同じタイミングで、ゴーブ内閣府担当相は自身のツイッターで以下の発言をしています(画像①)。「英国は6月末の期限を待たず、移行期間の延長をしないことを、正式に公言する。2021年1月1日から、英国は政治的、経済的な独立を手にし、国家主権を自分たち…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第11回 コロナ禍後の景気回復をチェックする重要経済指標[松崎美子]
    2020年9月6日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第11回 コロナ禍後の景気回復をチェックする重要経済指標[松崎美子]
    四つの指標に注目!  5月に入り、欧州や英国では新型コロナウイルスによるロックダウンの一部解除が始まりました。ロックダウン中の各国経済は予想を超える低迷ぶりであり、発表される経済指標はことごとく予想を裏切る悪さが続いています。  今後の景気回復を占う上で、どの経済指標を特に注意すべきか、私なりの考えを書いてみたいと思います。 ①国内総生産(GDP)  マクロ経済指標の王様であるGDPは、最も注目すべき指標といえます。欧州のほとんどの国が3月中旬から5月1週目まで自国経済を完全に閉鎖していたため、第2四半期の数字は前期比でマイナス2桁が予想されています。つまり、言い方は悪いですが「第2四半期は悪くて当然」ということです。  問題はV字回復を期待する政府にとって、第3四半期以降の数字に改善が見られないときです。どのタイミングで、どのような対策を導入するのか? 欧州の一部の国では債務が膨らみ過ぎており、もし第3四半期以降に追加財政支出が難しくなれば、マーケットの絶好の餌食となります。その場合は長期金利が上昇し、ユーロ売りというシナリオが出てきます。  GDP発表時の為替取引で気をつけたいのは…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第10回 英国の首相不在時の対応策[松崎美子]
    2020年8月4日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第10回 英国の首相不在時の対応策[松崎美子]
    首相就任直後に代理首相を任命  英国の法律では、「副首相」は存在しません。そのため、首相は就任直後に「代理首相」を選びます。公用などで国をあけるときは、毎週水曜日に議会で行われる首相への質問コーナーPMQ(Prime Minister’s Question Time)で代理首相が議会に登場します。それ以外でも、首相の執務継続が難しくなれば代理首相の出番となります。  英国の首相は辞任や死亡、あるいは国王が首相を辞めるよう言い渡したときに不在となります。英国法では、首相は国王に対し最もシニアなアドバイザーという役割を兼任しています。また閣僚間にも「位」があり、閣僚会議で座る位置で示されます。  一般的に、英国では首相の次に位が高いのが「筆頭国務大臣(First Secretary of State)」であり、現内閣ではドミニク・ラーブ外務大臣が兼任しています。ただし、筆頭国務大臣だからといって自動的に代理首相にはなれません。首相が正式に「代理」を任命する必要があるのです。  もし首相が不在となった場合、そのときの内閣(与党)が過半数以上の議席を持っていれば与党内で新首相を選び…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第9回 ロンドン金融街シティ[松崎美子]
    2020年7月11日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第9回 ロンドン金融街シティ[松崎美子]
    ロンドンに存在する二つの金融街を紹介  世界の金融街といえば、真っ先に浮かんでくるのは映画でもおなじみの米国「ウォール街」。それに比べ、外国為替取引高世界一を誇るロンドン金融街「シティ」の名前は日本ではあまり知られていません。そこで今回はシティ、そして英国第2の金融街ドックランズを紹介したいと思います。 金融街シティ 別名スクエア・マイル  シティは1平方マイル(スクエア・マイル)という狭い地域にロンドン証券取引所、ロイズ保険、イングランド銀行(BOE・画像①)などが密集している金融業発祥の地です。この地域における英国国内総生産(GDP)への寄与度は約5%と群を抜いて高いです。この地域は特別行政府として扱われており、儀式的な意味だけとはいえ、国王ですら行政府長(市長)の許可なく入ることが禁止されています。  シティは米ウォール街とは違って高層ビルがなく、低いビルばかりが立ち並んでいます。シティ内の建物の外観は昔のままですが、内部は近代的で斬新なデザインである点も特徴的といえるでしょう。シティ地域で生活する住民は約4500世帯、約9000人といわれていますが、日中の労働人口は52万人に上…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第8回 ユーロ圏加盟国の財政政策について[松崎美子]
    2020年6月10日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第8回 ユーロ圏加盟国の財政政策について[松崎美子]
