松崎美子

  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第11回 コロナ禍後の景気回復をチェックする重要経済指標[松崎美子]
    2020年9月6日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第11回 コロナ禍後の景気回復をチェックする重要経済指標[松崎美子]
    四つの指標に注目!  5月に入り、欧州や英国では新型コロナウイルスによるロックダウンの一部解除が始まりました。ロックダウン中の各国経済は予想を超える低迷ぶりであり、発表される経済指標はことごとく予想を裏切る悪さが続いています。  今後の景気回復を占う上で、どの経済指標を特に注意すべきか、私なりの考えを書いてみたいと思います。 ①国内総生産(GDP)  マクロ経済指標の王様であるGDPは、最も注目すべき指標といえます。欧州のほとんどの国が3月中旬から5月1週目まで自国経済を完全に閉鎖していたため、第2四半期の数字は前期比でマイナス2桁が予想されています。つまり、言い方は悪いですが「第2四半期は悪くて当然」ということです。  問題はV字回復を期待する政府にとって、第3四半期以降の数字に改善が見られないときです。どのタイミングで、どのような対策を導入するのか? 欧州の一部の国では債務が膨らみ過ぎており、もし第3四半期以降に追加財政支出が難しくなれば、マーケットの絶好の餌食となります。その場合は長期金利が上昇し、ユーロ売りというシナリオが出てきます。  GDP発表時の為替取引で気をつけたいのは…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第10回 英国の首相不在時の対応策[松崎美子]
    2020年8月4日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第10回 英国の首相不在時の対応策[松崎美子]
    首相就任直後に代理首相を任命  英国の法律では、「副首相」は存在しません。そのため、首相は就任直後に「代理首相」を選びます。公用などで国をあけるときは、毎週水曜日に議会で行われる首相への質問コーナーPMQ(Prime Minister’s Question Time)で代理首相が議会に登場します。それ以外でも、首相の執務継続が難しくなれば代理首相の出番となります。  英国の首相は辞任や死亡、あるいは国王が首相を辞めるよう言い渡したときに不在となります。英国法では、首相は国王に対し最もシニアなアドバイザーという役割を兼任しています。また閣僚間にも「位」があり、閣僚会議で座る位置で示されます。  一般的に、英国では首相の次に位が高いのが「筆頭国務大臣(First Secretary of State)」であり、現内閣ではドミニク・ラーブ外務大臣が兼任しています。ただし、筆頭国務大臣だからといって自動的に代理首相にはなれません。首相が正式に「代理」を任命する必要があるのです。  もし首相が不在となった場合、そのときの内閣(与党)が過半数以上の議席を持っていれば与党内で新首相を選び…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第9回 ロンドン金融街シティ[松崎美子]
    2020年7月11日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第9回 ロンドン金融街シティ[松崎美子]
    ロンドンに存在する二つの金融街を紹介  世界の金融街といえば、真っ先に浮かんでくるのは映画でもおなじみの米国「ウォール街」。それに比べ、外国為替取引高世界一を誇るロンドン金融街「シティ」の名前は日本ではあまり知られていません。そこで今回はシティ、そして英国第2の金融街ドックランズを紹介したいと思います。 金融街シティ 別名スクエア・マイル  シティは1平方マイル(スクエア・マイル)という狭い地域にロンドン証券取引所、ロイズ保険、イングランド銀行(BOE・画像①)などが密集している金融業発祥の地です。この地域における英国国内総生産(GDP)への寄与度は約5%と群を抜いて高いです。この地域は特別行政府として扱われており、儀式的な意味だけとはいえ、国王ですら行政府長(市長)の許可なく入ることが禁止されています。  シティは米ウォール街とは違って高層ビルがなく、低いビルばかりが立ち並んでいます。シティ内の建物の外観は昔のままですが、内部は近代的で斬新なデザインである点も特徴的といえるでしょう。シティ地域で生活する住民は約4500世帯、約9000人といわれていますが、日中の労働人口は52万人に上…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第8回 ユーロ圏加盟国の財政政策について[松崎美子]
    2020年6月10日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第8回 ユーロ圏加盟国の財政政策について[松崎美子]
    大きく変わった欧州の財政政策相互監視  ここまでずっと欧州と英国の経済・金融政策を中心にお話ししてきたので、今回は財政政策について触れておこうと思います。  FXを始めて間もない方はご存じないかもしれませんが、2008年の世界金融危機直後から、ユーロ圏では債務危機問題が発覚し、約5年にわたり苦しい時期が続いていました。ギリシャから端を発した債務危機は、格付けの低い南欧州各国を直撃して国債価格は暴落し、長期金利が大きく上昇しました。結果として、ユーロ加盟国の一部は自力による財政運営を断念し、欧州連合(EU)からの援助で生きながらえたという苦しい経験があります。  これら負の連鎖を断ち切るため、2012年3月のEUサミットで、ユーロ制度の抜本改革の一環として、統合の深化を通じた危機の克服を目指すことで合意。これを実現するには、加盟各国が国家主権の一部を放棄し、EUに移譲する必要が出てきました。驚いたことに、国家主権の一部移譲という前提にもかかわらずユーロ加盟国は統合強化を望み、本格的な統合のステップとして「銀行・財政・経済・政治同盟の4本の柱」を設定したのです(図①)。 財政同盟の詳細 ①…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]
    2020年5月24日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第7回 欧州中央銀行について[松崎美子]
    金融政策における枠組みの見直し  2020年の欧州中央銀行(ECB)は大きく変わります。一つは、金融政策決定における枠組みそのもの。もう一つは、6名の専務理事たちの顔ぶれです。  米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、ECBも金融政策決定における枠組みの見直しに入りました。2019年最後の記者会見でラガルド総裁は、2020年1月から見直しを始め、できる限り年末に完了したいと語っています。  どうして米欧共に、このタイミングで見直しに踏み切ったのか? ECBが最後に見直しを行ったのは2003年です。それ以降、グローバル化やデジタル化などにより世界情勢や経済構造そのものが変化しました。  ECBの責務は、「物価安定の維持」です。それを測る物差しとして、「中期的なインフレの上昇率が2%未満だが2%近く」という定義があります。しかし、ユーロ圏のインフレ率と期待インフレ率は共に長期にわたり下振れしており、いくら政策金利を下げても、実質金利の水準(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)が十分に下がりません(図①)。こうなると一体、何のための緩和なのか、分からなくなってしまいます。これと同じ現象が…
  • 詳細へ
    2020年5月8日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第6回 英国中央銀行の仕組み[松崎美子]
    ポンド円の取引高が昨年比で約22%増加  英国の欧州連合(EU)離脱に絡む一連の動きを受け、今年に入りポンド関連通貨ペアのボラティリティが上がっています。そして、外国為替専門シンクタンクの外為どっとコム総合研究所が、年に1回発行する「外為白書」によると、今年のポンド円取引高は昨年比約22%の増加となっています。これは、日本の個人投資家の間でもポンド関連通貨ペアの取引が活発になっている証拠です。  しかし、自称ポンド専門のトレーダーの間でも、英国中央銀行(以下、英中銀)について、よく知っている人は少ないでしょう。そこで、今回は英中銀の金融政策決定について説明したいと思います。 インフレーション・ターゲット制を導入  英中銀が導入したインフレ・ターゲットは、前年比でインフレ上昇率が2%となっており、上下±1%のバンドが設定されています。ターゲットの設定主体は財務相で、現在のターゲットは2003年に設定されました。設定主体が財務相ということから、英中銀はインフレ・ターゲットを守り、物価安定の維持を心がけながらも、政府の経済政策を同時にサポートすることが最も重要な役割であるといえます(図①)。…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第5回 予習をすることの重要性![松崎美子]
    2020年5月7日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第5回 予習をすることの重要性![松崎美子]