    大きく変わった欧州の財政政策相互監視  ここまでずっと欧州と英国の経済・金融政策を中心にお話ししてきたので、今回は財政政策について触れておこうと思います。  FXを始めて間もない方はご存じないかもしれませんが、2008年の世界金融危機直後から、ユーロ圏では債務危機問題が発覚し、約5年にわたり苦しい時期が続いていました。ギリシャから端を発した債務危機は、格付けの低い南欧州各国を直撃して国債価格は暴落し、長期金利が大きく上昇しました。結果として、ユーロ加盟国の一部は自力による財政運営を断念し、欧州連合(EU)からの援助で生きながらえたという苦しい経験があります。  これら負の連鎖を断ち切るため、2012年3月のEUサミットで、ユーロ制度の抜本改革の一環として、統合の深化を通じた危機の克服を目指すことで合意。これを実現するには、加盟各国が国家主権の一部を放棄し、EUに移譲する必要が出てきました。驚いたことに、国家主権の一部移譲という前提にもかかわらずユーロ加盟国は統合強化を望み、本格的な統合のステップとして「銀行・財政・経済・政治同盟の4本の柱」を設定したのです(図①)。 財政同盟の詳細 ①…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]
    2020年5月24日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]
    金融政策における枠組みの見直し  2020年の欧州中央銀行(ECB)は大きく変わります。一つは、金融政策決定における枠組みそのもの。もう一つは、6名の専務理事たちの顔ぶれです。  米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、ECBも金融政策決定における枠組みの見直しに入りました。2019年最後の記者会見でラガルド総裁は、2020年1月から見直しを始め、できる限り年末に完了したいと語っています。  どうして米欧共に、このタイミングで見直しに踏み切ったのか? ECBが最後に見直しを行ったのは2003年です。それ以降、グローバル化やデジタル化などにより世界情勢や経済構造そのものが変化しました。  ECBの責務は、「物価安定の維持」です。それを測る物差しとして、「中期的なインフレの上昇率が2%未満だが2%近く」という定義があります。しかし、ユーロ圏のインフレ率と期待インフレ率は共に長期にわたり下振れしており、いくら政策金利を下げても、実質金利の水準(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)が十分に下がりません(図①)。こうなると一体、何のための緩和なのか、分からなくなってしまいます。これと同じ現象が…
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    2020年5月8日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第6回 英国中央銀行の仕組み[松崎美子]
    ポンド円の取引高が昨年比で約22%増加  英国の欧州連合(EU)離脱に絡む一連の動きを受け、今年に入りポンド関連通貨ペアのボラティリティが上がっています。そして、外国為替専門シンクタンクの外為どっとコム総合研究所が、年に1回発行する「外為白書」によると、今年のポンド円取引高は昨年比約22%の増加となっています。これは、日本の個人投資家の間でもポンド関連通貨ペアの取引が活発になっている証拠です。  しかし、自称ポンド専門のトレーダーの間でも、英国中央銀行(以下、英中銀)について、よく知っている人は少ないでしょう。そこで、今回は英中銀の金融政策決定について説明したいと思います。 インフレーション・ターゲット制を導入  英中銀が導入したインフレ・ターゲットは、前年比でインフレ上昇率が2%となっており、上下±1%のバンドが設定されています。ターゲットの設定主体は財務相で、現在のターゲットは2003年に設定されました。設定主体が財務相ということから、英中銀はインフレ・ターゲットを守り、物価安定の維持を心がけながらも、政府の経済政策を同時にサポートすることが最も重要な役割であるといえます(図①)。…
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    欧州ファンダメンタルズ入門|第5回 予習をすることの重要性![松崎美子]
    2020年5月7日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第5回 予習をすることの重要性![松崎美子]
    FXでは金融政策を知ることが重要!  金融政策とは、中央銀行が決定権を持つ金融面からの経済サポートです。そして、世界中の中央銀行は「物価安定の維持」という責務を背負い運営されています。  欧州と英国それぞれの中央銀行の仕組みや運営方法については次回以降に説明しますが、今回は金融政策についてざっくりとした認識を持っていただけるよう、記事にまとめてみました。まずはインフレ・ターゲットと金融政策理事会について説明します。 ●インフレ・ターゲット(インフレ目標)  具体的に、中央銀行はどのようにして、物価を安定させるのでしょうか? 答えは、「インフレ・ターゲット」(インフレ目標)の設定です。インフレが進み過ぎたり、デフレが深刻にならないよう、政策金利というツールの調整をしながら、中央銀行は金利の決定を行います。 ●金融政策理事会  中央銀行は定期的に政策金利を決定するための会合を開き、それを「金融政策理事会」(以下、理事会)と呼びます。その中でも為替市場に大きな影響を与えるのは、マーケットの取引高が高い米国(ドル)、ユーロ圏(ユーロ)、日本(円)、そして英国(ポンド)の理事会であることは疑いの…