    FXでは金融政策を知ることが重要!  金融政策とは、中央銀行が決定権を持つ金融面からの経済サポートです。そして、世界中の中央銀行は「物価安定の維持」という責務を背負い運営されています。  欧州と英国それぞれの中央銀行の仕組みや運営方法については次回以降に説明しますが、今回は金融政策についてざっくりとした認識を持っていただけるよう、記事にまとめてみました。まずはインフレ・ターゲットと金融政策理事会について説明します。 ●インフレ・ターゲット(インフレ目標)  具体的に、中央銀行はどのようにして、物価を安定させるのでしょうか? 答えは、「インフレ・ターゲット」(インフレ目標)の設定です。インフレが進み過ぎたり、デフレが深刻にならないよう、政策金利というツールの調整をしながら、中央銀行は金利の決定を行います。 ●金融政策理事会  中央銀行は定期的に政策金利を決定するための会合を開き、それを「金融政策理事会」(以下、理事会)と呼びます。その中でも為替市場に大きな影響を与えるのは、マーケットの取引高が高い米国(ドル)、ユーロ圏(ユーロ)、日本(円)、そして英国(ポンド)の理事会であることは疑いの…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第4回 英国の注目経済指標[松崎美子]
    2020年4月30日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第4回 英国の注目経済指標[松崎美子]
    EU離脱を受け注目指標が変化  今回は英国を取り上げようと思います。繰り返しになりますが、どの国でも注目指標を探すには、その市場の現状を踏まえることが大切です。英国に関しては、2016年6月に行われた欧州連合(EU)離脱の有無を問う国民投票で「離脱」となったことを受け、注目される指標も若干変わってきました(表①)。 ●国内総生産(GDP) 図① 出典:英国統計局  図①は2019年第2四半期までのGDPチャート(前期比)ですが、欧州や英国では前期比の数字がメインに発表されます。2019年7月末にボリス・ジョンソン政権が誕生し、10月31日に合意なき離脱となるリスクが濃厚になりました。これを嫌気した企業投資や個人消費の低迷が重しとなり、7年ぶりにマイナス成長へ転じています。 ●消費者物価指数(CPI)とコア・インフレ  英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)の金融政策の責務は、「物価安定の維持」であり、インフレ・ターゲット制を採用しています。その定義は、「前年比でインフレ上昇率が2%」となっており、財務相が決定権を持っています。BOEのインフレ・ターゲットと欧州中央銀行(ECB)…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第3回 欧州の注目経済指標[松崎美子]
    2020年4月29日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第3回 欧州の注目経済指標[松崎美子]
    欧州の注目経済指標とは  ユーロ圏に限らず、注目指標を探すには、その市場の現状を踏まえることが大切です。また、国際情勢の大きな流れをきちんと頭に入れると、おのずと注目すべき経済指標や材料が見えてきます。今回は、欧州の注目経済指標を紹介します(表①)。 ●国内総生産(GDP)  経済動向を把握する上で、マクロ経済の王者:GDPにかなう指標はありません。  GDPとその国の通貨の関係は、GDPが強くなると通貨高になると考えるのが一般的な解釈です。GDPが強ければ、景気過熱感が出てくるかもしれず、それを防ぐ意味で中央銀行による金融引き締め(利上げ)実施観測が出て、ますます通貨高になります。  逆に、GDPが弱い国の通貨は売られやすくなります。景気が低迷し、インフレ率が極端に低くなったり、デフレ傾向となったりした場合は、中央銀行が景気活性を目指し政策金利カットや、追加緩和策の導入などを検討します。通貨もそれにつれて売られやすくなるのは、当然の動きともいえるでしょう。 ●消費者物価指数(HICP)とコア・指数  欧州中央銀行(ECB)の金融政策の責務は、「物価安定の維持」であり、それを達成するた…
  • 詳細へ
    欧州ファンダメンタルズ入門|第2回 相場を動かす材料/旬の経済指標[松崎美子]
    2020年4月4日
    欧州ファンダメンタルズ入門|第2回 相場を動かす材料/旬の経済指標[松崎美子]
    マーケットでの注目材料の移り変わり  マーケットで取引される通貨、株、債券などの価格は、需給・ファンダメンタルズ・テクニカルの影響を受け、短・中長期のトレンドを形成します。特に、ファンダメンタルズと聞くと「難しい!」という反応をする方がおられます。しかしファンダ苦手組も、国内総生産(GDP)やインフレ率などの経済指標発表時には、無意識のうちに自分なりに数字を分析しポジション形成に役立てているので、先入観の部分が大きいように感じます。  ここ数年、市場が一番注目していた経済指標は、米国の雇用統計でした。しかし過去を振り返ると、相場を動かす材料や旬の経済指標が時代と共に変化していることが分かります。今回のコラムでは、「相場を動かす材料の移り変わり」と「旬の経済指標」についてお話しします。  それではまず相場を揺るがした出来事を振り返ってみましょう(図①)。為替の歴史で最も大きな影響を与えたのが、1985年9月のプラザ合意です。当時はレーガン米大統領が「強い米国の復活」を声高に叫び、レーガノミックスと呼ばれる経済政策を発表し、そこには「強いドル」という為替政策が含まれていました。しかし、強い…